白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Mon 18 , 19:20:44
2007/06
ナルトが大怪我をして帰ってきた。
里に着くまでは気力で持たせてけど、門の中に入ったとたん、気を失ったらしい。門兵が急いで病院まで運び込んでくれて、今、綱手様が治療をしている。
集中治療室に入ってから、もう8時間。
いろんな治療忍が2時間ぐらいのペースで交代して治療してるけど、綱手様はまだいっぺんも出てきてない。綱手様の助手をやっているサクラとシズネも、出てきてない。
つかれきった顔で部屋から出てくる人たちに聞くこともできずに、オレは治療室に繋がる廊下のベンチで、一人座り込んでいる。
「ナルト…」
生きていてほしい。
もう一度、笑顔を見たい。
声を聞きたい。
あの光を、失いたくない。
ガチャ
ドアの開く音にばっと顔を上げると、そこにいたのはサクラだった。
「サクラ…」
「綱手様に、追い出されちゃった。『休んで来い』って…」
サクラは疲れきった顔で、泣きそうに笑った。
「…サクラ、大丈夫?」
「カカシ先生よりは大丈夫よ、きっと」
「…」
「どんな顔してるのか、自分でもわかってないでしょ。ひどい顔だわ…」
サクラの細い指がオレの頬に触れた。
「ナルトが起きたときに先生が倒れてたら意味がないわよ。…私と一緒に、ちょっと休憩しましょう」
小さな子どもに言い聞かせるような優しい声。
「…」
でも、動きたくなかった。
ここでナルトを待っていたかった。
少しでも、近い場所で。
「…あのね、カカシ先生」
「…」
「先生がここでどれだけがんばっても、ナルトがよくなるわけじゃないのよ」
「うん」
「先生のほうがよっぽど死にそうな顔してる」
「…」
「目が覚めたナルトにそんな顔を見せたいの?ナルトのほうがびっくりすわよ」
「…うん」
「ね、カカシ先生。お願いだからちゃんと休んで」
「…うん」
離れたくなかったけれど、サクラの言葉があんまり真っ直ぐで。
真剣に、オレを案じているのだとわかっていたから。
だから、ナルトのことだけでもこれ以上ないくらい不安で心細いはずのサクラに心配をかけるのはいけないのだと思った。
「うん。…ちょっと、なんか食べて寝るよ」
立ち上がろうとして、気がついた。
いつの間に、オレは手を組んでいたんだ?
神様なんて信じない。
いつだってオレの大切な人を奪っていくから。
神様なんて信じない。
いつだってニンゲンたちは戦って戦って傷ついているから。
神様なんて信じない。
だって、カミサマがいるならみんなもっと幸せなはずだから。
それなのに、オレはどうして祈っているのだろう。
両手を組んで、ナルトが助かるように、って、ずっと祈ってた。
誰に祈っていたの?
どうして祈っていたの?
祈ることがどれだけ意味のないことかわかっているのに。
「…祈ることは、きっと無意味なんかじゃないわよ」
組んだままの手をじっと見ていたら、サクラがそっと言った。
細い指が、今度は組まれたままの手に触れる。
「ナルトが、…どうか、早く目覚めてくれますように……」
オレの手を包み込みながら、サクラはそう祈った。
その言葉を聞いて、オレは思い出した。
『言霊って知ってる?』
『あのね、カカシ。言葉には力があるんだよ。だから、不安でどうしようもなかったら“大丈夫”って言ってみて。嬉しくて楽しくて幸せな気分になれたら、笑ってみて。それから“幸せだな”っていってみて。きっと、もっと幸せになれるから』
遠い昔に聞いた、あの人の言葉。
(先生…)
記憶の中の変わらない笑顔。
(忘れてた。…そうだったね、信じてみる)
「ナルトは…きっと、もうすぐ目が覚めるね」
オレの言葉を聞いて、サクラはにっこり笑った。
疲れきった顔をしているのに、その笑顔はとてもキレイで、サクラは随分と大人になったのだと思った。
サクラがいてくれて、よかったと思った。
里に着くまでは気力で持たせてけど、門の中に入ったとたん、気を失ったらしい。門兵が急いで病院まで運び込んでくれて、今、綱手様が治療をしている。
集中治療室に入ってから、もう8時間。
いろんな治療忍が2時間ぐらいのペースで交代して治療してるけど、綱手様はまだいっぺんも出てきてない。綱手様の助手をやっているサクラとシズネも、出てきてない。
つかれきった顔で部屋から出てくる人たちに聞くこともできずに、オレは治療室に繋がる廊下のベンチで、一人座り込んでいる。
「ナルト…」
生きていてほしい。
もう一度、笑顔を見たい。
声を聞きたい。
あの光を、失いたくない。
ガチャ
ドアの開く音にばっと顔を上げると、そこにいたのはサクラだった。
「サクラ…」
「綱手様に、追い出されちゃった。『休んで来い』って…」
サクラは疲れきった顔で、泣きそうに笑った。
「…サクラ、大丈夫?」
「カカシ先生よりは大丈夫よ、きっと」
「…」
「どんな顔してるのか、自分でもわかってないでしょ。ひどい顔だわ…」
サクラの細い指がオレの頬に触れた。
「ナルトが起きたときに先生が倒れてたら意味がないわよ。…私と一緒に、ちょっと休憩しましょう」
小さな子どもに言い聞かせるような優しい声。
「…」
でも、動きたくなかった。
ここでナルトを待っていたかった。
少しでも、近い場所で。
「…あのね、カカシ先生」
「…」
「先生がここでどれだけがんばっても、ナルトがよくなるわけじゃないのよ」
「うん」
「先生のほうがよっぽど死にそうな顔してる」
「…」
「目が覚めたナルトにそんな顔を見せたいの?ナルトのほうがびっくりすわよ」
「…うん」
「ね、カカシ先生。お願いだからちゃんと休んで」
「…うん」
離れたくなかったけれど、サクラの言葉があんまり真っ直ぐで。
真剣に、オレを案じているのだとわかっていたから。
だから、ナルトのことだけでもこれ以上ないくらい不安で心細いはずのサクラに心配をかけるのはいけないのだと思った。
「うん。…ちょっと、なんか食べて寝るよ」
立ち上がろうとして、気がついた。
いつの間に、オレは手を組んでいたんだ?
神様なんて信じない。
いつだってオレの大切な人を奪っていくから。
神様なんて信じない。
いつだってニンゲンたちは戦って戦って傷ついているから。
神様なんて信じない。
だって、カミサマがいるならみんなもっと幸せなはずだから。
それなのに、オレはどうして祈っているのだろう。
両手を組んで、ナルトが助かるように、って、ずっと祈ってた。
誰に祈っていたの?
どうして祈っていたの?
祈ることがどれだけ意味のないことかわかっているのに。
「…祈ることは、きっと無意味なんかじゃないわよ」
組んだままの手をじっと見ていたら、サクラがそっと言った。
細い指が、今度は組まれたままの手に触れる。
「ナルトが、…どうか、早く目覚めてくれますように……」
オレの手を包み込みながら、サクラはそう祈った。
その言葉を聞いて、オレは思い出した。
『言霊って知ってる?』
『あのね、カカシ。言葉には力があるんだよ。だから、不安でどうしようもなかったら“大丈夫”って言ってみて。嬉しくて楽しくて幸せな気分になれたら、笑ってみて。それから“幸せだな”っていってみて。きっと、もっと幸せになれるから』
遠い昔に聞いた、あの人の言葉。
(先生…)
記憶の中の変わらない笑顔。
(忘れてた。…そうだったね、信じてみる)
「ナルトは…きっと、もうすぐ目が覚めるね」
オレの言葉を聞いて、サクラはにっこり笑った。
疲れきった顔をしているのに、その笑顔はとてもキレイで、サクラは随分と大人になったのだと思った。
サクラがいてくれて、よかったと思った。
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