白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Mon 26 , 02:58:28
2008/05
田辺さんの訳した源氏物語を今読んでいます。
私は、田辺さんの言葉でつづられる古典がとてもすきなのです。
瀬戸内さんの訳のやつは、本当に原文に忠実に訳してある感じ(と言っても最初の数ページを本屋でぱらぱら見た程度なんですが)で、田辺さんのやつは平安の雰囲気を響かせながら「物語」として再構築した感じかな。
しっとりした文章と古典の雰囲気を残したままの言葉の選び方。
それで語られる登場人物それぞれの心の内の恋情と苦悩。
源氏はひどい男で、源氏物語は昼ドラも顔負けなくらいにどろどろとした物語ですけど、それでもそれだけで終わらせない魅力があるんですよね。
源氏の心の深さ。彼から見たそれぞれの女性たちの美しさ。
浮気っぽい男で、女性たちは散々泣かされるけれど、それでも別れられないのは一つ一つの恋が本物である、ということも知っているからなんですよね。彼にとっての「特別」がちゃんといることを知っていて、自分ではその「特別」にはなれないことを痛いほど知っているけれど、確かに愛されている自分も知っている。
そして、源氏は女性たちの美しさを見抜く名人で、本人たちでさえ知らないであろう「美しさ」を見つけ出しては愛するんです。その喜びを、彼女たちは手放せないのでしょう。
まだ上・中・下とある中の上巻の途中までしか読んでいませんが、すでに源氏物語の面白さを感じています。
前々から読みたいと思いつつちゃんと読んだことなかったんですが、今年は源氏物語1000年紀だし、せっかくだから一度は読まないとね!と決心して読み始めたのです。
読みながら、昔見た中西京子さんの紙人形の源氏たちをイメージしてます。あれは、機会があったらまた見に行きたいほどに美しかったです。
今まで、源氏物語の登場人物で一番好きな女性は花散里だったんです。
ですが、今はどの女性もそれぞれに魅力的で惹かれてしまいます。
空蝉、朝顔、朧月夜、夕顔、藤壺の宮…
若紫はまだ幼いながらも愛くるしく源氏を慕います。
ほかの女性との恋もいいのですが、やっぱり彼女と一緒にいる源氏を見ると(読むと?)ほっとします。もっとも愛されながらももっとも苦しんだ女性、でしょうね。彼女は。
葵上との別れは、源氏と一緒にこちらまでどうしようもなく苦しくなります。
ずっと心の通わなかった妻。子どもが生まれ、ようやく互いに向き合って、これから、というときにはかなく身罷ってしまった女性。
(私たちの恋は今からなのに。ようやく、世間一般の夫婦のように打ち解けることができたと思ったところなのに。あなたを、心からいとおしく思い始めたところだというのに…)
美しく気位が高く結婚して何年も経つのに決して打ち解けてくれようとはしなかった貴方。
どうしてあなたの心を解く努力を放棄してしまったのだろう。
後悔は尽きず、死の直前に初めて知った彼女の優しさを思い出してはかわいそうなことをした、と悲嘆にくれる源氏。
そして、六条御息所。
美しく教養深く、年上という引け目を感じながらもひたむきに源氏を愛する女性。
多分、彼女は寂しかったのではないでしょうか。
夫たる東宮を亡くし、愛を注ぐ相手は忘れ形見の娘のみ。
そこに言い寄った若く美しい青年に気がつけば逃れることのできない深い恋をし、そしてどこまでも堕ちていった美しい年上の女性。
東宮を失った哀しい過去があるから源氏を失うのを恐れ、もうやめようもうやめようと思うのにやっぱり源氏がいとしくて別れることなどできずに深みにはまり、愛欲の地獄でひとりもがいていた女性。
(ああ、源氏の君。わたくしはあなたをお恨み申し上げます。あなたがいなければ、わたくしはこんなに苦しくなかった。あなたのまなざしひとつでこんなにも思い乱れるわたくしを、あなたはお笑いになるのでしょうね。浅ましい、はしたない女だとお思いになるのでしょうね。どうかあなたよりも大人でありながら、こんなにもあなたに恋をしてみっともなくすがりつくように愛しているわたくしを疎ましくお思いにならないで。自分でも、わからないのです。どうしてあなたがこんなにもいとおしいのかしら。あなたを愛した分だけ苦しむのだと、わかっているというのに…)
ああ、それでも。
どんなに苦しくても。
わたくしは、あなたのこいびとでいたいのです。
私は、田辺さんの言葉でつづられる古典がとてもすきなのです。
瀬戸内さんの訳のやつは、本当に原文に忠実に訳してある感じ(と言っても最初の数ページを本屋でぱらぱら見た程度なんですが)で、田辺さんのやつは平安の雰囲気を響かせながら「物語」として再構築した感じかな。
しっとりした文章と古典の雰囲気を残したままの言葉の選び方。
それで語られる登場人物それぞれの心の内の恋情と苦悩。
源氏はひどい男で、源氏物語は昼ドラも顔負けなくらいにどろどろとした物語ですけど、それでもそれだけで終わらせない魅力があるんですよね。
源氏の心の深さ。彼から見たそれぞれの女性たちの美しさ。
浮気っぽい男で、女性たちは散々泣かされるけれど、それでも別れられないのは一つ一つの恋が本物である、ということも知っているからなんですよね。彼にとっての「特別」がちゃんといることを知っていて、自分ではその「特別」にはなれないことを痛いほど知っているけれど、確かに愛されている自分も知っている。
そして、源氏は女性たちの美しさを見抜く名人で、本人たちでさえ知らないであろう「美しさ」を見つけ出しては愛するんです。その喜びを、彼女たちは手放せないのでしょう。
まだ上・中・下とある中の上巻の途中までしか読んでいませんが、すでに源氏物語の面白さを感じています。
前々から読みたいと思いつつちゃんと読んだことなかったんですが、今年は源氏物語1000年紀だし、せっかくだから一度は読まないとね!と決心して読み始めたのです。
読みながら、昔見た中西京子さんの紙人形の源氏たちをイメージしてます。あれは、機会があったらまた見に行きたいほどに美しかったです。
今まで、源氏物語の登場人物で一番好きな女性は花散里だったんです。
ですが、今はどの女性もそれぞれに魅力的で惹かれてしまいます。
空蝉、朝顔、朧月夜、夕顔、藤壺の宮…
若紫はまだ幼いながらも愛くるしく源氏を慕います。
ほかの女性との恋もいいのですが、やっぱり彼女と一緒にいる源氏を見ると(読むと?)ほっとします。もっとも愛されながらももっとも苦しんだ女性、でしょうね。彼女は。
葵上との別れは、源氏と一緒にこちらまでどうしようもなく苦しくなります。
ずっと心の通わなかった妻。子どもが生まれ、ようやく互いに向き合って、これから、というときにはかなく身罷ってしまった女性。
(私たちの恋は今からなのに。ようやく、世間一般の夫婦のように打ち解けることができたと思ったところなのに。あなたを、心からいとおしく思い始めたところだというのに…)
美しく気位が高く結婚して何年も経つのに決して打ち解けてくれようとはしなかった貴方。
どうしてあなたの心を解く努力を放棄してしまったのだろう。
後悔は尽きず、死の直前に初めて知った彼女の優しさを思い出してはかわいそうなことをした、と悲嘆にくれる源氏。
そして、六条御息所。
美しく教養深く、年上という引け目を感じながらもひたむきに源氏を愛する女性。
多分、彼女は寂しかったのではないでしょうか。
夫たる東宮を亡くし、愛を注ぐ相手は忘れ形見の娘のみ。
そこに言い寄った若く美しい青年に気がつけば逃れることのできない深い恋をし、そしてどこまでも堕ちていった美しい年上の女性。
東宮を失った哀しい過去があるから源氏を失うのを恐れ、もうやめようもうやめようと思うのにやっぱり源氏がいとしくて別れることなどできずに深みにはまり、愛欲の地獄でひとりもがいていた女性。
(ああ、源氏の君。わたくしはあなたをお恨み申し上げます。あなたがいなければ、わたくしはこんなに苦しくなかった。あなたのまなざしひとつでこんなにも思い乱れるわたくしを、あなたはお笑いになるのでしょうね。浅ましい、はしたない女だとお思いになるのでしょうね。どうかあなたよりも大人でありながら、こんなにもあなたに恋をしてみっともなくすがりつくように愛しているわたくしを疎ましくお思いにならないで。自分でも、わからないのです。どうしてあなたがこんなにもいとおしいのかしら。あなたを愛した分だけ苦しむのだと、わかっているというのに…)
ああ、それでも。
どんなに苦しくても。
わたくしは、あなたのこいびとでいたいのです。
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