白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Sat 28 , 22:55:52
2009/03
・小十郎×政宗
・戦国
「自分がどんなにつらくても苦しくても、無茶をしてでも無理やりでも、皆の前では笑っていようとする、あなたが好きです」
政宗様、呼ばれてどうした、振り向いて微笑した瞬間に抱きすくめられてささやかれた。
まだやることがある、放せ、ともがいても小十郎はびくともしない。
「あなたが笑うのは皆を不安にさせたくないから、知られたくないからなのでしょう。しかし、この小十郎の前でまで笑っている必要はないのです。つらいならつらいと言えばいい、苦しいなら苦しいと言えばいい。小十郎の前では無理をしないでください。この小十郎が気づかないとでもお思いですか?」
わかってる。小十郎には隠し事はできない。俺がちっちゃいころからずっと一緒にいて、俺と一番多くの時間を共有している人。一番近くにいてくれる人、だから。
「無理をするな、とは言いません。時には無茶も必要です。あなたは君主なのだから。けれど、今はそのときではない。私の言っていることがわかりますか?あなたは何でも自分で背負いすぎる。何のために私がいると思っているのですか。それとも小十郎では、信頼に足りませぬか?」
そんなはずはないとわかっていながらわざわざ聞いてくるのだから、小十郎は相当怒っているみたいだ。
「あなたには休息が必要です。小十郎を信頼しているとおっしゃるのなら、残る執務はこの小十郎に任せてしばしお休みください。こんなにふらふらになって…。あなたが笑う。それだけで兵も民も安心できる。それは事実ですが、それは皆があなたを慕っているからです。ですから…」
?何を言いたいのかわからない。
それより、小十郎の腕は大きくて胸は広くて、温かかくて、小さいころのように安心できる。心地いい。いつだってここは俺の居場所だ。守られてる、大事にされてる、触れた箇所から言葉よりも雄弁にそれを教えてくれる。
「皆、あなたを心配してますよ。ここのところ執務室に篭りっぱなしで姿をほとんど見せていないでしょう。ゆっくり寝て、しっかり食事を取って、早くいつものあなたに戻って皆を安心させてください。仕事をなさるのも結構ですが、それ以上にそちらの方が大切でしょう。何せ、そればかりはほかの誰もかわりになすことができないのですから」
言われて、自分がどれほど追い詰められていたのかようやく気づくことができた。数日前に会った母上の言葉とその直後に起こった戦にどれほど心を疲弊させていたのかも。
頼りにされたい、認められたい、嫌われたくない、そればかり考えてがむしゃらに奥州筆頭で在ろうとして、そうすることで逆に心配をかけていた。そんな馬鹿な俺を皆は心配してくれた。
ああ、なんて俺は幸せなんだろう。
そう思ったら急に疲労を自覚して、小十郎の腕の心地よさもあいまって、眠気に襲われた。
「うん。…so sorry………and thank you ver much」
謝罪の言葉も感謝の言葉も照れくさくて言葉にし慣れないから、異国の言葉で告げた。きっと小十郎ならわかってくれる、と思うから。
こてん、と俺の腕の中でそのまま寝入ってしまった主の年相応に幼い寝顔をそっと覗き込み、嘆息する。まったく無茶ばかりをするお方だ。戦場でならば常にそばに在り続けてその背を守ることもできようが、追い詰められた心に気づくことも守ることもひどく難しい。政宗様は自分を隠すことがうまいから、気を抜くと皆だまされてしまう。過去に負った心の傷が今でも政宗様を苛んで毒のようにじわじわと苦しめている。
「どうか、自分で自分を傷つけることだけはやめていただきたい。…そればかりは、この小十郎にも守れないのですから……」
信頼してくれている。心を許してくれてる。
だから知っている心の傷。だから踏み出せない心の闇。
完全にふさぐことはできないのかもしれない。けれど、せめてそれならば隠さないで欲しい。
肉体ばかりではなく、心が、魂がともにあることを許して欲しい、と思う。
「あなたが皆を思う以上に皆はあなたを思っております。この小十郎があなたを思う思いも、あなたが私を思う思いに負けてはいないのですよ」
・戦国
「自分がどんなにつらくても苦しくても、無茶をしてでも無理やりでも、皆の前では笑っていようとする、あなたが好きです」
政宗様、呼ばれてどうした、振り向いて微笑した瞬間に抱きすくめられてささやかれた。
まだやることがある、放せ、ともがいても小十郎はびくともしない。
「あなたが笑うのは皆を不安にさせたくないから、知られたくないからなのでしょう。しかし、この小十郎の前でまで笑っている必要はないのです。つらいならつらいと言えばいい、苦しいなら苦しいと言えばいい。小十郎の前では無理をしないでください。この小十郎が気づかないとでもお思いですか?」
わかってる。小十郎には隠し事はできない。俺がちっちゃいころからずっと一緒にいて、俺と一番多くの時間を共有している人。一番近くにいてくれる人、だから。
「無理をするな、とは言いません。時には無茶も必要です。あなたは君主なのだから。けれど、今はそのときではない。私の言っていることがわかりますか?あなたは何でも自分で背負いすぎる。何のために私がいると思っているのですか。それとも小十郎では、信頼に足りませぬか?」
そんなはずはないとわかっていながらわざわざ聞いてくるのだから、小十郎は相当怒っているみたいだ。
「あなたには休息が必要です。小十郎を信頼しているとおっしゃるのなら、残る執務はこの小十郎に任せてしばしお休みください。こんなにふらふらになって…。あなたが笑う。それだけで兵も民も安心できる。それは事実ですが、それは皆があなたを慕っているからです。ですから…」
?何を言いたいのかわからない。
それより、小十郎の腕は大きくて胸は広くて、温かかくて、小さいころのように安心できる。心地いい。いつだってここは俺の居場所だ。守られてる、大事にされてる、触れた箇所から言葉よりも雄弁にそれを教えてくれる。
「皆、あなたを心配してますよ。ここのところ執務室に篭りっぱなしで姿をほとんど見せていないでしょう。ゆっくり寝て、しっかり食事を取って、早くいつものあなたに戻って皆を安心させてください。仕事をなさるのも結構ですが、それ以上にそちらの方が大切でしょう。何せ、そればかりはほかの誰もかわりになすことができないのですから」
言われて、自分がどれほど追い詰められていたのかようやく気づくことができた。数日前に会った母上の言葉とその直後に起こった戦にどれほど心を疲弊させていたのかも。
頼りにされたい、認められたい、嫌われたくない、そればかり考えてがむしゃらに奥州筆頭で在ろうとして、そうすることで逆に心配をかけていた。そんな馬鹿な俺を皆は心配してくれた。
ああ、なんて俺は幸せなんだろう。
そう思ったら急に疲労を自覚して、小十郎の腕の心地よさもあいまって、眠気に襲われた。
「うん。…so sorry………and thank you ver much」
謝罪の言葉も感謝の言葉も照れくさくて言葉にし慣れないから、異国の言葉で告げた。きっと小十郎ならわかってくれる、と思うから。
こてん、と俺の腕の中でそのまま寝入ってしまった主の年相応に幼い寝顔をそっと覗き込み、嘆息する。まったく無茶ばかりをするお方だ。戦場でならば常にそばに在り続けてその背を守ることもできようが、追い詰められた心に気づくことも守ることもひどく難しい。政宗様は自分を隠すことがうまいから、気を抜くと皆だまされてしまう。過去に負った心の傷が今でも政宗様を苛んで毒のようにじわじわと苦しめている。
「どうか、自分で自分を傷つけることだけはやめていただきたい。…そればかりは、この小十郎にも守れないのですから……」
信頼してくれている。心を許してくれてる。
だから知っている心の傷。だから踏み出せない心の闇。
完全にふさぐことはできないのかもしれない。けれど、せめてそれならば隠さないで欲しい。
肉体ばかりではなく、心が、魂がともにあることを許して欲しい、と思う。
「あなたが皆を思う以上に皆はあなたを思っております。この小十郎があなたを思う思いも、あなたが私を思う思いに負けてはいないのですよ」
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