白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Sat 28 , 23:59:46
2009/03
・チカ→ダテ
・戦国
・伊達はまだ真田とは出会ってない
愛している、と言われた。
遥か四国から奥州まで攻め込んできて、挙句の果てに意気投合して和睦し同盟を結び友人となった男に。
二人で酒を肴に酌み交わしていたときだった。
明日には奥州を出て四国に帰る、と言われ寂しくなるが仕方ない、と返すと同時に冒頭のセリフを吐かれ、抱きすくめられた。
コトン、と酒が倒れ畳にこぼれる。静かな夜で、庭に鳴く虫たちのかすかな声と触れ合った箇所から伝わる互いの鼓動以外には音のない夜だった。
しばしの間二人を沈黙が包む。
先に焦れたのは元親だった。
「返事をくれ、政宗」
「元親…」
身体を離してうつむいて、少したってから決心したように顔をあげ、ひどく哀しい瞳で政宗が言った。
「俺は、愛が何なのかわからない。そんなものは…もう、とうの昔に捨ててしまった。だから、俺は…わからない。なあ、愛ってなんだ?」
哀しい言葉。胸が締め付けられるように苦しくなって、そっと手を伸ばした。頬に触れても政宗は拒まない。ただ、途方に暮れた幼子のように隻眼を揺らしていた。
「どこぞの宗教人の肩を持つつもりはないが…愛を知らないのは、寂しいことだと思うぜ」
「…捨てなければ、生きていられなかった」
「…」
「愛だけじゃない。俺は、心を…感情を、封じた。傷つくのが怖いから…俺の“個”としての心を…閉じ込めた。ここにあるのは奥州の王としての俺だけだ」
「…不器用なやつだな」
「…」
「不器用で、でも純粋だ。生きるのがつらくはないか?」
「自分をすてて奥州筆頭としてだけ生きると決めたら、呼吸をするのが少しだけ楽になったよ」
「そうか」
もう一度、元親は政宗を抱きしめた。
背が低いわけではないし、細身とはいえ筋肉もしっかりついていて決して女性的ではないのに、今は常以上に政宗が細く儚く感じられた。月光に照らされた横顔は美しく、だからこそ寂しくみえた。
「俺じゃ、だめなんだな」
「…」
「あんたのことを愛してる。だけど、俺じゃああんたの心の封印を解いてやれないんだな」
「…。…でも、あんたのそばは居心地がいい」
「…」
「愛なんてわからない。そんなもの、知らない。だけど…」
躊躇いながらもそっと政宗が元親の背に腕を回した。
「あんたのことは嫌いじゃない。あんたが想ってくれるようには俺はあんたを想えないけど、でも、できればこの先も友人でいたいと思う。あんたのそばは居心地がよくて、少しだけ、自分を思い出せる気がした」
「…そうか」
「うん」
指先に力を込めてきゅっと元親の着物を握る。すがりつくような動作に元親は切なくなった。俺ではこいつの恋人にはなれない。想い人には、なれない。
ならば、せめて。
「また、会いに来てもいいか。…友人として」
「ああ、あんたならいつでも大歓迎だ」
「その言葉忘れんなよ?」
「待ってるぜ。あんたが来るのを」
そう言って政宗はきれいに笑い、元親の唇の端に触れるだけの口付けをした。
「親愛なる西海の鬼殿に」
「は!この性悪独眼竜め」
元親からも、政宗に最初で最後の口付けを。
優しいだけの、親愛のキス。
ならば、せめて。
兄のような存在の友人に。
政宗の眠った心を呼び覚ます存在が現れるまでは親しい友人としてでいい。
そばに在り思い続けることを許して欲しい。
二人を包む静寂が
・戦国
・伊達はまだ真田とは出会ってない
愛している、と言われた。
遥か四国から奥州まで攻め込んできて、挙句の果てに意気投合して和睦し同盟を結び友人となった男に。
二人で酒を肴に酌み交わしていたときだった。
明日には奥州を出て四国に帰る、と言われ寂しくなるが仕方ない、と返すと同時に冒頭のセリフを吐かれ、抱きすくめられた。
コトン、と酒が倒れ畳にこぼれる。静かな夜で、庭に鳴く虫たちのかすかな声と触れ合った箇所から伝わる互いの鼓動以外には音のない夜だった。
しばしの間二人を沈黙が包む。
先に焦れたのは元親だった。
「返事をくれ、政宗」
「元親…」
身体を離してうつむいて、少したってから決心したように顔をあげ、ひどく哀しい瞳で政宗が言った。
「俺は、愛が何なのかわからない。そんなものは…もう、とうの昔に捨ててしまった。だから、俺は…わからない。なあ、愛ってなんだ?」
哀しい言葉。胸が締め付けられるように苦しくなって、そっと手を伸ばした。頬に触れても政宗は拒まない。ただ、途方に暮れた幼子のように隻眼を揺らしていた。
「どこぞの宗教人の肩を持つつもりはないが…愛を知らないのは、寂しいことだと思うぜ」
「…捨てなければ、生きていられなかった」
「…」
「愛だけじゃない。俺は、心を…感情を、封じた。傷つくのが怖いから…俺の“個”としての心を…閉じ込めた。ここにあるのは奥州の王としての俺だけだ」
「…不器用なやつだな」
「…」
「不器用で、でも純粋だ。生きるのがつらくはないか?」
「自分をすてて奥州筆頭としてだけ生きると決めたら、呼吸をするのが少しだけ楽になったよ」
「そうか」
もう一度、元親は政宗を抱きしめた。
背が低いわけではないし、細身とはいえ筋肉もしっかりついていて決して女性的ではないのに、今は常以上に政宗が細く儚く感じられた。月光に照らされた横顔は美しく、だからこそ寂しくみえた。
「俺じゃ、だめなんだな」
「…」
「あんたのことを愛してる。だけど、俺じゃああんたの心の封印を解いてやれないんだな」
「…。…でも、あんたのそばは居心地がいい」
「…」
「愛なんてわからない。そんなもの、知らない。だけど…」
躊躇いながらもそっと政宗が元親の背に腕を回した。
「あんたのことは嫌いじゃない。あんたが想ってくれるようには俺はあんたを想えないけど、でも、できればこの先も友人でいたいと思う。あんたのそばは居心地がよくて、少しだけ、自分を思い出せる気がした」
「…そうか」
「うん」
指先に力を込めてきゅっと元親の着物を握る。すがりつくような動作に元親は切なくなった。俺ではこいつの恋人にはなれない。想い人には、なれない。
ならば、せめて。
「また、会いに来てもいいか。…友人として」
「ああ、あんたならいつでも大歓迎だ」
「その言葉忘れんなよ?」
「待ってるぜ。あんたが来るのを」
そう言って政宗はきれいに笑い、元親の唇の端に触れるだけの口付けをした。
「親愛なる西海の鬼殿に」
「は!この性悪独眼竜め」
元親からも、政宗に最初で最後の口付けを。
優しいだけの、親愛のキス。
ならば、せめて。
兄のような存在の友人に。
政宗の眠った心を呼び覚ます存在が現れるまでは親しい友人としてでいい。
そばに在り思い続けることを許して欲しい。
二人を包む静寂が
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