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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Tue 10 , 23:07:58
2007/07
激しく降りしきる雨の下、心さえも冷え切るほどに濡れそぼったのなら、誰にも気づかれないことでしょう。
わたしが、泣いている…なんてこと。
誰も、私に気づかないでしょう。




突然、雨がやんだ。

「…何してるの?」
「…カカシ先輩」

振り返ると、顔を半分以上隠したかつての先輩が微笑みながら立っていた。その手には、傘。雨粒が傘にあたり、パラパラと音を立てる。

「…先輩こそ。今、何時だと思っているんですか?」
「1時をすぎたくらいかな」
「寝ないんですか?」
「おまえは?」
「私は…」

言いよどむ私に、先輩はそれ以上何も言わなかった。
ハヤテが死んでから、私はうまく眠れない。
暗部に属するものとして、どんな任務もためらわずに成し遂げてきた。人が死ぬところなんて、もういやというほどに見てきた。いやというほどに、殺してきた。
それなのに…たった一人の死から、いまだ立ち直れない滑稽な自分がいる。

「…」
「…」

身体をずらして、先輩の傘から出た。
冷たい雨が身体に叩きつける。

「…夕顔」
「いりません」
「…」
「雨に…思い切り、打たれていたい…」
「…」

そう言って笑って見せたけれど、おそらく私は上手に笑えていない。
でも、先輩は優しく微笑んで傘を閉じた。

「そうだね…たまには、そんなのもいいかもしれない」
「…」

激しい雨に、瞬く間に先輩も全身濡れそぼってしまった。
銀の髪が雨にぬれて顔にかかっている。
ほとんど無意識のうちに、手を伸ばしていた。

「…」

顔にかかる銀髪をかきあげると、寂しそうな目で優しく微笑む先輩と目が合った。

「…風邪を、ひくよ」
「…」

先輩はそっと身体を引いて私から離れて、もう一度微笑んだ。

「オレは…もう、帰るよ。おまえも早く家に帰って…熱いシャワーでもあびて、寝なさいね」
「先輩…」
「おやすみ」
「…おやすみなさい」

雨は、変わらず降り続けている。
私は、相変わらず寂しくて悲しい。

ハヤテに、会いたい。

もう二度と会えないことを知っている。
それでももう一度、と願い続ける私に先輩は何も言わない。
先輩だけが、何も言わない。
ほかのみんなは、口々に忘れろ、と言ったのに。



この激しい雨に身をさらし続ければ、いつか…哀しみも消えてしまえばいいのに。
楽しかった思い出だけが、そうして残ればいいのに。
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更新はまったり遅いですが、徒然なるままに日記やら突発でSSやら書いていく所存ですのでどうぞヨロシク。
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