せかいのこえ

本日は我らがアイドル（笑）奥州筆頭伊達政宗様のお誕生日にござりますね！
で、でも、例によって例のごとく、お誕生日なのに何も書いていません…。いや、今ね、テストとレポートで忙しくて…ごにょごにょ。
書きたい気持ちはあっても時間と気力と体力とアイディアが追いつかないといいますか…。

でも、と、とりあえずは追記でちょっと祝っておきます。
戦国設定でライバルなサナダテ。いや、真田と伊達、と言ったほうがいいかな。

心地よい熱気が身を包む。
かつていくさのあった焼け野原で二人きり、対峙して刃を重ねる。
お互いに本気の一騎打ちでありながら、命をとるつもりは微塵もない。それでも手は抜かず、一心に相手を求め貪る、愛欲にもにたこの感情。


（ああ、俺は今―）


この瞬間、俺はどんな瞬間よりもいきている。
奥州筆頭という立場から離れ、一人の男、人として。今、ここにいきているのだと、強く感じる。

常ならば幼さすら残す真田の大きな瞳は今はただひたすらに強い光で俺を射抜く。俺だけではない。目の前のこの男の生も、今、俺は強く感じている。


ガキィン


強い音を立ててとんだ俺の刀とあいつの槍。
それが合図のように手に残った獲物を治め、静かに対峙する。
今日は命をとりあうために戦ったわけではない。だから、ちょうどいい。あたりに夕闇も迫っていることだし潮時だろう。

動きをとめたとたんにようやく汗が溢れてくる。遠くに蝉の音が響き、夏のむわっとした熱気を感じた。
戦っている間は汗を書く暇すらなく、五感のすべては目の前にいる男にしか反応しなかった。だからこそ、この暑い盛りにこの男の熱気を心地よくすら感じたのかもしれない。

（正気に戻れば暑苦しいだけだっつーのに、な）
こっそりと笑った政宗に気づかなかったのか、未だ戦いの余韻の残るどこか恍惚とした表情で幸村が口を開いた。

「伊達政宗…殿」
「Ahー？どうした、真田幸村」
「貴殿とめぐり合えて…よかった」
「は？」

唐突な告白ともいえるそれに思わず呆けてしまう。いったいなにを言い出すのだ、この男は。
間抜けともいえるような表情をさらす政宗に気づいているのかいないのか、幸村はぐっと槍を握っていた手でこぶしを作り、薄く笑みを浮かべて政宗を見据える。

「この同じ時代に、貴殿がいて…同じ時代に生まれることができて、こうして出会うことができて、よかった、と。そう、強く思う」
「…」
「貴殿がこの世に生まれてきてくれて、よかった。この偶然のすべてに、感謝をしたい」

どう返していいのかわからなかった。
ただ、こみ上げてくる何かを耐えるように唇をかみ締め、うつむくことしか政宗にはできなかった。

幸村は知らないだろう。19年前のこの日に政宗が生まれたことを。
生まれた日そのものを祝う風習は日ノ本にはない。だが、小十郎や喜多、綱元が毎年この日には政宗が生まれてきたことを喜び、兵士たちが率先して伊達軍を挙げた宴会を開く。
自分を認め、その存在を喜んでくれる人がいる。それだけで、政宗は伊達の頭として、奥州の王として生きるために切り捨てたさまざまなものが報われる気がした。

だが、それでもまだ泣いている幼い日の自分が心のどこかにいることに政宗はずいぶんと長い間気づかないふりをしていた。母親、というただその存在を認め愛してくれるはずの人物に拒まれた記憶はそう遠いものではなく、政宗は奥州筆頭という立場を除いた自分の存在意義を未だ見つけられないでいた。
幸村は、そんな政宗の屈託など知らないはずなのに。
19年前のこの日に政宗が生まれたことすら知らないはずなのに。

どうして、こんなタイミングでこんな言葉をくれるのだろう。
家も立場も関係なく、ただ純粋に、好敵手として、伊達政宗という一人の人間の誕生を、その存在を言祝いでくれた。
（どうして、あんたは…）
いつもほしいものをくれる。

政宗が政宗としていきる意味も、場所も、幸村がくれた。
どこまでもまっすぐに政宗を見つめ、そのすべてを認めてくれる。

「…真田、幸村」
（最高のpresentだ）
「あんたがrivalで…よかった」

珍しくまっすぐな政宗の言葉に、幸村は一瞬驚いた顔をした後、嬉しそうに少年の顔で笑った。