白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Fri 21 , 02:37:53
2007/12
チカ→ダテ(♀)? (BASARA)
「どうすれば、伝わるんだろうな」
隣で眠る隻眼の女の髪をなでながら、元親は呟いた。
いつものように情事の後、彼女は逃げるように意識を手放した。
ほんの数ヶ月前まで男として生きていた女は元親がその身体を無理やり拓くまで、何も知らなかったのだ。
家臣たちに愛され、守られ、そして彼らを愛し、守ってきた女は、己を男であるとずっと偽ってきた。
男の着物を身にまとい、戦場に立ち、自ら刀を振るって。
己は男であると、何よりも自分自身を偽っていた。
だから、物理的に女の力が男にかなわないことは知っていても、自分が押し倒されて犯されるとは思ってもいなかっただろう。
己の身体が“女”として使われることなど、考えたこともなかっただろう。
はじめてみたとき、きれいな男だと思った。
そして、思わぬ華奢な肢体に驚いた。
うわさに聞く奥州の独眼竜はどんな猛き男だろうと想像していたというのに。
しかし、戦い始めてすぐに内心舌を巻いた。
その細い腕から繰り出される攻撃は鋭く、力は元親にはるかにかなわないものの速さは相手のほうが上だった。
体格的に不利な分、その俊敏さを武器にして。
攻撃は最大の防御だとばかりに決してひくことはない。
それでもなんとか勝利して。
そして、独眼竜と呼ばれた男の秘密を知った。
すなわち、彼の竜は女である、と。
興味を覚えた。
文句を言いようがなく美しい女であったし、無理やりはだけさせ晒をはがせば、白い豊満な乳がのぞいてそれも元親を煽った。
片目であることなど全く気に入らないし、そもそも隻眼ならば、お互い様。
さっさと殺せ、首を取れという女に、元親は言った。
「おまえが、俺の女になるんなら奥州は…このままにしてやってもいいぜ?もちろん、おまえの家臣も、だ」
たったの一言で、竜は堕ちた。
連れ帰った女を毎晩犯して、何も知らなかった身体に快楽を植えつけて。
鬼の子を孕ませるためにたっぷりと精を注ぎ込む。
始めは拒絶と苦痛の声ばかりだったものが、いつからかすすり泣くように喘ぎ快感を訴えるようになった。
女の身体は極上で、いくら抱いても飽きぬほどであったがいつまでたっても慣れることなく意識を飛ばしてしまうので、無理をさせて壊すのはもったいないと我慢する。
女はほとんど笑わない。
心だけは渡さないとでもいうかのようにひどく頑なだ。
だが、一度だけ。
一度だけ、彼女は元親に笑ったのだ。
ひどく、嬉しそうに。
その瞬間に、元親は女を愛し始めた。
女が行くのを許された場所はそう多くなかった。
城の外に連れて行くときは必ず元親が一緒だったし、城の中においても家臣たちが多くいる場所へ行くことは許されなかった。
つまり、女を愛する前から独占欲だけは強かったのだ。
ある時、女を連れて砂浜を歩いた。
それはたんなる気まぐれで深い意味などなかったのだが、ずいぶん久しぶりに外を歩くことができて、女はなんとなくいつもよりも明るい顔をしていた。
元親としても、妻とした女が暗い顔をしているよりは明るい顔をしているほうが嬉しい。
そして、熱心に海を眺める姿を見て、何の気なしに海が好きかとたずねると、少々の沈黙の後、こくりと女はうなずいた。
「荒々しくて、強くて…でも、きれいだ」
「そうか」
自分の好きなものを好きだと言われたのが嬉しくて上機嫌で話しかけると、ぎこちなくではあるが返事も返ってきて、ほとんど始めての穏やかな会話にさらに気分がよくなった。
だから、言った。
「じゃあ、おまえの部屋を海の見えるところに移してやろうか」
女は部屋で過ごすことが多かった。
ぼんやりと、窓の外を眺めていることを知っていた。
だからこその提案。
思いもかけない言葉だったのだろう、女は虚をつかれた顔をして、それから見とれるほどに嬉しそうな笑顔でうなずいたのだ。
「ありがとう」
その笑顔に、恋をした。
今でも元親は夜毎に女を抱く。
だが、以前よりもよほど優しく丁寧に愛撫し、決して乱暴にはせずに快楽ばかりを与える。
その変化に戸惑いながらも無垢な身体は与えられる快楽に従順に反応し、嬌声をあげる。
会話もちゃんとするし以前よりは笑うことも多くなった。
それでも、女は決して元親を許さない。
元親は彼女の愛する家臣たちを少なくない数殺したし、それはお互い様と言ってしまえばそれまでのことだしこの乱世においていちいち怨んでいてもしようのないことではあるけれど。
散っていった命を思えばそうやすやすと許せるものでもないことはわかる。
だが、それよりも何よりも女をかたくなにするのは、元親が彼女を“女”にしたことだった。
男として育てられ、男として生きて、そしていつか男として死んでいくはずだった彼女の本来の性を暴いて無理やり女にしたことだった。
女として、あつかうこと。
それは、それまでの彼女の人生のすべてを否定する行為だった。
今更愛していると言っても伝わらないことを知っているし、その言葉は彼女を追い詰めることしかできないと知っているから、元親は何も言えない。
第一、彼女は元親の言葉を信じない。
だから、ただ優しくして全身で愛を示すことしかできない。
抱くことをやめれば少しは受け入れてくれるのだろうか。
だが、元親は心と身体と両方がほしいのだ。
それが叶わないのならせめて身体だけでもほしい。
それがどれだけむなしい考えであるかなんて、わかっている。
だがそれでも元親はこの女がほしいのだ。
片方が手に入らないからと言って両方をあきらめることはできない。
片方だけであろうとも、手を伸ばせば届くのだ。
どうして、手を伸ばさずにいられるだろうか。
どれだけ考えても結論はいつだってそこにたどりつく。
(いつか…)
いつか、この思いが伝わるのだろうか。
いつか、女が元親を愛する日が来るだろうか。
かすかな希望を抱かずにはいられない自分に苦笑する。
だが、それでも信じたいのだ。
いつか、そんな日が来ると。
許すことはできなくとも、受け入れてくれる日が来ると、信じたいのだ。
「…愛してる」
今は、眠った横顔にささやくことしかでいないけれど。
いつか、真っ直ぐにその瞳を見つめて告げることができたのなら。
眠った女の眦から涙が一筋こぼれおちた。
「どうすれば、伝わるんだろうな」
隣で眠る隻眼の女の髪をなでながら、元親は呟いた。
いつものように情事の後、彼女は逃げるように意識を手放した。
ほんの数ヶ月前まで男として生きていた女は元親がその身体を無理やり拓くまで、何も知らなかったのだ。
家臣たちに愛され、守られ、そして彼らを愛し、守ってきた女は、己を男であるとずっと偽ってきた。
男の着物を身にまとい、戦場に立ち、自ら刀を振るって。
己は男であると、何よりも自分自身を偽っていた。
だから、物理的に女の力が男にかなわないことは知っていても、自分が押し倒されて犯されるとは思ってもいなかっただろう。
己の身体が“女”として使われることなど、考えたこともなかっただろう。
はじめてみたとき、きれいな男だと思った。
そして、思わぬ華奢な肢体に驚いた。
うわさに聞く奥州の独眼竜はどんな猛き男だろうと想像していたというのに。
しかし、戦い始めてすぐに内心舌を巻いた。
その細い腕から繰り出される攻撃は鋭く、力は元親にはるかにかなわないものの速さは相手のほうが上だった。
体格的に不利な分、その俊敏さを武器にして。
攻撃は最大の防御だとばかりに決してひくことはない。
それでもなんとか勝利して。
そして、独眼竜と呼ばれた男の秘密を知った。
すなわち、彼の竜は女である、と。
興味を覚えた。
文句を言いようがなく美しい女であったし、無理やりはだけさせ晒をはがせば、白い豊満な乳がのぞいてそれも元親を煽った。
片目であることなど全く気に入らないし、そもそも隻眼ならば、お互い様。
さっさと殺せ、首を取れという女に、元親は言った。
「おまえが、俺の女になるんなら奥州は…このままにしてやってもいいぜ?もちろん、おまえの家臣も、だ」
たったの一言で、竜は堕ちた。
連れ帰った女を毎晩犯して、何も知らなかった身体に快楽を植えつけて。
鬼の子を孕ませるためにたっぷりと精を注ぎ込む。
始めは拒絶と苦痛の声ばかりだったものが、いつからかすすり泣くように喘ぎ快感を訴えるようになった。
女の身体は極上で、いくら抱いても飽きぬほどであったがいつまでたっても慣れることなく意識を飛ばしてしまうので、無理をさせて壊すのはもったいないと我慢する。
女はほとんど笑わない。
心だけは渡さないとでもいうかのようにひどく頑なだ。
だが、一度だけ。
一度だけ、彼女は元親に笑ったのだ。
ひどく、嬉しそうに。
その瞬間に、元親は女を愛し始めた。
女が行くのを許された場所はそう多くなかった。
城の外に連れて行くときは必ず元親が一緒だったし、城の中においても家臣たちが多くいる場所へ行くことは許されなかった。
つまり、女を愛する前から独占欲だけは強かったのだ。
ある時、女を連れて砂浜を歩いた。
それはたんなる気まぐれで深い意味などなかったのだが、ずいぶん久しぶりに外を歩くことができて、女はなんとなくいつもよりも明るい顔をしていた。
元親としても、妻とした女が暗い顔をしているよりは明るい顔をしているほうが嬉しい。
そして、熱心に海を眺める姿を見て、何の気なしに海が好きかとたずねると、少々の沈黙の後、こくりと女はうなずいた。
「荒々しくて、強くて…でも、きれいだ」
「そうか」
自分の好きなものを好きだと言われたのが嬉しくて上機嫌で話しかけると、ぎこちなくではあるが返事も返ってきて、ほとんど始めての穏やかな会話にさらに気分がよくなった。
だから、言った。
「じゃあ、おまえの部屋を海の見えるところに移してやろうか」
女は部屋で過ごすことが多かった。
ぼんやりと、窓の外を眺めていることを知っていた。
だからこその提案。
思いもかけない言葉だったのだろう、女は虚をつかれた顔をして、それから見とれるほどに嬉しそうな笑顔でうなずいたのだ。
「ありがとう」
その笑顔に、恋をした。
今でも元親は夜毎に女を抱く。
だが、以前よりもよほど優しく丁寧に愛撫し、決して乱暴にはせずに快楽ばかりを与える。
その変化に戸惑いながらも無垢な身体は与えられる快楽に従順に反応し、嬌声をあげる。
会話もちゃんとするし以前よりは笑うことも多くなった。
それでも、女は決して元親を許さない。
元親は彼女の愛する家臣たちを少なくない数殺したし、それはお互い様と言ってしまえばそれまでのことだしこの乱世においていちいち怨んでいてもしようのないことではあるけれど。
散っていった命を思えばそうやすやすと許せるものでもないことはわかる。
だが、それよりも何よりも女をかたくなにするのは、元親が彼女を“女”にしたことだった。
男として育てられ、男として生きて、そしていつか男として死んでいくはずだった彼女の本来の性を暴いて無理やり女にしたことだった。
女として、あつかうこと。
それは、それまでの彼女の人生のすべてを否定する行為だった。
今更愛していると言っても伝わらないことを知っているし、その言葉は彼女を追い詰めることしかできないと知っているから、元親は何も言えない。
第一、彼女は元親の言葉を信じない。
だから、ただ優しくして全身で愛を示すことしかできない。
抱くことをやめれば少しは受け入れてくれるのだろうか。
だが、元親は心と身体と両方がほしいのだ。
それが叶わないのならせめて身体だけでもほしい。
それがどれだけむなしい考えであるかなんて、わかっている。
だがそれでも元親はこの女がほしいのだ。
片方が手に入らないからと言って両方をあきらめることはできない。
片方だけであろうとも、手を伸ばせば届くのだ。
どうして、手を伸ばさずにいられるだろうか。
どれだけ考えても結論はいつだってそこにたどりつく。
(いつか…)
いつか、この思いが伝わるのだろうか。
いつか、女が元親を愛する日が来るだろうか。
かすかな希望を抱かずにはいられない自分に苦笑する。
だが、それでも信じたいのだ。
いつか、そんな日が来ると。
許すことはできなくとも、受け入れてくれる日が来ると、信じたいのだ。
「…愛してる」
今は、眠った横顔にささやくことしかでいないけれど。
いつか、真っ直ぐにその瞳を見つめて告げることができたのなら。
眠った女の眦から涙が一筋こぼれおちた。
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