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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Mon 13 , 23:49:28
2009/04
・チカ+ダテ(チカ→ダテ)
・サナダテ出会い数日後
・サナ→←ダテ前提



面白い男を見つけた。


開口一番、独眼竜はそう言った。見たこともないような表情で。
「武田の赤いの、知ってるか?真田幸村っつーやつなんだけどよ」
そう強くもない酒を楽しみながら上機嫌で政宗は笑った。
「あー、甲斐の虎和子だろ?知ってるぜ」
「あいつ、すげえ面白いな。ギラギラした目で俺をにらんでよ、数合打ち合ったら嬉しそうに笑ってなぁ」
酒が入っている、ということもあるだろうが普段の倍は饒舌になっている。へそまがりが信条でいつもなら素直に表情を出そうとしないというのに、今日はニコニコと嬉しそうだ。すでに振られたとは言え、惚れた相手が嬉しそうに笑っているのは俺としてももちろん嬉しい。だらしなく緩んだ口元は政宗を年相応、ひょっとしたらそれよりも幼くみせていて、惚れた欲目かもしれないがやたらかわいらしい。
(けどよぉ)
ばれないようにこっそりとため息をつく。
ほかの男についての話を延々と聞かされる俺の身にもなって欲しいというものだ。しかもついぞ見たことのない極上の笑顔のおまけまでついて。

「なあ、元親」
「あー?」
「俺、見つけたぜ」
何を言いたいのかはすぐにわかった。
「形振り構わずに、夢中になれるもの。奥州王としてではなく、俺自身が全部の理屈をすっ飛ばしてただ欲しいと思えるもの」
「…」
「見つけた。“俺”の心を振るわせるもの」
ひとつきりの独眼が鋭い光を放つ。けれど、その緩んだ口端が喜びを如実にあらわしている。
「俺は、あいつが欲しい」

(俺に言うかよ、それを)
今度はこっそりではなく堂々と嘆息し、それからひょいと手を伸ばしてぽんぽんと頭をなぜてやった。
「よかったな」
政宗はきょとんとした表情をした後にふわりと笑った。
(あ、これ)
これは、あの男―真田幸村に向けられたものではなく、俺に向けられたものだ。長宗我部元親に向けられたものだ。純粋な、笑顔。
それだけで気分の良くなる自分に苦笑する。
だが、考えてみれば政宗が笑顔を惜しみなく振りまいてくれるのも、真田への心情を吐露するのも、俺を信頼してくれているからこそなのだろう。
独眼竜の異名を持つくせに猫のように気まぐれな政宗が俺になついてくれているから、なのだろう。
そう思えばかわいらしいものだ。
「よし!」
一気に上機嫌になった俺はそのままわしゃわしゃと政宗の髪をかき乱すように撫で回して、それから笑って酒を満たした。

「政宗の初恋と俺たちの友情に乾杯!」

政宗が恋じゃないとわめいているのはこの際無視することにする。
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