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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Sun 01 , 15:04:53
2007/07
ゆめを、見ていた。
懐かしいゆめを

きら きら
  きら きら

輝いていた。
あのころの――





「こっちだ!」
「シッ、ヤバイ、誰か来るぞ」
「げっ、マクゴナガルじゃん」
「急げ!!」


コツコツコツコツ


「…行ったか?」
「多分」
「もうちょっとたってから行こうか」
「うん」






「よーっしゃぁ!」
「悪戯成功!!」
「フ~…ひやひやしたよ」
「ホント、キミたちといるとスリルには事欠かないね」
胸を押さえながら興奮の冷めない赤い顔でそう言うピーターをシリウスが軽く小突く。
「いてっ」
「なーに言ってんだよ」
恨みがましそうに見上げた先にはシリウスの呆れたような顔。
「わかってるのかい?」
シリウスの肩から顔を出したジェームズがシリウスと同じ顔をして僕に言う。
「な、何が…?」
シリウスとジェームズが顔を見合わせて同じ笑みをうかべた。

ニヤリ

まさに、そんな感じ。彼らお得意の何かたくらんでる顔。

「キミも、共犯者なんだよ?」
「仲間、なんだからな。一蓮托生に決まってるだろ?」
「なーに、傍観者みたいなこと言ってるんだが」
「覚悟が甘いぞ」
「…」
「主犯者はキミたちだけどね」
呆れ顔のリーマスがそう言って、シリウスがそれに文句を言って、ジェームズが楽しそうにニヤニヤ笑っているけれど、僕はそれどころではなかった。

小さなころから、愚図、のろまと言われて友達なんて一人もいなかった。
ホグワーツに入ってから出会った彼等はとてもかっこよくて、素晴らしくて、だから僕みたいなのろまでも仲間に入れてやろう、ってしかたなく入れてくれたんだと思ってた。
でも、違った。
彼等は、本気で僕を仲間だと思ってくれている。
僕を、仲間だと…なんの躊躇いもなく、言ってくれる。
こんなゆめみたいなことが、あっていいのだろうか。
本当に、これは現実だろうか。

驚きか感動か戸惑いか…とにかく、突如として胸を襲った感情に呆然としていると、リーマスと目が合った。
リーマスは僕を見てにっこり笑った。
いつの間にかじゃれあいはシリウスとジェームズの二人になっていた。
本当に、彼等は仲がいい。まるで、双子みたいだ。

「ふあぁ…」
「ああ、もう寝たほうがいい時間だよね」
欠伸をすると、消灯時間なんてとっくに過ぎているけれど、と言いながらリーマスはじゃれあっている二人に声をかけた。
「そろそろ寝ようよ」
「ああ、そうだな」
「ほら、ピーター。行くぞ」
躊躇いもなく差し出された手。

「…」
「?どうしたんだよ」
その手をじっと見ていると、シリウスは不思議そうに首をかしげた。
「べ、別に…」
自分が何を考えていたのかばれれば、また呆れられるだろうから、慌てて首を横に振る。
「ふーん…?」

しばらく訝しそうに僕を見ていたけれど、早く部屋に戻りたかったのか…あるいは特に何も考えていなかったのか、シリウスは僕が彼の手を取るより先に僕の手を掴んだ。
「ほら、さっさと戻るぞ」
指の長い大きな手はしっかりと僕の手を掴んで呆れるくらい強引にひっぱっていく。

「ああ、もう…ジェームズたち、もうあんなところにいるじゃねえか」
「ご、ごめん」
「…謝るなよ」
「ごめん」
「だから、謝るなってば…」
見上げると、月光に照らされた彼のキレイな顔は少し怒ったような、困ったような表情に見えた。
「おまえさー…いっつも、なんか…オレたちに対して一歩ひいてるっていうか…なんつーか…。とにかく、なんか、ちょっと後ろにいる感じがするんだよ」
「…」
「遠慮なんてするなよ。そんなの違うだろ。オレたち、仲間だろうが」

シリウスの言葉は、真っ直ぐだった。
大概において、シリウスは真っ直ぐだ。
きっと、僕たちの誰よりも真っ直ぐだ。
その真っ直ぐさはまぶしいほどで、いつだって彼は“ブラック家の”シリウスではなく、“グリフィンドールの”シリウスとして立っている。
最初は、僕は彼が怖かった。けれど、そのことに気づいてからは別の怖さがあった。いや、怖さと言うよりも…恐れ、畏怖、それから…憧れ。
僕には持ち得ないものを持っている、強い、強い少年。
手を伸ばしても届かない、遠い場所にいる人。

「仲間って…対等なものだろ?ちゃんと、顔上げろ。うつむくなよ。…目を見ろ。言いたいことがあったら、なんでも言え。オレだって、いつも好き勝手言ってる」
グイ、と顔を上向かされた。
「シ、シリウス…」
「相手と対等な目線で物を見ろ。自分を卑下するな」
その言葉は、どこか自分自身に向けられているようにも聞こえたけれど。
それでも、僕は十分に嬉しかった。いや、嬉しかったのかな?そんな言葉じゃ足りないけれど、とにかく…何かの感情で胸がいっぱいになってしまって…気がついたら泣いてしまっていた。
「お、おい、ピーター、泣くなよ…おいってば」
慌てふためいたシリウスの声がおかしくて、笑おうとしたらますます涙がぼろぼろ落ちていった。

「あーあー、シリウスがピーター泣かせたー」
いつの間に近くにやってきたのか、ジェームズが言った。
「ダメじゃない、シリウス」
リーマスも同じようにシリウスに文句を言う。
「な、な、泣かせてない!オレは何もしてない、…よな?」
言いながら不安になったらしいシリウスは慌てて僕の顔を覗き込んだ。その慌てっぷりが面白かったから僕はあえて何も言わないでいた。
「おい、否定しろよ~」
シリウスの、情けない声。
僕は耐えられずに思いきり笑ってしまった。
シリウスの隣ではジェームズもリーマスも大声で笑っている。
「~~~~っ」
からかわれていたと気づいたシリウスは、顔を真っ赤にしてジェームズを殴っていた。




ゆめを、見ていた。
遠い、遠い昔のゆめを。

きら きら
  きら きら

光り続けるあの星。
星、はとてもとても遠くにある。
だから、僕らが今見ているあの光は、本当は遠い遠い昔に死んでしまった星のものだってきいたことがある。

きら きら
  きら きら

懐かしい、光よ。
もう二度と戻らない過去の光よ。

輝いていた、あのころの、僕たちのつかの間の幸福よ
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