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Sun 16 , 01:52:18
2007/12
五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする
古今和歌集 夏 (よみ人知らず)



先日、授業で和泉式部日記をやったときに出てきました。
この歌が直接出たと言うよりは、引用されていたわけなんですけど。

さて、この歌は「よみ人知らず」なんです(この「よみ人知らず」という言い方、好きです。現代だったら「作者不明」という味も素っ気もない言い方するんでしょうね。昔の、こういう言い回しに惹かれます)。
この歌の作者は男でしょうか、女でしょうか。

先生は(蛇足ですが、私はこの先生のことが本当に本当に大好きです。友人連中に呆れられるくらいに好きです)、この作者を「男だと思います」といっていました。
しかし、私はこの歌を初めて見たときに「女性っぽいな」と思ったのでした。
だから、先生の言葉を意外に思い、他の人はどう感じるのかと気になって母に聞いてみたところ、母も「男性っぽい」と言っていました。

確かに、どちらともとれる歌です。
花の香りに関する歌と言えば、紀貫之の

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

を思い出します。
花と女性を結びつけるという考え方は、自然ですよね。むしろ、男性よりも女性を連想しやすいと思います。

ところで、橘の花とはどういうものでしょうか?
実物を見たことはないのですが、私のイメージは少し厚い花弁の、白い花です。柑橘類だということで、おそらくさわやかな香りでしょう。

白い可憐な花は女性をイメージさせます。
しかし、柑橘のさわやかな香りはどちらかといえば男性をイメージさせると思うのです。
だから、“橘の花”のイメージから、おそらく私はこの歌の作者を女性だと思ったのでしょう。

それに、この時代の女性はめったに外に出ませんから恋人や家族以外の男性と直接会うこともありませんでした。身分の高い女性であれば、直接言葉を交わすことすらなかったでしょう。
そういう女性にとって、恋人とはどれほどの意味を持つのか。
きっと、会えなくなっても忘れられないと思うのです。
何かにつけて「ああ、あんな人もいたなぁ」と思いを馳せ、懐かしく、もしくはいとおしく思うのではないでしょうか。
そして、男性がかつての恋人を思うよりもずっと多くのことを覚えているのではないか、と思うのです。

男性は外に出て色々な人に出会います。
広い世界を知っており、当然知人も多いでしょうしこの時代の常として恋人が複数いることは珍しくありません。

それに対し、女性は先ほども述べたように家の奥に引きこもっているのです。
この時代、女性が「世の中」という言葉を使えば、それは十中八九「男女の仲」を示すように、彼女たちの世界はとても狭い。
だから、男のほんの何気ない仕草や言葉、そして衣に焚き染めた香りも忘れられないのではないでしょうか。

だから私はこの歌を見ると、五月の緑あふれる庭を、端近くに座して懐かしい気分にひたりながら穏やかに微笑み、かつての恋人を思い出す女性を思い浮かべずにはいられないのです。
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