白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Thu 08 , 02:48:23
2009/01
すきだから、そばにいたい。
すきだけど、そばにいられない。
さびしいね。
かなしいね。
こんなじだいじゃなかったら、いっしょにいることができるのかな。
「アホか、おまえ」
「ひどいでござるぅ」
もう一発くらい蹴りをいれてやろうかと思ったが、幸村があまりにも情けないツラをさらしているので、やめておいた。
「Ah-…」
捨てられた子犬のような目で見ないでほしい。今すぐ抱きしめて頭をぐりぐりしたくなるじゃねぇか。
ため息を、ひとつ。
「幸村」
ちょいちょいと手招きすると、ぱぁっと笑顔になって駆け寄ってきた。
ああ、こいつの頭に耳が、ケツには千切れんばかりに振られる尻尾が見えるぜ。
「いいか、一度しか言わねえからよくきけよ」
「確かに、こんな時代じゃなかったら俺たちは国だとか敵とか味方とか考えずにずっと一緒にいられたかもしれない。もしかしたら、命を取り合わずに一緒に生きることのできる幸せな世界もあるのかもしれない。けどな」
今でも鮮明に思い出せる、一度しかない出会いの瞬間。瞬きすら惜しむほどに、目の前の赤に心を奪われた。戦場の血と泥にまみれて何よりも美しい鮮烈な赤に、すべてをもっていかれた。
「そんな世界だったら俺たちはあの心震えるような最高の一騎打ちができなかった。きっと、ともにいるのが当たり前だったら今の俺たちみたいな寸暇を惜しむような睦み合いがなかった。こんなにも深く心を、魂を、つなげることなんてできなかった」
戦のない世界なんて知らない。
そんな世界で俺やおまえが生きられるはずがない。
人を殺さない、刀を握らない、槍を握らない、そんなの俺じゃないしおまえじゃない。
「もしもの話なんかするんじゃねぇ。俺は、今、ここの、ここにいるあんたが…」
不意に抱きしめられ、言葉は最後までつむがれるまえに重ねられた唇に吸い込まれていった。
「…申し訳ございませぬ」
「…」
「そのようなつもりで言ったわけではございませぬが無神経な言でござった」
「…いや、あんたは悪くない。俺が…」
「しかし、政宗殿のおっしゃるとおりでござるな。某は戦なくしては生きられぬし、仮に戦のない世界で政宗殿と出会ったとして、間違いなく某は政宗殿を愛しますが、今の我等ほど深いつながりを得られるとはゆめ思いませぬ」
「…」
「お慕いしております、政宗殿。そなたが、誰よりも…」
いとおしい
耳元に吹き込むようにささやかれた言葉にすがるようにぎゅっと抱きつく腕に力をこめると同じように強く抱き返された。
さっきまでは子犬のようにcuteだったのに、気がつけば俺を抱きしめるこの腕は力強く、穏やかに笑う年下の情人はなぜかやたら大人びて見えて、己の心の幼稚さが恥ずかしくなった。
好きだから、そばにいたい。
好きだけど、そばにいられない。
そんなこと、わかっているから。
強く生きると決めたのだから、甘い夢物語をたとえ話にもしないでほしい。
弱いこの心が揺らぐから。
あるはずのない未来を、望んでしまうから。
「政宗殿、ともに生きましょう」
「…」
「いつか、互いがどちらかの命を奪うまで、精一杯、ともに生きましょう」
「…ああ」
最後の一呼吸まで、全力であんたを愛してやるよ。
すきだけど、そばにいられない。
さびしいね。
かなしいね。
こんなじだいじゃなかったら、いっしょにいることができるのかな。
「アホか、おまえ」
「ひどいでござるぅ」
もう一発くらい蹴りをいれてやろうかと思ったが、幸村があまりにも情けないツラをさらしているので、やめておいた。
「Ah-…」
捨てられた子犬のような目で見ないでほしい。今すぐ抱きしめて頭をぐりぐりしたくなるじゃねぇか。
ため息を、ひとつ。
「幸村」
ちょいちょいと手招きすると、ぱぁっと笑顔になって駆け寄ってきた。
ああ、こいつの頭に耳が、ケツには千切れんばかりに振られる尻尾が見えるぜ。
「いいか、一度しか言わねえからよくきけよ」
「確かに、こんな時代じゃなかったら俺たちは国だとか敵とか味方とか考えずにずっと一緒にいられたかもしれない。もしかしたら、命を取り合わずに一緒に生きることのできる幸せな世界もあるのかもしれない。けどな」
今でも鮮明に思い出せる、一度しかない出会いの瞬間。瞬きすら惜しむほどに、目の前の赤に心を奪われた。戦場の血と泥にまみれて何よりも美しい鮮烈な赤に、すべてをもっていかれた。
「そんな世界だったら俺たちはあの心震えるような最高の一騎打ちができなかった。きっと、ともにいるのが当たり前だったら今の俺たちみたいな寸暇を惜しむような睦み合いがなかった。こんなにも深く心を、魂を、つなげることなんてできなかった」
戦のない世界なんて知らない。
そんな世界で俺やおまえが生きられるはずがない。
人を殺さない、刀を握らない、槍を握らない、そんなの俺じゃないしおまえじゃない。
「もしもの話なんかするんじゃねぇ。俺は、今、ここの、ここにいるあんたが…」
不意に抱きしめられ、言葉は最後までつむがれるまえに重ねられた唇に吸い込まれていった。
「…申し訳ございませぬ」
「…」
「そのようなつもりで言ったわけではございませぬが無神経な言でござった」
「…いや、あんたは悪くない。俺が…」
「しかし、政宗殿のおっしゃるとおりでござるな。某は戦なくしては生きられぬし、仮に戦のない世界で政宗殿と出会ったとして、間違いなく某は政宗殿を愛しますが、今の我等ほど深いつながりを得られるとはゆめ思いませぬ」
「…」
「お慕いしております、政宗殿。そなたが、誰よりも…」
いとおしい
耳元に吹き込むようにささやかれた言葉にすがるようにぎゅっと抱きつく腕に力をこめると同じように強く抱き返された。
さっきまでは子犬のようにcuteだったのに、気がつけば俺を抱きしめるこの腕は力強く、穏やかに笑う年下の情人はなぜかやたら大人びて見えて、己の心の幼稚さが恥ずかしくなった。
好きだから、そばにいたい。
好きだけど、そばにいられない。
そんなこと、わかっているから。
強く生きると決めたのだから、甘い夢物語をたとえ話にもしないでほしい。
弱いこの心が揺らぐから。
あるはずのない未来を、望んでしまうから。
「政宗殿、ともに生きましょう」
「…」
「いつか、互いがどちらかの命を奪うまで、精一杯、ともに生きましょう」
「…ああ」
最後の一呼吸まで、全力であんたを愛してやるよ。
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