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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Sun 10 , 22:01:24
2009/05
・カップリングなし
・佐助と政宗がメイン
・パラレル(現代)で、大学生の春休みな政宗、佐助、幸村、慶次、元親
・思いつきと勢いで書いたので中途半端に終わってます
・史実がだいぶ幅を利かせています





「ほら、ここが醍醐寺!“醍醐の花見”で有名なアレだよー」
「おお、これがあの有名な!!」
「すげぇな…ちょうど満開だ」

去年の春、大学で出会った幸村、佐助、元親、慶次、政宗の5人はせっかく春休みだしどこかに旅行しよう、ということで京都にやってきた。政宗は難色を示したものの一時期京都で暮らしたことのある慶次が案内してくれるというので、結局押し切られる形でくることになったのだ。

率先してはしゃぐことはないが、喜ぶ幸村、元親や張り切って案内をしている慶次を見て目を細める政宗を横目でちらりと見て佐助は首をかしげた。
(どうして政宗は京都に来るのを嫌がったんだろう?)
横暴で粗雑なように見えてなかなかに風流人な政宗が京都を嫌う理由がわからない。確かに春、桜の季節ということで観光客が多く人ごみがきらいな政宗にはしんどいかもしれないが、春休みも終わりがけ、4月にはいってすぐの平日ということもあり覚悟していたよりは人ごみもひどくない。来るときの新幹線の中でも少し浮かない顔をしていたな、と思い心配になる。
(なるべく…気をつけて置こう)



醍醐寺、方広寺、三十三間堂、定番の清水寺に八坂神社。少し早めの夕食をとってから二条城のライトアップを見に行くことにした。
「うわ、ぁ…」
「すごい…」
ライトに照らされた桜は昼の長閑な美しさとは違い、どこか妖艶さも持っている。
「桜の木の下には…ってのも、思わず信じたくなっちゃうね」
隣を歩いていた政宗に話しかけると、桜ではなく城を見ていたらしい政宗が一瞬遅れて反応した。
「えっ、ああ。…ああ、そうだな」
そう言って、改めて桜を見上げる政宗はどこか複雑な表情をしていた。
「?」
(今の政宗。…城を見るっていうか…にらんでた?)


食事は外ですませればいいだろう、ということで素泊まりで予約しておいたホテルは値段の割りにきれいで、温泉もついており各々満足した様子だった。

風呂に入った後は当然のように酒が持ち出され、どんちゃん騒ぎ、とまではいかないがそれなりににぎやかな宴会に突入する。
(あー…これ、片付けるのきっと俺なんだろうな)
すでに酔いつぶれて寝てしまっている幸村。飲み比べをはじめた慶次と元親。政宗は我関せずといった体で窓辺に腰掛けて月と桜を肴に一人ちびちびと酒を干している。


「政宗」
「ん。…佐助か」
「俺にもちょーだい」
「…」
盃を差し出すと無言で注いでくれた。
幸村には布団をかけてきたし、だいぶ酔いがまわっていた元親と慶次には水で薄めた酒の入ったビンを置いてきた。あれだけ酔っていればきっと気づかないだろう。
「おかんは大変だな」
「もー、見てたんなら手伝ってよね」
「やなこった」
鼻で笑って唇を酒で湿らせる姿は美しかった。口でどれだけ生意気なことを言っていても、許してしまえるほどに。浴衣を身に纏い、まだわずかにぬれた髪はしっとりとつややかで、酔いにわずかに上気した白い頬。窓の向こうに見える月と桜も相俟って、一枚の絵のようだった。
そして、その姿は遠い昔に見たものによく似ていた。
「………竜の、旦那」
思わず懐かしい呼び名が口をついた。

「お…まえ」
驚きに目を見開いた表情は思っていたよりもあどけなく、そしてどこか頼りなかった。
(ああ、そうか)
その表情に、佐助はすべてを悟った。政宗が京都を嫌った理由。浮かない表情。城をにらんでいた一瞬の横顔。
「旦那も、覚えてるんだね」
問いかけではなく、確認だった。

力なく伏せられたまぶた。震える長いまつげ。
「…ああ」
400年前の自分。今の自分。
二つの記憶を持って生きているのだ。
「だから、俺は…京都がきらいなんだ」
いい思い出がないから。
そう言って力なく笑った姿は、途方に暮れた幼子のように頼りなく、そして儚げであった。


「俺の知る京とはどこもかしこもかわっちまった。だが、ここは時間の流れが緩やかすぎる。…同じでこそないものの、懐かしい面影が、その色が濃すぎる」
いつの間にか慶次と元親も眠ってしまい、起きているのは二人だけだった。静かな夜に決して大きくない政宗の声が密やかに響く。
「卑屈になるつもりはない。権力者に媚びたことも後悔していない。俺はああすることでしか奥州を守れなかった。ああすることで、奥州を守った。…そう、後悔はしていない。だけどな……」

その頭の回転の速さで秀吉にも家康にも気に入られ重宝された政宗。
しかし、気に入られながらも煮え湯を飲まされ続けたのもまた事実だ。
「この場所に、いい思い出なんか何一つない。ここは俺のいる場所じゃない。…特に、あの城。俺は、あの城が大嫌いだった」
家康、秀忠、家光と三代の将軍それぞれに信をおかれていた政宗はことあるごとにあの城に呼び出され、赴き、さまざまなことを語った。将軍の相談に乗りながらもスキあらば天下を簒奪してやろうと考えていた。
「この場所にいるときは、俺は常に考えていなければならなかった。家康の言葉、自分の立場、天下の行く先、奥州の未来。…ここにいて、心が休まったことなんてなかった気がする」
だから、きらいなのだ。
そう言った政宗は寂しそうに笑った。
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