白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Wed 05 , 00:05:12
2007/09
「あたし、嫉妬してるの?」
多分ね、と言ってチョウジは苦笑した。
「なんで?」
言ってから、自分でも間抜けな質問だと思った。
「なんでって…なんでだと思う?」
「シカマルのことが………好き、だから?」
「多分ね」
「…」
「…」
「でも、シカマルは…あたしのこと、そういう意味では絶対に見ないよね」
チョウジは、どうこたえようか少し考えてからゆっくりとこたえた。
「多分ね」
こういうところで下手な気休めを言わないあたりが、チョウジとシカマルは似ている。そして多分、アスマ先生も。
あたしたちは、随分長いこと空を眺めていた。
頭の中がぼんやりして、何を考えていいのかもわからなかった。
「やだな」
だから、呟いたときも、それが自分の口から出た言葉だということに長いこと気づかなかった。
「何が?」
チョウジに続きを促されて、初めて気がついた。
「…え?」
「どうしたの、いの」
「今、あたしが言った?」
「うん」
「やだな、って」
「うん」
「気づかなかった」
「何、それ」
夕日に照らされたチョウジに横顔が優しく笑う。
「…多分」
「ん?」
「気づきたくなかったのよ」
「ああ」
「だって、どんなに頑張ってもあたしはシカマルにとって幼馴染でしかないから。…アスマ先生に、勝てないから」
「だから?」
「うん」
今度は、チョウジが考え込む番だった。
「ありきたりな言葉だけどさ」
眉にしわを寄せて考えながら、ぽつりとチョウジが言った。
「うん」
「好きっていう気持ちはさ。勝ち負けじゃないよ」
「うん」
「好きになってもらいたいから好きになるんじゃなくて、好きだから好きなんだよ」
「うん」
「だってさ」
「うん」
「…」
もう一度、チョウジは考え込んだ。
いや、考えているというよりも、躊躇っているように見えた。
チョウジがあたしが口を開くのを待っていてくれたように、今度はあたしがチョウジの言葉を待った。
「だって、ボク、いののことが好きだからさ」
「え…」
「でも、いのがシカマルのこと好きでも、負けた、なんて思わないし」
「…」
「なんか、もう…家族みたいに、大切だからさ。いののこともシカマルのことも。だから、幸せでいてくれるならいいや、っていう感じの好きになってるんだけど」
「…チョウジ」
「でも、ボクがいののこと好きだってことに、変わりはないし」
「…」
「自分で自分の気持ちを否定したら、そこで終わっちゃうからさ」
「…うん」
「気づかないほうがよかった、なんて言わないでよ」
「…そうね」
立ち上がって、チョウジに背を向けた。
ちょっと泣きそうでかっこ悪かったから。
「チョウジ」
「うん」
「ありがと」
「うん」
チョウジが立ち上がるのが気配でわかった。
「いの」
「…」
「帰ろっか」
今、振り向いたら泣いちゃう。
だから、黙ってた。
チョウジは何も言わないで待っていてくれる。
「…うん」
やっと落ち着いて振り返ると、チョウジはとても穏やかな顔をしていて。
落ち着いたはずなのに、また泣きそうになってちょっと困った。
(チョウジのことを好きになったんだったらよかったのに)
それでも、あたしはシカマルのことが好きなんだ。
きっと、誰よりも。
気づいたばかりの想いは、驚くほどの存在感をあたしの中で主張していた。
(多分、ずっと好きだったんだな。目をそらしてただけで)
「帰ろう」
もう一度、チョウジがそっとつぶやいた。
「うん」
もう一度、あたしもうなずいた。
目の前のこの幼馴染を、初めてかっこいいと思った。
(チョウジ、ごめんね。ありがとう)
多分ね、と言ってチョウジは苦笑した。
「なんで?」
言ってから、自分でも間抜けな質問だと思った。
「なんでって…なんでだと思う?」
「シカマルのことが………好き、だから?」
「多分ね」
「…」
「…」
「でも、シカマルは…あたしのこと、そういう意味では絶対に見ないよね」
チョウジは、どうこたえようか少し考えてからゆっくりとこたえた。
「多分ね」
こういうところで下手な気休めを言わないあたりが、チョウジとシカマルは似ている。そして多分、アスマ先生も。
あたしたちは、随分長いこと空を眺めていた。
頭の中がぼんやりして、何を考えていいのかもわからなかった。
「やだな」
だから、呟いたときも、それが自分の口から出た言葉だということに長いこと気づかなかった。
「何が?」
チョウジに続きを促されて、初めて気がついた。
「…え?」
「どうしたの、いの」
「今、あたしが言った?」
「うん」
「やだな、って」
「うん」
「気づかなかった」
「何、それ」
夕日に照らされたチョウジに横顔が優しく笑う。
「…多分」
「ん?」
「気づきたくなかったのよ」
「ああ」
「だって、どんなに頑張ってもあたしはシカマルにとって幼馴染でしかないから。…アスマ先生に、勝てないから」
「だから?」
「うん」
今度は、チョウジが考え込む番だった。
「ありきたりな言葉だけどさ」
眉にしわを寄せて考えながら、ぽつりとチョウジが言った。
「うん」
「好きっていう気持ちはさ。勝ち負けじゃないよ」
「うん」
「好きになってもらいたいから好きになるんじゃなくて、好きだから好きなんだよ」
「うん」
「だってさ」
「うん」
「…」
もう一度、チョウジは考え込んだ。
いや、考えているというよりも、躊躇っているように見えた。
チョウジがあたしが口を開くのを待っていてくれたように、今度はあたしがチョウジの言葉を待った。
「だって、ボク、いののことが好きだからさ」
「え…」
「でも、いのがシカマルのこと好きでも、負けた、なんて思わないし」
「…」
「なんか、もう…家族みたいに、大切だからさ。いののこともシカマルのことも。だから、幸せでいてくれるならいいや、っていう感じの好きになってるんだけど」
「…チョウジ」
「でも、ボクがいののこと好きだってことに、変わりはないし」
「…」
「自分で自分の気持ちを否定したら、そこで終わっちゃうからさ」
「…うん」
「気づかないほうがよかった、なんて言わないでよ」
「…そうね」
立ち上がって、チョウジに背を向けた。
ちょっと泣きそうでかっこ悪かったから。
「チョウジ」
「うん」
「ありがと」
「うん」
チョウジが立ち上がるのが気配でわかった。
「いの」
「…」
「帰ろっか」
今、振り向いたら泣いちゃう。
だから、黙ってた。
チョウジは何も言わないで待っていてくれる。
「…うん」
やっと落ち着いて振り返ると、チョウジはとても穏やかな顔をしていて。
落ち着いたはずなのに、また泣きそうになってちょっと困った。
(チョウジのことを好きになったんだったらよかったのに)
それでも、あたしはシカマルのことが好きなんだ。
きっと、誰よりも。
気づいたばかりの想いは、驚くほどの存在感をあたしの中で主張していた。
(多分、ずっと好きだったんだな。目をそらしてただけで)
「帰ろう」
もう一度、チョウジがそっとつぶやいた。
「うん」
もう一度、あたしもうなずいた。
目の前のこの幼馴染を、初めてかっこいいと思った。
(チョウジ、ごめんね。ありがとう)
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