白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Tue 01 , 23:15:23
2008/07
こじゅまさで、こんなパラレルが書きたい↓
系図を紐解けば、「小十郎」という名を与えられたものが幾人かいることに気がつく。
その名を与えられたものは必ず家を継ぎ、そして彼が当主である間は絶対にこの片倉家がつぶれることはありえない。
なぜなら、“小十郎”というのは青い竜神に祝福を受けたものの名だからだ。
「おお、無事に生まれたか。どれどれ…元気なおのこだ。早速、竜神様に見てもらいにゆこうではないか」
案じていたよりも安らかなお産。
疲れた顔をしながらも幸福そうに微笑む妻の無事を喜び、あらためて湧き上がる妻へのいとおしさと生まれたばかりの小さな命を抱きしめて、影長は笑った。妻の汗にぬれた額をぬぐって、優しくささやく。
「私がこの子を竜神様の御前へお連れするから、おまえは、少し休んでいなさい」
「はい、あなた」
お産という大役を終えた妻がそっと瞳を閉じ、すぐに寝入ったのを見届けてから、小さくてふにゃふにゃした生まれたばかりの息子を恐る恐る抱き上げた。
「さあ、行こうか」
代々続く神職の家系である片倉家は、社のさらに奥にあるもうひとつの鳥居をくぐった先の神域に生まれた子を連れて行かなければならない。
そこで、彼らが祀る竜神に子を見てもらうのだ。
「竜神様」
驚くほどに澄んだ泉の前でそっと名を呼ぶと、いつ現れたのか、非常に美しい青年が水の上に立っていた。
「Hey、待ちくたびれたぜ、影長。…そいつが、新しく生まれたおまえの子か?」
「はい。抱いてやってくださりませ」
無造作に、青年が水の上を歩いてこちらにやってくる。彼の何気ないしぐさにさえ息を呑むほどの優雅さがあった。
伸ばされた腕に、そっと嬰児を差し出せば、優しく抱き取られた。
「Oh…」
腕に嬰児を抱きしめた瞬間、感極まったように竜神はつぶやき、そして、見たこともないほどに美しく幸福そうな笑みを溢れさせた。
「Long time no see…待ちわびたぜ、小十郎」
おまえに、限りのない祝福を。
ささやいて、額に口付けた竜神の蕩けた微笑の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあった。
「影長、こいつの名は小十郎だ」
告げられた名は、片倉家においてもっとも尊ばれるもの。
竜神の祝福と愛を一身に受ける存在。
一族に繁栄をもたらすもの。
「小十郎、ですか」
「ああ。間違いない。俺が小十郎を間違えるはずがねえ!」
こんな感じで始まる、竜神・政宗と人の子・小十郎のお話。
神様だからずっとずっと、長い時間を生き続ける政宗。数え切れないほどの出会いと別れ。
遠い昔に小十郎と政宗は出会い、愛し合い、けれども人の子である小十郎は死んでしまった。
長い時を経て、小十郎は生まれ変わる。新たな生を受けた小十郎は、政宗のことを覚えてはいないけれど。それでも、その魂は間違いなく小十郎のもの。政宗が、唯一愛した男のもの。
覚えていなくてもかまわない。
ただ、そばにいさせて欲しい。
生きていて欲しい。
それだけで、俺は、息が詰まるほどに幸福なのだから。
政宗はこれ以上ないほどに小十郎を愛しいつくしむ。
けれど、小十郎は政宗が愛しているのは自分ではない「小十郎」なのだ、自分は彼の愛した「小十郎」の身代わりなのだ、と思い込み、いらいらする。
たとえ、政宗の言うように同じ魂を持っていたとしても俺は俺でしかないし、今よりもっと前の自分なんて、何の関係もない、それは俺ではないのだ、と否定する。
その裏にあるのは狂おしいまでの政宗への恋情と独占欲。
幸福そうな顔で、俺ではない俺の話をするあんたが憎い。
俺を好きだというのなら、今の俺だけを見ればいいのに!
少年期の小十郎さんは、そんな感じでもやもやしてます。
あ、ちなみに丁寧語で話したりなんかはしません。
で、政宗様は当然のように隻眼なのです。
彼は、実は、昔は人だったのです。
人だったころの記憶はほとんど残っていないけれど、右目を失ったのは彼がまだ人であったころ。
はっきりと覚えているのは、神になったばかりのまだ力が安定せず弱弱しいころに妖に襲われていた自分を助けてくれた男。
名前は、片倉小十郎。
初めて政宗を愛し守り、あるがままに受け入れてくれた人。
誰よりも大切な、いとしい人。
「死ぬな、小十郎…死なないで…」
「政宗様…」
そっと、力なく伸ばされた手が涙にぬれる政宗の頬に触れる。その手の頼りない力のなさにますます涙が溢れる。
「申し訳ありません。小十郎は…もう、逝かねばならないのです。ああ、そのような顔をしないでください。小十郎は、幸福でした。あなたに出会えて、本当に幸福だったのです。愛しています、政宗様。この生に、なんの悔いもありませぬ。ただ…残していく、あなたのことが心配だ」
じゃあ、死なないで。子どものように駄々をこねると困ったように笑いながら、小十郎は、ひとつ、最期の誓いをくれた。
「何度でも、きっと、生まれ変わってあなたのそばに還ります。どれほどの時間がかかっても、小十郎はきっとあなたを一人にはしません。けれど、生まれ変わった私はあなたを忘れるかもしれません。ですから、政宗様」
生まれ変わった小十郎を、もう一度、見つけてくださいますか?
系図を紐解けば、「小十郎」という名を与えられたものが幾人かいることに気がつく。
その名を与えられたものは必ず家を継ぎ、そして彼が当主である間は絶対にこの片倉家がつぶれることはありえない。
なぜなら、“小十郎”というのは青い竜神に祝福を受けたものの名だからだ。
「おお、無事に生まれたか。どれどれ…元気なおのこだ。早速、竜神様に見てもらいにゆこうではないか」
案じていたよりも安らかなお産。
疲れた顔をしながらも幸福そうに微笑む妻の無事を喜び、あらためて湧き上がる妻へのいとおしさと生まれたばかりの小さな命を抱きしめて、影長は笑った。妻の汗にぬれた額をぬぐって、優しくささやく。
「私がこの子を竜神様の御前へお連れするから、おまえは、少し休んでいなさい」
「はい、あなた」
お産という大役を終えた妻がそっと瞳を閉じ、すぐに寝入ったのを見届けてから、小さくてふにゃふにゃした生まれたばかりの息子を恐る恐る抱き上げた。
「さあ、行こうか」
代々続く神職の家系である片倉家は、社のさらに奥にあるもうひとつの鳥居をくぐった先の神域に生まれた子を連れて行かなければならない。
そこで、彼らが祀る竜神に子を見てもらうのだ。
「竜神様」
驚くほどに澄んだ泉の前でそっと名を呼ぶと、いつ現れたのか、非常に美しい青年が水の上に立っていた。
「Hey、待ちくたびれたぜ、影長。…そいつが、新しく生まれたおまえの子か?」
「はい。抱いてやってくださりませ」
無造作に、青年が水の上を歩いてこちらにやってくる。彼の何気ないしぐさにさえ息を呑むほどの優雅さがあった。
伸ばされた腕に、そっと嬰児を差し出せば、優しく抱き取られた。
「Oh…」
腕に嬰児を抱きしめた瞬間、感極まったように竜神はつぶやき、そして、見たこともないほどに美しく幸福そうな笑みを溢れさせた。
「Long time no see…待ちわびたぜ、小十郎」
おまえに、限りのない祝福を。
ささやいて、額に口付けた竜神の蕩けた微笑の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあった。
「影長、こいつの名は小十郎だ」
告げられた名は、片倉家においてもっとも尊ばれるもの。
竜神の祝福と愛を一身に受ける存在。
一族に繁栄をもたらすもの。
「小十郎、ですか」
「ああ。間違いない。俺が小十郎を間違えるはずがねえ!」
こんな感じで始まる、竜神・政宗と人の子・小十郎のお話。
神様だからずっとずっと、長い時間を生き続ける政宗。数え切れないほどの出会いと別れ。
遠い昔に小十郎と政宗は出会い、愛し合い、けれども人の子である小十郎は死んでしまった。
長い時を経て、小十郎は生まれ変わる。新たな生を受けた小十郎は、政宗のことを覚えてはいないけれど。それでも、その魂は間違いなく小十郎のもの。政宗が、唯一愛した男のもの。
覚えていなくてもかまわない。
ただ、そばにいさせて欲しい。
生きていて欲しい。
それだけで、俺は、息が詰まるほどに幸福なのだから。
政宗はこれ以上ないほどに小十郎を愛しいつくしむ。
けれど、小十郎は政宗が愛しているのは自分ではない「小十郎」なのだ、自分は彼の愛した「小十郎」の身代わりなのだ、と思い込み、いらいらする。
たとえ、政宗の言うように同じ魂を持っていたとしても俺は俺でしかないし、今よりもっと前の自分なんて、何の関係もない、それは俺ではないのだ、と否定する。
その裏にあるのは狂おしいまでの政宗への恋情と独占欲。
幸福そうな顔で、俺ではない俺の話をするあんたが憎い。
俺を好きだというのなら、今の俺だけを見ればいいのに!
少年期の小十郎さんは、そんな感じでもやもやしてます。
あ、ちなみに丁寧語で話したりなんかはしません。
で、政宗様は当然のように隻眼なのです。
彼は、実は、昔は人だったのです。
人だったころの記憶はほとんど残っていないけれど、右目を失ったのは彼がまだ人であったころ。
はっきりと覚えているのは、神になったばかりのまだ力が安定せず弱弱しいころに妖に襲われていた自分を助けてくれた男。
名前は、片倉小十郎。
初めて政宗を愛し守り、あるがままに受け入れてくれた人。
誰よりも大切な、いとしい人。
「死ぬな、小十郎…死なないで…」
「政宗様…」
そっと、力なく伸ばされた手が涙にぬれる政宗の頬に触れる。その手の頼りない力のなさにますます涙が溢れる。
「申し訳ありません。小十郎は…もう、逝かねばならないのです。ああ、そのような顔をしないでください。小十郎は、幸福でした。あなたに出会えて、本当に幸福だったのです。愛しています、政宗様。この生に、なんの悔いもありませぬ。ただ…残していく、あなたのことが心配だ」
じゃあ、死なないで。子どものように駄々をこねると困ったように笑いながら、小十郎は、ひとつ、最期の誓いをくれた。
「何度でも、きっと、生まれ変わってあなたのそばに還ります。どれほどの時間がかかっても、小十郎はきっとあなたを一人にはしません。けれど、生まれ変わった私はあなたを忘れるかもしれません。ですから、政宗様」
生まれ変わった小十郎を、もう一度、見つけてくださいますか?
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