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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Fri 20 , 22:16:16
2007/07
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんが山へ芝刈りに。おばあさんも山に行きました。
おじいさんは、枯れ木に向かって灰を投げつけます。あ、芝刈りじゃなかったのか、というつっこみはなしの方向でお願いします。
そんなおじいさんをうっとりと見ていたおばあさんは、ふと一本の木が光っているのを見つけます。
「おじいさん、おじいさん、この木が光っておりますよ」
「おお、本当じゃ。ためしに折ってみようか」

ボキッ

年寄りとも思えぬ怪力で折った枝の中には、それはそれはかわいらしい女の子。
「あらあら、かわいらしいこと。どこの子かしら?」
その少女が大変気に入ったおばあさんは、優しく話しかけます。
「ねえ、そこのお嬢ちゃん。どうしてこんなところにいるのだい?親御さんは?」
少女は首を横に振るばかり。しめた、と内心思ったおばあさんは、優しく微笑んで言いました。
「飴あげるから、ついておいで」
「…」
少女はちょっと考えてから立ち上がり、おばあさんの手を握りました。
言っておきますが、これは誘拐ではありません。少女が、自発的におばあさんについてきたのです。…もう一度言いますが、誘拐ではありません。誰が何と言おうとも。むしろ、人命救助です。山の中に置き去りにされた少女を無断で連れ去った。立派な人命救助です。誘拐であるはずが、ありません。





時は流れ、かぐや姫と名づけられた少女はすくすくと美しく賢く育ちました。今では、おじいさんの手伝いをして芝刈りをしたり、穴の開いた屋根を修繕したり、熊と相撲をとったりもします。そうそう、とても優しくて正義感の強い子でもありましたので、雪の積もったお地蔵さんをかわいそうに思い、傘をかぶせてあげたこともありました。


そんなある日、かぐや姫は散歩に出た海岸で、いじめられている亀を助けます。
「ありがとうございます、かぐや姫さま」
「なあに、どうしてあなたは私の名前を知っているの?私はそんなに有名?」
「はい、姫さまのご高名は、遠くエーゲ海の底の竜宮城にまで届いております。わが国の猛者どもが、ぜひとも姫と相撲を…ゲフンゲフン、違う違う、うわさに聞く姫の美しさに思いを寄せております」
「まぁ…」
「どうでしょうか、姫さま。助けていただいたお礼に、あなた様を竜宮城にご招待したいと思います。我が主、乙姫様もきっとそれをお望みでございましょう」
「竜宮城は…遠いのかしら?日帰りで行ける?」
「なぜですか?」
「私の帰りが遅いと、私を育ててくださった優しいおじいさんとおばあさんがとても心配するでしょう」
「それなら大丈夫ですよ。海の底と地上とでは、時間の流れが違うのです。問題はありませんよ」
多分、と呟いた言葉は、小さすぎてかぐや姫の耳には届きませんでした。



助けた亀に連れられてやって来た竜宮城で、かぐや姫と乙姫は運命的な出会いをし、親友となりました。
鯛や平目の舞い踊り、ウツボやマグロとの相撲取り。
そして何より、乙姫との空手の特訓に、面白おかしく日々は過ぎていきます。


「ああ、楽しい」
「そう、それはよかったわ。…ねえ、かぐや」
「なあに?乙ちゃん」
「あなた、ずっとここでくらしましょうよ」
「ええ?」
「だって、あなたがいると毎日がとても楽しいんですもの。ね、あなたはそうじゃないの?」
「それは…。私も、とても楽しいわ。でも…」
「かぐや?」
「ねえ、お願い。時間を頂戴。少し…考えさせて」
「…わかったわ」


かぐや姫は考え込んでしまいました。
こんなに長居するつもりはなかった。きっと、おじいさんとおばあさんが私を心配している。早く帰って、安心させてあげなくては…。ああ、でもここでの生活は楽しい。それに…あちらへ帰っても、どうせすぐに月の使者が私を拉致しに…じゃなかった、連れ去りに、いや…ええっと…、そう、迎えに来るわ。そんなの、イヤだわ。せっかくあのジジイ…じゃなくって、天帝のところから逃げ出したっていうのに連れ戻されるなんて、絶対にイヤ。そんなことになれば、おじいさんとおばあさんだけではなく、乙ちゃんとも会えなくなってしまう…。今なら、あいつ等は私がここにいることに気づいていない。それに…気づいたところで、海の中は治外法権。私をムリにさらうことはできやしない。
だったら…。

1時間23分じっくり考えて、かぐや姫の決意は固まりました。
おじいさん、おばあさん、ごめんなさい。かぐやは、乙ちゃんと竜宮城で幸せになります。…あら、なんだか結婚の挨拶みたい?


「かぐや、心は決まった?」
「ええ、乙ちゃん。私…」
「…」
「乙ちゃんと、ここで暮らしていくわ」
「本当!?かぐや!!」
「ええ、よく考えたんだけど…ここで乙ちゃんと一緒にいるのが、私の一番の幸せのような気がするの」
「嬉しい!絶対に幸せにしてみせるからね、かぐや!!」
「ええ、こっちこそ。不束者ですが、どうぞ末永く…」

「「あれ?」」


こうして、かぐや姫は育ててくれたおじいさんとおばあさんのもとにも月の世界にも帰ることなく、今でも幸せに乙姫とともにエーゲ海の底の竜宮城で暮らしています。

そうそう、玉手箱がどうなったかって?
あの日、乙姫は、かぐや姫が地上に帰ると言ったら渡すつもりで用意をしていましたが、かぐや姫は地上には帰りませんでした。だから、今でも玉手箱は乙姫の手元にあります。ただ…中には、かぐや姫の“時間”ではなく、マスカラや口紅…二人の化粧品がはいった小物入れになっているとのうわさです。真偽のほどは定かではありませんが、ある有力な筋からの情報です、とだけ言っておきましょう。
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更新はまったり遅いですが、徒然なるままに日記やら突発でSSやら書いていく所存ですのでどうぞヨロシク。
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