白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Wed 04 , 19:50:56
2007/07
「ねえ、手を出して」
差し出した手のひらに乗せられたのは、キレイなビー玉だった。
「?」
「あげるよ」
「どうしてですか?」
「部屋の整理をしてたらね、出てきたんだ。持っていてもしょうがないものだし…誰かにあげようと思ってとりあえず外に出たら、キミがいたから」
その人は、里でも有名な人だった。
ナルトさんとサスケさんとサクラさんの先生。
はたけカカシさん。
何度か挨拶はしたことがあるけれど、一対一で話すのは初めてだ。
キレイな銀髪だな、と思う。
顔の半分以上を隠しているしいつも笑っているから、本当の表情は読み取れないけれど、それでも不快な印象を人に与えることはない。
不思議な人だ。
「カイとかメンマとか…ほかの子にあげたほうがいいんじゃないですか?」
うちの両親はこの人とほとんど関わりはない。
もちろん、任務で一緒になったことは多くあるし、父様の先生はカカシさんのライバルだって聞いたことがあるけれど。でも、かかわりは圧倒的に少ない。
きっと、このビー玉はこの人の大切なものなのに。
根拠はないけれどそう感じたから、だからどうせならこの人にとってもっと大切な…もしくは、意味のある人にあげればいいのに、と思った。
「なんで?」
「だって…わたしも、わたしの両親もカカシさんとそんなに親しいわけでもないのに…いただけません」
「あ、名前覚えててくれたんだ」
にっこり。
嬉しそうに笑った顔を見て、論点がずれてる、と思ったけれど、意外に思った。子どものように笑う人だ。
「はい」
「ありがとね。…あのね、レイ」
「はい」
「深い意味はないから、遠慮せずに受け取ってくれると嬉しいんだけど」
「でも…」
あげるのなら、カイやメンマの方が妥当だろうに。
それなのに、どうしてわたしにこのキラキラ光るビー玉をくれるのか。それが気になった。
「どうしてわたしなんですか?」
「さっき言わなかった?」
「たまたまいたから…?」
「そう」
「理由になっていません」
ビー玉に心惹かれないわけでは、決してない。
キラキラと光るそれはとてもキレイで心引かれる。
でも、本当に受け取っていいの?
「そうだなぁ…」
カカシさんは、あごに手を当てて真剣に考え出した。
「…」
「ちょっと、貸して」
何か思いついたのだろう、わたしの手のひらの上に転がっているビー玉をひとつつまみあげて、陽にかざして見せた。
「ほら、キレイでしょ」
「?…はい」
「わかる?いろんな色に変わるの」
「あ、ホントだ…」
透明な玉だと思っていたそれは、陽にすけるといろいろな色に見えた。
「うわぁ…」
夢中になって見入ってしまった。
「…結局は、こういうことなのかもね」
「え?」
小さく呟いた声が耳に届いて、隣に立つ人を見ると、目が合った。
「レイ」
ビー玉をわたしの手の上に戻して、そのままカカシさんはわたしの額に触れた。
3ヶ月前に呪印をほどこされた、額に。
「あ…」
「自分を、縛っちゃダメだよ」
見られていたのか。
一人で、呪印に触れていた姿を。
昔と違い今では宗家とのわだかまりはほとんどない。それでも、分家の子どもは呪印を刻まれる運命にある。一生、宗家のしがらみからは逃れられない。それだけはこれからも変わらない。
わたしが呪印を刻まれることが決まった日、父が声を出さずにこっそり泣いていたのを知っている。
両親の前では大丈夫、気にしてなんかない、という態度をとり続けているけれど、一人になれば呪印は心に重くのしかかる。
枷を、はめられてしまったのだと。
「オレはね、キミのお父さんや…おじいさんも、知ってる。二人とも、すごく苦しんで、悩んで…。自分を縛っているように見えたよ。キミも、今…とても辛いかもしれない。でも、自分を縛っちゃダメだよ。難しいことかもしれないけど、可能性なんていくつも…本当にいくつも、あるんだから」
涙が、出た。
父様の前では、泣けない。母様の前でも、泣けない。
ずっと、泣けなかったけれど。
わたしは、ほとんど初めて話した人の前で、思い切り泣いてしまった。
「ほら」
ようやく落ち着いて涙もとまりかけてきたころ、カカシさんはビー玉の乗ったわたしの手の上にそっと手を重ねた。
(あったかい…)
「キミは、幸せにならなくちゃいけないんだよ」
「…」
「もちろん、大人になってからどう生きるかはわからないけどね、少なくとも…子どものうちは、毎日笑って、毎日幸せになる権利があるんだよ」
カカシさんの目はとても真っ直ぐで、とてもキレイだと思った。
「子どもは、幸せにならなきゃいけないんだよ」
ね?顔を覗き込まれて、涙でぐちゃぐちゃになっているはずだからはずかしかったけど、わたしはカカシさんの目を見てうなずいた。
「くじけそうになったら、このビー玉を思い出して。取り出して、陽にかざしてごらん。いろんな色に輝いて見えるから」
もう一度、うなずく。
「ありがとう…ございます」
カカシさんはにっこり笑って、それからわたしが完全に泣き止むまでそばにいてくれた。
カカシさんは、一族ではないのに写輪眼をもっている。どうしてあの人がそれをもっているのかわたしは知らないけれど、もしかしたらそのことでいろいろ辛い思いをしたのかもしれない。だから、わたしに気づいてくれたのかもしれない。ありがとう。本当に、心からあの人にありがとうと言いたい。どれだけお礼を言ってもまだ足りない。
優しい、人。
手のひらに残った7つのビー玉。
それはきっと、元気になれる、幸せの詰まった光の雫。
差し出した手のひらに乗せられたのは、キレイなビー玉だった。
「?」
「あげるよ」
「どうしてですか?」
「部屋の整理をしてたらね、出てきたんだ。持っていてもしょうがないものだし…誰かにあげようと思ってとりあえず外に出たら、キミがいたから」
その人は、里でも有名な人だった。
ナルトさんとサスケさんとサクラさんの先生。
はたけカカシさん。
何度か挨拶はしたことがあるけれど、一対一で話すのは初めてだ。
キレイな銀髪だな、と思う。
顔の半分以上を隠しているしいつも笑っているから、本当の表情は読み取れないけれど、それでも不快な印象を人に与えることはない。
不思議な人だ。
「カイとかメンマとか…ほかの子にあげたほうがいいんじゃないですか?」
うちの両親はこの人とほとんど関わりはない。
もちろん、任務で一緒になったことは多くあるし、父様の先生はカカシさんのライバルだって聞いたことがあるけれど。でも、かかわりは圧倒的に少ない。
きっと、このビー玉はこの人の大切なものなのに。
根拠はないけれどそう感じたから、だからどうせならこの人にとってもっと大切な…もしくは、意味のある人にあげればいいのに、と思った。
「なんで?」
「だって…わたしも、わたしの両親もカカシさんとそんなに親しいわけでもないのに…いただけません」
「あ、名前覚えててくれたんだ」
にっこり。
嬉しそうに笑った顔を見て、論点がずれてる、と思ったけれど、意外に思った。子どものように笑う人だ。
「はい」
「ありがとね。…あのね、レイ」
「はい」
「深い意味はないから、遠慮せずに受け取ってくれると嬉しいんだけど」
「でも…」
あげるのなら、カイやメンマの方が妥当だろうに。
それなのに、どうしてわたしにこのキラキラ光るビー玉をくれるのか。それが気になった。
「どうしてわたしなんですか?」
「さっき言わなかった?」
「たまたまいたから…?」
「そう」
「理由になっていません」
ビー玉に心惹かれないわけでは、決してない。
キラキラと光るそれはとてもキレイで心引かれる。
でも、本当に受け取っていいの?
「そうだなぁ…」
カカシさんは、あごに手を当てて真剣に考え出した。
「…」
「ちょっと、貸して」
何か思いついたのだろう、わたしの手のひらの上に転がっているビー玉をひとつつまみあげて、陽にかざして見せた。
「ほら、キレイでしょ」
「?…はい」
「わかる?いろんな色に変わるの」
「あ、ホントだ…」
透明な玉だと思っていたそれは、陽にすけるといろいろな色に見えた。
「うわぁ…」
夢中になって見入ってしまった。
「…結局は、こういうことなのかもね」
「え?」
小さく呟いた声が耳に届いて、隣に立つ人を見ると、目が合った。
「レイ」
ビー玉をわたしの手の上に戻して、そのままカカシさんはわたしの額に触れた。
3ヶ月前に呪印をほどこされた、額に。
「あ…」
「自分を、縛っちゃダメだよ」
見られていたのか。
一人で、呪印に触れていた姿を。
昔と違い今では宗家とのわだかまりはほとんどない。それでも、分家の子どもは呪印を刻まれる運命にある。一生、宗家のしがらみからは逃れられない。それだけはこれからも変わらない。
わたしが呪印を刻まれることが決まった日、父が声を出さずにこっそり泣いていたのを知っている。
両親の前では大丈夫、気にしてなんかない、という態度をとり続けているけれど、一人になれば呪印は心に重くのしかかる。
枷を、はめられてしまったのだと。
「オレはね、キミのお父さんや…おじいさんも、知ってる。二人とも、すごく苦しんで、悩んで…。自分を縛っているように見えたよ。キミも、今…とても辛いかもしれない。でも、自分を縛っちゃダメだよ。難しいことかもしれないけど、可能性なんていくつも…本当にいくつも、あるんだから」
涙が、出た。
父様の前では、泣けない。母様の前でも、泣けない。
ずっと、泣けなかったけれど。
わたしは、ほとんど初めて話した人の前で、思い切り泣いてしまった。
「ほら」
ようやく落ち着いて涙もとまりかけてきたころ、カカシさんはビー玉の乗ったわたしの手の上にそっと手を重ねた。
(あったかい…)
「キミは、幸せにならなくちゃいけないんだよ」
「…」
「もちろん、大人になってからどう生きるかはわからないけどね、少なくとも…子どものうちは、毎日笑って、毎日幸せになる権利があるんだよ」
カカシさんの目はとても真っ直ぐで、とてもキレイだと思った。
「子どもは、幸せにならなきゃいけないんだよ」
ね?顔を覗き込まれて、涙でぐちゃぐちゃになっているはずだからはずかしかったけど、わたしはカカシさんの目を見てうなずいた。
「くじけそうになったら、このビー玉を思い出して。取り出して、陽にかざしてごらん。いろんな色に輝いて見えるから」
もう一度、うなずく。
「ありがとう…ございます」
カカシさんはにっこり笑って、それからわたしが完全に泣き止むまでそばにいてくれた。
カカシさんは、一族ではないのに写輪眼をもっている。どうしてあの人がそれをもっているのかわたしは知らないけれど、もしかしたらそのことでいろいろ辛い思いをしたのかもしれない。だから、わたしに気づいてくれたのかもしれない。ありがとう。本当に、心からあの人にありがとうと言いたい。どれだけお礼を言ってもまだ足りない。
優しい、人。
手のひらに残った7つのビー玉。
それはきっと、元気になれる、幸せの詰まった光の雫。
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