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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Fri 25 , 22:28:17
2008/04
ひらひらと舞い散る薄紅の花弁は、痛みに耐えかねたあなたの涙のよう。
いや、事実としてこれは涙なのだろう。
泣くことのできないあなたの、涙なのだろう。




たくさんの人を殺した。
たくさんの人を傷つけた。
それでも手に入れたいものがあった。

たくさんのものを失った。
たくさんのものを奪われた。
それでも守りたいものがあった。

自分が正しいのかどうか、なんて。
そんなことは知りたくなかった。



「真田…幸村」


名の刻まれない墓の前で無二と定めた男の名を呼ぶ。


馬鹿な男だった。
落陽を迎えた豊臣が負けるのはあまりにも明らかなことであったのに、義を貫くために戦い、戦い、そして死んだ。

明るい笑顔。
まっすぐなまなざし。
俺とは正反対の太陽のような男。

あいつらしいといえばあまりにもあいつらしい生き様、死に様。
それでも俺はあいつに死んでほしくなかった。
生きていてほしかった。


「この大馬鹿野郎」

昔のように一対一で死合うことができなくてもかまわなかった。
そこにいてくれるだけで十分だった。
あいつは、俺の導だった。
あいつと向き合うことができるように、俺は俺にもあいつにも恥じない自分でいられた。
あの瞳に揺るがずに俺の姿が映し出されているのがうれしかった。

「決着もついてねえのに、死にやがって」

幸村は家康に嫌われていたから、堂々と墓を作ることさえできない。
そもそも、俺はあいつから見れば敵武将。
俺なんかに弔われてもうれしくなんてないかもしれない。
それでも、俺は…。


「…好き、だった」


一緒にいた時間なんていくさばでのほんのわずかな瞬間。
穏やかなときをともにすごしたことなんてなかった。
それでも、まっすぐな瞳に、燃えるような魂に、どうしようもなく魅せられとらわれた。

どうしようもなく馬鹿でガキで、それでも自分の信じるものを貫くことのできる強さがまぶしかった。
俺も、あんなふうに生きたかった。
迷いなどないように見えたし、自分のとるべき道を知っているように見えた。
その潔さが、まぶしかった。


一緒に、生きていきたかった。






はらはらと薄紅の花弁が落ちる。
それは痛みに耐えかねたあなたの涙のよう。
誰よりもやさしいのに心を殺して生きてゆく、あなたの涙のよう。



(泣かないで下され、政宗殿)
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