白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Mon 17 , 01:12:23
2008/03
突発的に書いてみました。
「意外だったな」
政宗が、幸村と付き合っているのだと小十郎に告げた日。
小十郎は幸村に「政宗様を泣かせたら命はないと思え」と言っただけだった。
今夜は政宗は幸村の家に泊まるらしく、既に二人は帰ってしまった。
成り行きで同席したまま、なんとなく退出するタイミングを逃してしまった佐助はぽつりと呟いた。
「ああ?」
ぎろりとにらまれて苦笑する。
もともと迫力のある男前ではあるが頬の傷跡のせいでヤクザにしか見えない。
「もっと反対するかと思ってた。二人のこと」
「…」
茶器を片付けて戸締りをしながら小十郎はため息をついた。
「あの方は…」
「うん?」
「昔から、殻を作ってしまうところがおありだった」
小十郎の言う“昔”がいつのことか、佐助にはわかった。
佐助と小十郎はいわゆる前世の記憶というものを持っている。
そして、その上で今生でもかつての主を求めた。
小十郎は政宗を。
佐助は幸村を。
決して恋愛感情ではなく、無二の主として戴く。
今の彼らがかつての彼らと同じではないこともわかっている。
だが、小十郎にとっても佐助にとってもそんなことは些細なことだった。
相違点を数え上げればきりがない。
しかし、根本が変わっていないのだ。
政宗は相変わらず寂しがりで意地っ張りで、でも誰よりもやさしいし人で、、幸村もあいかわらず熱くて真っ直ぐに迷いなく誠実な男だった。
政宗も幸村も前世の記憶など持ち合わせていないけれど、そんなものは小十郎と佐助がわかっていれば十分なこと。
いつの時代でも、どこにいても、誰よりも大切で幸せになって欲しい人。
それだけで、十分だった。
「無意識のうちに、他人を拒絶してしまう。簡単に、他人を世界の外に締め出してしまう。当たり障りのない態度で一人になろうとする。それが、俺はずっと悲しかった」
「でも、片倉サンがいたでしょ」
「俺は、最初からあの方の世界の“中”にいた。これまでもこれからも俺にとってもっとも優先すべきはあの方で、決して裏切らないと誓えるが、それではダメなんだ。おまえには、わかっているだろう?」
「…」
「“外”から、あの方の世界を開く存在が必要だった。前世で、おまえの主がそうしたようにな。生まれ変わって、記憶を失ってもあの方が真田を選び、真田もあの方を選んだ。そして、真田ならあの方の世界を開くことができる。…反対する、理由がないな」
「そっか」
そっと微笑む。
小十郎の政宗に対する深い思い。
それは形が違っても根っこのところでは佐助が幸村に抱く思いと同じだ。
そんな風に政宗が愛されていることが、政宗の友人として嬉しかった。
そして、幸村を主とする佐助にとって、幸村を認めてもらっていることも嬉しかった。
「幸せに、なれるといいね」
「…」
「戦乱の時代が終わった今なら、あの二人でも幸せになることができる」
「ああ」
「あの二人が幸せになれるんだったら、俺はなんだってしますよ」
きっと小十郎も同じ思いのはずだ、と確信しながら笑うと、小十郎もふっと表情を和らげた。
「さて、と」
上着を手に取りながら小十郎が佐助を見る。
「メシ食いに行くぞ」
「へ?」
「どうせ、今夜は帰ったところであの二人に邪魔者扱いされるだけだろ。ついでだ。泊まってけ」
思いがけない申し出に呆然とする。
「猿飛?」
「え、あ、はい。…えっと、じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらいます」
「ああ」
「じゃあ、さっさと行くぞ」
「はい」
―――――――
政宗は母親に愛されなかったトラウマとかから他人と接するのが苦手。でも、立場とかもあってそうもいってられない。で、結局あたりさわりなく人と付き合っていく。深いところには立ち入らないし立ち入らせない。見えない壁をまわりにつくってしまう。
小十郎は最初から壁の中にいる人。中からは、決して壊せない壁。だって、ムリに壁を壊せば政宗を傷つけて、悪くすれば壊してしまうから。
幸村は壁の外にいる人。コンコンと壁を叩いて、少しずつ政宗の世界を開いていくことができる人。佐助も外にいるけれど、自分も心に闇があるから政宗に何も言えない。
だから、小十郎と佐助は最初から傍観者にしかなれない。
前世の記憶を持っていることもそれに拍車をかける。
できることは、二人が幸せになれるように極力邪魔者を排除するだけ。
とは言っても、小十郎さんは幸村のことを認めているけれど、やっぱり気に食わないとは思っていますよ。だって、大事な殿をさらっていっちゃうんだもん!
「意外だったな」
政宗が、幸村と付き合っているのだと小十郎に告げた日。
小十郎は幸村に「政宗様を泣かせたら命はないと思え」と言っただけだった。
今夜は政宗は幸村の家に泊まるらしく、既に二人は帰ってしまった。
成り行きで同席したまま、なんとなく退出するタイミングを逃してしまった佐助はぽつりと呟いた。
「ああ?」
ぎろりとにらまれて苦笑する。
もともと迫力のある男前ではあるが頬の傷跡のせいでヤクザにしか見えない。
「もっと反対するかと思ってた。二人のこと」
「…」
茶器を片付けて戸締りをしながら小十郎はため息をついた。
「あの方は…」
「うん?」
「昔から、殻を作ってしまうところがおありだった」
小十郎の言う“昔”がいつのことか、佐助にはわかった。
佐助と小十郎はいわゆる前世の記憶というものを持っている。
そして、その上で今生でもかつての主を求めた。
小十郎は政宗を。
佐助は幸村を。
決して恋愛感情ではなく、無二の主として戴く。
今の彼らがかつての彼らと同じではないこともわかっている。
だが、小十郎にとっても佐助にとってもそんなことは些細なことだった。
相違点を数え上げればきりがない。
しかし、根本が変わっていないのだ。
政宗は相変わらず寂しがりで意地っ張りで、でも誰よりもやさしいし人で、、幸村もあいかわらず熱くて真っ直ぐに迷いなく誠実な男だった。
政宗も幸村も前世の記憶など持ち合わせていないけれど、そんなものは小十郎と佐助がわかっていれば十分なこと。
いつの時代でも、どこにいても、誰よりも大切で幸せになって欲しい人。
それだけで、十分だった。
「無意識のうちに、他人を拒絶してしまう。簡単に、他人を世界の外に締め出してしまう。当たり障りのない態度で一人になろうとする。それが、俺はずっと悲しかった」
「でも、片倉サンがいたでしょ」
「俺は、最初からあの方の世界の“中”にいた。これまでもこれからも俺にとってもっとも優先すべきはあの方で、決して裏切らないと誓えるが、それではダメなんだ。おまえには、わかっているだろう?」
「…」
「“外”から、あの方の世界を開く存在が必要だった。前世で、おまえの主がそうしたようにな。生まれ変わって、記憶を失ってもあの方が真田を選び、真田もあの方を選んだ。そして、真田ならあの方の世界を開くことができる。…反対する、理由がないな」
「そっか」
そっと微笑む。
小十郎の政宗に対する深い思い。
それは形が違っても根っこのところでは佐助が幸村に抱く思いと同じだ。
そんな風に政宗が愛されていることが、政宗の友人として嬉しかった。
そして、幸村を主とする佐助にとって、幸村を認めてもらっていることも嬉しかった。
「幸せに、なれるといいね」
「…」
「戦乱の時代が終わった今なら、あの二人でも幸せになることができる」
「ああ」
「あの二人が幸せになれるんだったら、俺はなんだってしますよ」
きっと小十郎も同じ思いのはずだ、と確信しながら笑うと、小十郎もふっと表情を和らげた。
「さて、と」
上着を手に取りながら小十郎が佐助を見る。
「メシ食いに行くぞ」
「へ?」
「どうせ、今夜は帰ったところであの二人に邪魔者扱いされるだけだろ。ついでだ。泊まってけ」
思いがけない申し出に呆然とする。
「猿飛?」
「え、あ、はい。…えっと、じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらいます」
「ああ」
「じゃあ、さっさと行くぞ」
「はい」
―――――――
政宗は母親に愛されなかったトラウマとかから他人と接するのが苦手。でも、立場とかもあってそうもいってられない。で、結局あたりさわりなく人と付き合っていく。深いところには立ち入らないし立ち入らせない。見えない壁をまわりにつくってしまう。
小十郎は最初から壁の中にいる人。中からは、決して壊せない壁。だって、ムリに壁を壊せば政宗を傷つけて、悪くすれば壊してしまうから。
幸村は壁の外にいる人。コンコンと壁を叩いて、少しずつ政宗の世界を開いていくことができる人。佐助も外にいるけれど、自分も心に闇があるから政宗に何も言えない。
だから、小十郎と佐助は最初から傍観者にしかなれない。
前世の記憶を持っていることもそれに拍車をかける。
できることは、二人が幸せになれるように極力邪魔者を排除するだけ。
とは言っても、小十郎さんは幸村のことを認めているけれど、やっぱり気に食わないとは思っていますよ。だって、大事な殿をさらっていっちゃうんだもん!
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