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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Sun 29 , 00:45:02
2009/03
・サナダテ出会い




心がざわめいた。
奥州王としてではない。俺自身の心が、波打つ。
嵐が来た。


「我が名は真田源次郎幸村!命が惜しくば退くがよい!!」


いくさばに響く大音声。
ぞくり、と震えた。
馬首をめぐらせれば赤い衣を纏い二槍を振り回す男が視界に入る。
「っ!」
目が合った。
二人の間にはかなりの距離があり、幾人もの兵が隔てているというのに。
男がニィ、と口端をあげる。
政宗も知らず口元に笑みをうかべる。
(この男は、俺を呼んでいる。奥州王ではない、この俺自身を!)
震えがとまらない。それどころか先ほどよりも強くなっている。
「Let's party!」
小さく、自分に向かってつぶやくと同時に馬を進める。

「真田っつったな」
「如何にも。某は真田源次郎幸村。武田が一番槍!貴殿は」
「俺か?」
馬から飛び降りる。鬣を撫でねぎらってから馬の尻をたたいてこの場から遠ざける。
「俺は…奥州筆頭・伊達政宗」
「!」
すらりと腰に佩いた六振りの刀を抜きかまえる。
「さあ、partyの始まりだ、真田幸村。奥州筆頭・伊達政宗、推して参る!!」


振り下ろした六爪を真田の二槍が受け止める。
かつてないほど心が震える。
ああ、そうだ。きっと俺はこいつを探していた。
眠った俺の心を呼び覚ます存在。
魂の、片割れのようなこの男を捜していた。

だって、震えが止まらない。
この男の声を聞いたその瞬間から、身体も心も震えっぱなしだ。






決着はつかず、引き分け、ということで二人の決闘は終わった。
「チィっ!おい、真田幸村。決着はおあずけだ。次に戦うまで、誰かに勝手に討ち取られたりするんじゃねえぞ」
ピィーッと指を口元に運び高く鳴らす。先ほど逃がした馬が主人のもとに戻ってくると同時にひらりと飛び乗る。
「貴殿こそ!また…何度でも、貴殿と戦いたい。こんなにも熱くなったのは初めてでござる。また会えるのが楽しみだ」
「それは俺の台詞だぜ。次に会うときは、もっと俺を楽しませろよ…?」


そのまま背を向け自陣へと戻る政宗の背を見送りながら、幸村もまた確かな震えを感じていた。
かつて感じたことのない震え、うずき、そして歓喜。それは信玄を生涯の師と仰ぐことを決めた瞬間に感じたものに似ている気もしたが、まったく別のものだった。
幸村は信玄を師とすることを心で決めたが、今、政宗に出会った喜びは魂で感じている。

そうだ、きっと自分はずっと彼を探していたのだ。
彼に出会うために今ここにいるのだ。
鍛錬に明け暮れ、齢17にして武田の一番槍を認められるまでになった。
それは、きっと、心のどこかでこの出会いを望んでいたからだ。
探し続けたものを見つけたような、遠い昔に失くしたものを見つけたような、不思議な感覚。
きっとこれを感じているのは自分だけではない。彼…伊達政宗もそうに違いない。それが証拠に、目が合った瞬間彼は笑ったのだから。

「早く、もう一度会いとうござる。独眼竜…政宗殿」


心が、震える。
君だけが僕を、僕だけが君を、真の意味で満たすことができる。
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更新はまったり遅いですが、徒然なるままに日記やら突発でSSやら書いていく所存ですのでどうぞヨロシク。
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