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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Tue 17 , 23:43:32
2007/07
鳥のように空を飛べたらいい、と思う。
どこまでもどこまでも青い空を飛ぶことができたら、いいと思う。





空を見るのが、好きだ。
流れる雲を見るのが、好きだ。
飛ぶ鳥を見るのが、好きだ。
太陽の日差しを身に浴びるのが、好きだ。
木陰で寝転ぶのが、好きだ。

建物の中は息苦しい。
人の造ったものは、どこか窮屈さがあって、オレは時々とてもいたたまれなくなる。酸素が足りてないんじゃないか、とか考えてみる。
窓を閉め切った部屋は埃っぽくて、でも窓を開けると風が入ってくるから書類が飛ばされてしまう。窓ガラスの向こうには風に揺られてざわめく木々が見えるのに、部屋の中は無風で埃っぽくて、一種のいじめっぽい。

「…要するに、仕事をしたくないの?」
「別に、そういうわけじゃない」
「だったら、どうしたいのよ」
呆れた顔をしているのは、サクラだ。

オレはここのところずっと執務室にこもりきりで、お気に入りの場所に行って雲を眺めながら昼寝をしたいな、と考えている。だからそのために少しでも早く仕事を片付けようと常にないくらいにがんばっているのに、仕事は次から次へと送り込まれてくる。ついつい無言になってしまうのも、仕方がないと思う。

なのに、サクラはそんなオレを見て鬱陶しいから、理由を説明しなさい、と詰め寄ってきた。

なんだ、その自分勝手な言い分は。

そう思ったけど、それを言うとまたぎゃーぎゃーうるさそうだから諦めてこうしてサクラと飯を食いながら話してやったら、上のセリフだ。
女は身勝手で鬱陶しい。

「どうって…だから、オレの気に入りの特等席で、雲を眺めながらぼんやりして、気がついたらもう夕方で、どうやらオレは寝ちまってたらしい…なんて考えながらぶらぶらと家路に着く、っていうのが最高だ。ついでに、晩飯が鯖の味噌煮なら言うことはない」
「何、その無駄に具体的な計画は」
「それがムリだってわかってるから、わがままも言わずに仕事してやってるのに、どうしてわざわざこんなところにつれてこられておまえと二人で飯を食っているんだ、オレは?しかも、オレのおごりってどういう了見だよオイ」
「細かいことは気にしないの。男らしくないわよ」
「細かくねえよ」
「美人と一緒にお昼ご飯食べれて、嬉しいでしょ」
「…………………美人?」
「美人」
「何処に?」
「此処に」
「…何処?」

ドガ

思い切り殴られた。
「いや、おまえさぁ…」
「何?」
「すぐにそうやって暴力に訴えるなよ。最近五代目に似てきたぞ、おまえ」
「あら、嬉しい」
「…」
「師匠は、あたしの憧れで目標よ」
「…つまり、あれか?永遠の独身でいたいということか?伝説のカモになりたいのか?」
「どうしてそっちに行くのよ」
「間違ったことは言っていない」
「シカマルの師匠に対する認識がよくわかったわ」
「…」

周りにいるのは女ばかりで、明らかにオレは場違いで居心地が悪い。サクラのお勧めだけあって、確かに味は悪くないが量が微妙に足りない。同年代の男どもの中ではどちらかと言えば小食な部類に入るが、それでも一応男だ。サクラはこの量で満足でも、オレはそうは行かない。でも、我慢できないほどではないので妥協しよう。

「で、ほんとに…真面目な話、どうなのよ。最近おかしいわよ」
「何が」
「真面目に仕事をするシカマル。しかも、すごく不機嫌そうな顔してるのに文句ひとつ言わない。天変地異の前触れかしら?」
「すげえ言われようだな」
「事実よ」
「…」
「あんた、どうしたいの?」
「そうだな…仕事がある限り休みがとれないのはしょうがないが…せめて、部屋の窓を開けたい」
「書類が飛んでいくわよ」
「わかってる。だから、我慢してる」
「…」
「でも、それでもなぁ…息苦しいんだよ。狭い部屋に、天井までぴっちり書類を詰め込んで、窓も閉めっぱなしでドアも最低限しか開かない。気が狂っちまうぞ?」
「…」
「ま、めんどくせーけど…しょうがねぇか」
「シカマル…」
「そろそろ行くぞ。休憩時間は終わりだ」

伝票を手にして立ち上がると、サクラも慌てて立ち上がりながらオレの手の中にある伝票に手を伸ばす。

「誘ったのはあたしなんだから、あたしがおごるわよ」
「バーカ、女におごられるかよ、かっこ悪い。おとなしくおごられとけ」
「でも…」
「外で待ってろ」

会計を済ませて外に出ると、サクラが申し訳なさそうな微妙な顔で立ってた。

「ごちそうさまでした」
「はいはい」
「…ねえ、シカマル」
「あー?」
「休憩時間、ちょっと延長して遠回りして帰らない?」
「は?」
「散歩、しましょ。気分転換に」

めんどくさい、と言って断ろうとしたけれど、青い空に白い雲、そよぐ風に歌う緑。…目にしたら、その誘惑に自分でも驚くぐらいに惹かれてしまった。久しぶりにこういうものを目にした気がする。
空を高く飛ぶ鳥が目に入った。あの鳥は、何処から来て何処へ行くのだろうか。

「…なあ、サクラ」
「何?」
「鳥になりたいとか、思ったことあるか?」
「…」
「悪い、今の忘れろ」
「…あるわよ」
「…」
「私が鳥だったら、今すぐにサスケくんを追いかけるのに…って、昔、何回も思った。空から探せば、すぐに見つけられるんじゃないかな、ってずっと考えてた。でも、私は鳥じゃないから地上からあの人を…いろんなうわさに左右されながら探すことしかできなかった。ナルトについていくことしかできなくて、もどかしかった」
「…悪い、ヤなこと思い出させたな」
「別にいいわよ。今はちゃんとサスケくんも帰ってきたし」
「…」
「シカマルは…鳥になりたいの?」
「…さあな」
「…」
「ただ、あんな風に空を飛べたら…気持ちがいいだろうな、とは思う」
「シカマル…」
「一種の憧れだ。里も、家族も、仲間も、立場も、すべてを捨てて…鳥のように自由にどこへでも行ければ、それはある意味でとても幸せかもしれない。だが、現実は…オレは、何も捨てられずにこんなところで狭い部屋にこもって仕事をしているわけだ」
「…」
「んな顔するな。大丈夫だ。全部を捨てるなんてめんどくさいこと、オレがするわけないだろう」
「…うん」
「そろそろ戻らないと本気でやばいぞ」
「うん。帰りましょ」

サクラは、躊躇いがちにオレの手を握った。別にそんなことしなくてもオレはこの里から逃れられないのにな、と思いながらサクラの好きなようにさせていた。
オレは、アスマが守りたかったこの場所から逃げることなんて、できないのに。



それでも、時々考える。
鳥のように風に乗ってどこまでも飛ぶことができるのなら、それは何にも勝る幸福なのだろう、と。
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