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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Sat 19 , 23:50:09
2008/07
時/をか/ける少/女見ました。
そして、いつものごとく私の悪い癖…つまり、なんでもダテ受けにしてダブルパロをしたくなるという症状がまたしても現れました。

というわけで、チカダテでlet's妄想!
あ、時/をか/ける少/女のネタバレを含むかもしれませぬのでご注意あれ。
あ、ちなみにnot 女体です。




千昭→元親   真琴→政宗   (光隆→慶次)

舞台はどっかの港町でいいんじゃないかな、相手は元親だし。
で、元親が過去に戻ってでも見たかったのは、絵じゃなくて「船」と「青い海」でいいと思う。

Scine1

「どうしても、見たいモノがあったんだ」
二人だけの世界で、元親は遠くを見るようにそう言った。
今、元親と政宗以外のものはすべて時間が止まっている。
足を踏み出したままの女性。自転車にペダルをかけたままとまったままの少年。羽を広げたトンボ。羽ばたこうとした瞬間の鳥。
音もなく、色もない。
唯一色を持った存在―元親を、政宗は必死に追いかける。
「何だよ、それ」
「船が見たかった」
「…船?」
「ああ、知ってるだろ。もうすぐ、ここの港に寄港する帆船」
「…」
「俺の時代には、もう帆船なんてひとつも無い。絵や写真でしか見れないんだ。でも、俺はそいつが…帆船が、好きなんだ。そいつに乗って、海を…そうだ、俺は海が青いということも、絵や写真の中でしか知らなくて、そんなのありえないって思ってた…帆船で、海をわたって、いろんなところに行ってみたいと思ってた。それができなくても、一度でいいから、帆船を見たかったんだ」
「…海は、青くないのか?」
「ああ。海は、赤い」
「赤?」
「血と、毒ガスの色だ」
「…」
「なんで海が青いのか知ってるか」
「空の青を映すからだろ」
「ああ。…俺の時代の空は、青くなんて無い。青い空だって、俺はこの時代にくるまで見たことがなかった。そんなものはありえない、って思ってたぜ」
「…」
「初めて青い空を見て、白い雲を見て、青く光る波を見たとき、俺は感動した。だが、それ以上に…」
ふと真顔になった元親が俺をじっと見る。俺と対の眼帯の、たったひとつのまっすぐな瞳に居心地が悪くて身じろぐと、ふと微笑んで元親は空を見上げた。
「なんだよ」
「いや、やめておこう」
「…余計気になるだろ」
元親の腕をつかもうとするが、するりと逃げられた。
空ぶった手が悲しくて、もう一度手を伸ばそうとするがかわされる。
「俺、明日には姿を消すぜ」
「…なんだよ、それ」
「本当は、誰にも知られちゃいけなかったんだ」
「俺、誰にも言わねえよ」
「もっと早く帰るつもりだったんだけどよ…」
「絶対に、誰にも言わねえから!」
「おまえらと…おまえといるのが、あんまり楽しくってさ。気がついたら…もう、夏だ」
「元親!」
止まった人たちの間をするすると元親は進んでいく。
「一緒に、夏祭り行くって約束したじゃねぇか!」
「悪ぃ」
声のするほうに必死に顔を向けるけれど、見つけられない。
あのきれいな銀の髪が、見えない。
「ナイターも見に行くって!」
「申し訳ねぇ」
どこだ、どこに行った。
「元親!」
「じゃあな」
後ろで声がした。
「元親…チカ!」
急いで振り返るが、人ごみの向こうから右手がひらひらと手を振っている様子しか見えなかった。





Scine2
「あんたの時代にも、青い空と海と、あとあんたの好きな帆船が残ってるようにがんばるから」
「頼むわ」
「だから…」
何と言えばいいのかわからなかった。
俺は、元親がどれほど先の未来にいる人間なのかも知らないのだ。
それに、たかが俺一人に何ができるだろう?
何の意味も、無いかもしれない。
俺がどれほどがんばっても、何も変わらないかもしれない。
それでも、俺は、何かをしたかった。
この男のために。
「政宗」
元親が、ゆっくり立ち上がる。
制服についた草を手で払い、空を見上げる。
「…元親」
俺も同じように立ち上がり、それから同じように空を見上げた。
「この青い空が、好きだ」
「うん」
「あの青い海が、好きだ」
「うん」
「見れて、よかった」
「うん」
「本物の帆船は見れなかったけど」
「うん」
「でも、おまえらと一緒にたくさん野球してよ」
「うん」
「楽しかった」
「うん」
「もっと早く帰らなきゃいけなかったのに、気がつけば…もう、夏だ。あんまり楽しかったから、つい先延ばしにしちまった」
元親の視線がゆっくりと下がっていき、俺の顔でとまった。
俺も同じように、元親を見る。
「政宗」
「…なんだよ」
きれいな銀の髪。まっすぐなたった一つの瞳。吸い込まれそうだ。
「おまえ…」
「…」
「もっと、気をつけろよ」
「なんだよ、それ!」
「そそっかしいっつーか、危ねぇんだよ、おまえ」
「うるせぇ!」
「もっと周りを良く見ろ、注意力が足りねえぞ」
「最後だっつーのに、それかよ!」
「っんだよ、心配してやってるっつーのに」
「はいはい、わかったわかった。もう行けよ、自分の時代に帰っちまえ!」
俺は今、ちゃんと笑えているだろうか。
本当は、帰らないで欲しい。
自覚したばかりの想いはここにあって、今ならまだこの男に手が届いて、きっとこの男の中にも俺と同じ想いがある。
「ああ」
「さっさと、帰れ」
それでも、俺はこいつを引き止めてはいけない。
時代が、違うのだ。
ここは、こいつが本来いるべきところじゃない。
「ああ」
「…じゃあな」
別れの言葉。
できるだけそっけなく、いつもと同じように。
涙なんてみせたりしない。笑っててやるよ。
「じゃあな」
「もう行けよ」
別れの言葉を吐きながらも動こうとしない元親に焦れて、背中を押しやる。
「…」
そのまま、しぶしぶと歩き出した元親をほんの少しだけ見送って、すぐに踵を返して正反対の方向に歩き出す。

たまらなくなって、どうしても我慢できなくて、振り返った。
そこにはもう、元親はいない。
「…っく、…ふ、…ぅ、あ…」
歯を食いしばってもこぼれてくるこれはなんだ。
どれほどきつく目をつぶっても流れてくるこれはなんだ。
「ぅああぁ、ん…ひっく、…うあぁ、…、ん」
元親。
元親。
元親。
行かないで。
俺を一人にしないで。
そばにいて。
口に出せない我侭が頭の中で空回りする。
もう二度と会えないのか。
胸が張り裂けそうに悲しい。
いつのまに、こんなに好きになっていたんだ。
元親。


その瞬間。
ぎゅ、と。
背後から抱きしめられ、驚くまもなく体を反転させられた。
「え…」
気がつけば、強引に抱き寄せられて。
「政宗」
唇が、重なっていた。

何が起こっているのか理解する前にそれは離れ、きつく抱きしめられる。
「未来で、待ってるから」
「…っ、うん」
「…」
「すぐに、会いに行く」
「ああ」
「走って、行くから」
「ああ」
もう一度視線を絡めて、触れるだけの口付けをして。
元親は、俺を放して走っていった。

遠く遠く、今の俺には届かない未来に。




scine3
「なあ、慶次」
「んー?」
「俺、やりたいこと決まったぜ」
「マジかよ!」
「マジだ」
「なになに、教えてよ!」
「ヤダね!」
力いっぱい、ボールを投げる。
「ケチ!」
フルスイング。
ボールは天高く飛んでいく。
あいつの大好きな、青い空へ。
「ま、いつか、な」


生きようと思った。
もっと、前向きに。
前を向いて、生きようと思った。
元親が楽しかったと言ったように、俺にとっても3人で過ごす時間は、あいつがいた時間は、とても楽しかった。
楽しすぎて、きっと、俺は現実から目をそむけていた。

元親が自分の時代へ戻ったように、俺も現実の世界に戻らなければいけない。
慶次はあいかわらずそばにいるけれど、卒業してしまえば世界中を放浪しに行ってしまう。そして、元親はここにいない。
モラトリアムは、もう終わりを告げる。

やらなければいけないことはたくさんある。
俺は手始めに、新しく自分の世界を作るために古い世界を壊すことにした。
この夏休み、仙台の実家に戻って母親と正面から対決しようと思う。
正直なところを言えば逃げてしまいたいし、未だに俺はあの人が恐い。
でも、いつか来るかもしれない未来に、元親とちゃんと正面から向き合える自分でありたい。
元親のいる未来がいつのことなのか、俺は知らない。
もしかしたら、それは10年後であるのかもしれないし、100年後なのかもしれない。
もう一度出会った時、俺は80歳くらいの爺さんかもしれない。もしかしたら、会えないまま死んでしまうかもしれない。
それでも。
俺は、元親の待つ未来に会いたいから。
いつ死んでもいい、なんてもう思わない。
ちゃんと、今を生きる。
あいつの待つ、未来に向かって。
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