白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Mon 24 , 22:51:33
2007/09
その一(サナダテ?)
恋をしていた。
否、あまりにも強すぎるこの思いは恋と呼ぶには適さないかもしれない。
だが、オレはこの思いを恋だと思っているから、これは恋なのだ。
強く求めていた。
強く惹かれていた。
その存在を、ただただ欲していた。
だが、いくら“オレ”という人物がそれを望んでも、互いの立場が共に在ることを許さないから。
だから、せめて、出会ったときのようにオレたちは戦場で華を咲かせる。
緋色の、華を。
その二(?)
好きだと言えばよかった。
愛していると伝えればよかった。
大切だから、守りたくて。
大事だから、傷つけたくなくて。
手を伸ばせば、壊してしまうのだと思っていた。
触れなければ、失わないのだと信じていた。
なんて、愚かだったのか。
どれだけ悔いたところですべては過ぎたことでしかないのだ。
その三(シカテマ?)
「今、死ねたら幸せだと思わないか?」
高い高い崖の上から下を覗き込んだ。
ここから落ちれば、いくら忍といえどもひとたまりもないだろう。
「じゃあ、死んでみるか?」
隣に立つ男は、甘味処に誘うときと同じ軽い調子で答えた。
「…」
顔をのぞきこんでも、心が読めない。いつだって、この男は不可解だ。何を考えているのか、あるいは何も考えていないのか。
「付き合ってやるぜ?」
ただ、嘘は言わないことを知っている。
だから、今、あたしが頷けば、この男は躊躇いもなくあたしと一緒に死んでくれるのだろう。それは、予感ではなく確信だ。
「…やめておこう」
崖のギリギリのところに立っていた足を一歩引いた。
男が片眉をひょいと跳ね上げる。
「いいのか?」
少しだけ、残念そうな響きが聞こえた。
「…」
何も言わずに踵を返してあたしは日常に帰っていった。
(だって、今、おまえと死んだって何にもならないじゃないか)
恋をしていた。
否、あまりにも強すぎるこの思いは恋と呼ぶには適さないかもしれない。
だが、オレはこの思いを恋だと思っているから、これは恋なのだ。
強く求めていた。
強く惹かれていた。
その存在を、ただただ欲していた。
だが、いくら“オレ”という人物がそれを望んでも、互いの立場が共に在ることを許さないから。
だから、せめて、出会ったときのようにオレたちは戦場で華を咲かせる。
緋色の、華を。
その二(?)
好きだと言えばよかった。
愛していると伝えればよかった。
大切だから、守りたくて。
大事だから、傷つけたくなくて。
手を伸ばせば、壊してしまうのだと思っていた。
触れなければ、失わないのだと信じていた。
なんて、愚かだったのか。
どれだけ悔いたところですべては過ぎたことでしかないのだ。
その三(シカテマ?)
「今、死ねたら幸せだと思わないか?」
高い高い崖の上から下を覗き込んだ。
ここから落ちれば、いくら忍といえどもひとたまりもないだろう。
「じゃあ、死んでみるか?」
隣に立つ男は、甘味処に誘うときと同じ軽い調子で答えた。
「…」
顔をのぞきこんでも、心が読めない。いつだって、この男は不可解だ。何を考えているのか、あるいは何も考えていないのか。
「付き合ってやるぜ?」
ただ、嘘は言わないことを知っている。
だから、今、あたしが頷けば、この男は躊躇いもなくあたしと一緒に死んでくれるのだろう。それは、予感ではなく確信だ。
「…やめておこう」
崖のギリギリのところに立っていた足を一歩引いた。
男が片眉をひょいと跳ね上げる。
「いいのか?」
少しだけ、残念そうな響きが聞こえた。
「…」
何も言わずに踵を返してあたしは日常に帰っていった。
(だって、今、おまえと死んだって何にもならないじゃないか)
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Sun 23 , 22:07:03
2007/09
最近、忙しかったり疲れてたりスランプだったりして、書けない…。
書きたい話はたくさんあるのに、書けないってくやしい!
日記で連載してるシカいの話も、続きは考えてあるのにいざ文にしようとすると…。
今月中に、何でもいいから何かUPしたいです。
書きたい話はたくさんあるのに、書けないってくやしい!
日記で連載してるシカいの話も、続きは考えてあるのにいざ文にしようとすると…。
今月中に、何でもいいから何かUPしたいです。
Fri 14 , 22:18:39
2007/09
望みのない一方通行な想いは苦しいだけだけど、それでも想わずにはいられない。
それが悔しい。
アスマ先生と一緒にいたころのような幸福をあたしはシカマルにあげられない。
だから、しかたないのかもしれない。
(でも…)
告白も、プロポーズも、あたしからだった。
女として、それは少し切ない。
受身の恋愛は柄じゃない。
それでも、求められたいと思ってしまうのだからバカらしい。
「結婚して…もう、3年?」
『ねえ、シカマル』
『どうした?いの』
『結婚してくれる?』
『いいぜ』
(ロマンのかけらもなかったな)
夏の暑い日で、青い空に白い雲。大きなヒマワリがやたらきれいに咲いていた。
その3日後には、シカマルは婚約指輪を用意してくれた。
そして、秋の初めに内輪だけの小さな式を挙げた。
もしかしたら、あたしはシカマルのそばにいる方法を間違えたのかもしれない。
想いを告白しなければよかったのかもしれない。
何度もそう思ったけれど。
シカマルはいつだって優しくて、あたしをとても大事にしてくれたから、あたしはシカマルから離れられない。
だから、間違っていたのかもしれないけれど。
それでも、間違っていてもこの関係を壊すのが怖くて。
だって、それでもあたしがシカマルを好きな気持ちは本物だったし、あたしに触れるシカマルの優しさも本物だったから。
ニセモノだったら、こんなに悩まなくてすんだのに。
それが悔しい。
アスマ先生と一緒にいたころのような幸福をあたしはシカマルにあげられない。
だから、しかたないのかもしれない。
(でも…)
告白も、プロポーズも、あたしからだった。
女として、それは少し切ない。
受身の恋愛は柄じゃない。
それでも、求められたいと思ってしまうのだからバカらしい。
「結婚して…もう、3年?」
『ねえ、シカマル』
『どうした?いの』
『結婚してくれる?』
『いいぜ』
(ロマンのかけらもなかったな)
夏の暑い日で、青い空に白い雲。大きなヒマワリがやたらきれいに咲いていた。
その3日後には、シカマルは婚約指輪を用意してくれた。
そして、秋の初めに内輪だけの小さな式を挙げた。
もしかしたら、あたしはシカマルのそばにいる方法を間違えたのかもしれない。
想いを告白しなければよかったのかもしれない。
何度もそう思ったけれど。
シカマルはいつだって優しくて、あたしをとても大事にしてくれたから、あたしはシカマルから離れられない。
だから、間違っていたのかもしれないけれど。
それでも、間違っていてもこの関係を壊すのが怖くて。
だって、それでもあたしがシカマルを好きな気持ちは本物だったし、あたしに触れるシカマルの優しさも本物だったから。
ニセモノだったら、こんなに悩まなくてすんだのに。
Sun 09 , 21:25:09
2007/09
「ただいま」
聞こえた声に振り返れば、シカマルが立っていた。相変わらず、やる気のなさそうな雰囲気。
「おかえりなさい」
それでも、一緒にいられることが嬉しくてあたしは微笑む。
「ん…」
シカマルは冷蔵庫からお茶を取り出して飲むと、自分の部屋へ行ってしまった。
今のあたしたちは夫婦だから、一応寝室は同じ。でも、それ以外にシカマルもあたしも自分の部屋を持っている。勝手に入ってはいけない、完全にプライベートな空間。あたしは、未だにシカマルの部屋に入ったことがない。シカマルもあたしの部屋に入ったことはないけれど、それはシカマルがあたしの部屋に興味がないからだ。あたしは、入りたくても入らせてもらえない。
意味は全然違うのに結果が同じというのは、少し笑える。
シカマルは、まだアスマ先生のことを愛している。
それは、きっとあたしには想像もつかないようなひたむきさで、想い続けている。
これから先、どれほどの時間がたとうとも、あたしを一番に愛してくれることは、ない。
否、それどころかあたしのことを恋愛感情で見てくれることは、ないのだ。
本人にはっきりそういわれたし、それでもかまわないと言ったのはあたしだ。
それでも、シカマルがアスマ先生のことを思っているとき、あたしは泣きたくてしかたがなくなる。
『いのは、それでいいの?』
昼間のサクラの言葉を思い出す。
「いいわけ…ないじゃない」
でも、あたしがNoと言えばこの関係はそこで終わってしまうから。
サクラに言った言葉は嘘じゃないけど、本当でもない。
本当は、一番に思ってほしい。
いつまでも一方通行な思いは、ただ苦しいだけ。
聞こえた声に振り返れば、シカマルが立っていた。相変わらず、やる気のなさそうな雰囲気。
「おかえりなさい」
それでも、一緒にいられることが嬉しくてあたしは微笑む。
「ん…」
シカマルは冷蔵庫からお茶を取り出して飲むと、自分の部屋へ行ってしまった。
今のあたしたちは夫婦だから、一応寝室は同じ。でも、それ以外にシカマルもあたしも自分の部屋を持っている。勝手に入ってはいけない、完全にプライベートな空間。あたしは、未だにシカマルの部屋に入ったことがない。シカマルもあたしの部屋に入ったことはないけれど、それはシカマルがあたしの部屋に興味がないからだ。あたしは、入りたくても入らせてもらえない。
意味は全然違うのに結果が同じというのは、少し笑える。
シカマルは、まだアスマ先生のことを愛している。
それは、きっとあたしには想像もつかないようなひたむきさで、想い続けている。
これから先、どれほどの時間がたとうとも、あたしを一番に愛してくれることは、ない。
否、それどころかあたしのことを恋愛感情で見てくれることは、ないのだ。
本人にはっきりそういわれたし、それでもかまわないと言ったのはあたしだ。
それでも、シカマルがアスマ先生のことを思っているとき、あたしは泣きたくてしかたがなくなる。
『いのは、それでいいの?』
昼間のサクラの言葉を思い出す。
「いいわけ…ないじゃない」
でも、あたしがNoと言えばこの関係はそこで終わってしまうから。
サクラに言った言葉は嘘じゃないけど、本当でもない。
本当は、一番に思ってほしい。
いつまでも一方通行な思いは、ただ苦しいだけ。
Thu 06 , 01:29:27
2007/09
「ねえ、シカマルとアスマ先生って、いつも二人で何してるの?」
好奇心と嫉妬心から、あたしは聞かずにはいられなかった。
「は?」
アスマ先生は、任務完了の書類を提出しにいっていて、このあとアスマ先生のところに行くのだというシカマルは、いつものように雲を眺めていた。
チョウジは父親と約束がある、ということで先に帰ってしまい、今は二人きりだった。ちょっと前までは意識したこともなかったけれど、想いを自覚した今はすごくドキドキして困る。
「何って…まあ、色々」
「色々って、何?」
「特に、何もしねぇけど…。昼寝したり、巻物見せてもらったり、日向ぼっこしたり…ああ、最近は将棋やるな」
「将棋?」
シカマルが、思い出したのか楽しそうに頬を緩める。
柔らかい表情。
今、シカマルと話してるのはあたしなのに、この表情を作ったのはあたしじゃなくてアスマ先生なんだ。
悔しい。
嫉妬心に胸がツキンと痛む。
「楽しいの?」
「まあな」
「どの辺が?」
「どの辺って…勝てるし」
「そうなの?」
「一度も負けたことねぇよ」
自慢げな響きに思わず苦笑する。
めんどくさがりだし、別に勝ちにこだわるタイプでもないけど、それでもやっぱり勝てるのは嬉しいのだろう。年相応な無邪気な顔。
「アスマ先生、弱いの?」
「さあ?他の人とやったことねぇからわかんねぇけど…別に、弱くはないんじゃねぇか?」
「じゃ、シカマルが強いんだ」
「アスマよりはな」
「自分よりも弱い人とやってて、楽しいものなの?」
「楽しくないだろうな、普通は。でも…将棋だと、オレとアスマで対等にやれるし、オレが勝てるし…。あいつ、何回負けても懲りずに『もう一回』って挑んでくるんだぜ」
(聞かなければよかった)
こんなに嬉しそうにアスマ先生との時間を語るシカマルをみたくない。
そう思うと同時に、自己嫌悪に陥った。
どれだけわがままで、心が狭くて、バカなんだろう、あたしは。
どうして、こんなに。
「でも…そうだな、一番の理由は…アスマとやるから楽しいんだろうな、きっと。多分、オレがすきなのは“将棋”じゃなくて、“アスマとやる将棋”なんだろう。アスマがもっと将棋が弱くて、たとえば相手にならないほどに弱かったとしても、オレはきっとアスマ以外の相手と将棋をやろうとは思わないだろうな」
どうして、そんなにキレイに笑うの。
「アスマのそばは、居心地がいいから」
ああ、本当に。
聞かなければよかった。
好奇心と嫉妬心から、あたしは聞かずにはいられなかった。
「は?」
アスマ先生は、任務完了の書類を提出しにいっていて、このあとアスマ先生のところに行くのだというシカマルは、いつものように雲を眺めていた。
チョウジは父親と約束がある、ということで先に帰ってしまい、今は二人きりだった。ちょっと前までは意識したこともなかったけれど、想いを自覚した今はすごくドキドキして困る。
「何って…まあ、色々」
「色々って、何?」
「特に、何もしねぇけど…。昼寝したり、巻物見せてもらったり、日向ぼっこしたり…ああ、最近は将棋やるな」
「将棋?」
シカマルが、思い出したのか楽しそうに頬を緩める。
柔らかい表情。
今、シカマルと話してるのはあたしなのに、この表情を作ったのはあたしじゃなくてアスマ先生なんだ。
悔しい。
嫉妬心に胸がツキンと痛む。
「楽しいの?」
「まあな」
「どの辺が?」
「どの辺って…勝てるし」
「そうなの?」
「一度も負けたことねぇよ」
自慢げな響きに思わず苦笑する。
めんどくさがりだし、別に勝ちにこだわるタイプでもないけど、それでもやっぱり勝てるのは嬉しいのだろう。年相応な無邪気な顔。
「アスマ先生、弱いの?」
「さあ?他の人とやったことねぇからわかんねぇけど…別に、弱くはないんじゃねぇか?」
「じゃ、シカマルが強いんだ」
「アスマよりはな」
「自分よりも弱い人とやってて、楽しいものなの?」
「楽しくないだろうな、普通は。でも…将棋だと、オレとアスマで対等にやれるし、オレが勝てるし…。あいつ、何回負けても懲りずに『もう一回』って挑んでくるんだぜ」
(聞かなければよかった)
こんなに嬉しそうにアスマ先生との時間を語るシカマルをみたくない。
そう思うと同時に、自己嫌悪に陥った。
どれだけわがままで、心が狭くて、バカなんだろう、あたしは。
どうして、こんなに。
「でも…そうだな、一番の理由は…アスマとやるから楽しいんだろうな、きっと。多分、オレがすきなのは“将棋”じゃなくて、“アスマとやる将棋”なんだろう。アスマがもっと将棋が弱くて、たとえば相手にならないほどに弱かったとしても、オレはきっとアスマ以外の相手と将棋をやろうとは思わないだろうな」
どうして、そんなにキレイに笑うの。
「アスマのそばは、居心地がいいから」
ああ、本当に。
聞かなければよかった。
Wed 05 , 00:05:12
2007/09
「あたし、嫉妬してるの?」
多分ね、と言ってチョウジは苦笑した。
「なんで?」
言ってから、自分でも間抜けな質問だと思った。
「なんでって…なんでだと思う?」
「シカマルのことが………好き、だから?」
「多分ね」
「…」
「…」
「でも、シカマルは…あたしのこと、そういう意味では絶対に見ないよね」
チョウジは、どうこたえようか少し考えてからゆっくりとこたえた。
「多分ね」
こういうところで下手な気休めを言わないあたりが、チョウジとシカマルは似ている。そして多分、アスマ先生も。
あたしたちは、随分長いこと空を眺めていた。
頭の中がぼんやりして、何を考えていいのかもわからなかった。
「やだな」
だから、呟いたときも、それが自分の口から出た言葉だということに長いこと気づかなかった。
「何が?」
チョウジに続きを促されて、初めて気がついた。
「…え?」
「どうしたの、いの」
「今、あたしが言った?」
「うん」
「やだな、って」
「うん」
「気づかなかった」
「何、それ」
夕日に照らされたチョウジに横顔が優しく笑う。
「…多分」
「ん?」
「気づきたくなかったのよ」
「ああ」
「だって、どんなに頑張ってもあたしはシカマルにとって幼馴染でしかないから。…アスマ先生に、勝てないから」
「だから?」
「うん」
今度は、チョウジが考え込む番だった。
「ありきたりな言葉だけどさ」
眉にしわを寄せて考えながら、ぽつりとチョウジが言った。
「うん」
「好きっていう気持ちはさ。勝ち負けじゃないよ」
「うん」
「好きになってもらいたいから好きになるんじゃなくて、好きだから好きなんだよ」
「うん」
「だってさ」
「うん」
「…」
もう一度、チョウジは考え込んだ。
いや、考えているというよりも、躊躇っているように見えた。
チョウジがあたしが口を開くのを待っていてくれたように、今度はあたしがチョウジの言葉を待った。
「だって、ボク、いののことが好きだからさ」
「え…」
「でも、いのがシカマルのこと好きでも、負けた、なんて思わないし」
「…」
「なんか、もう…家族みたいに、大切だからさ。いののこともシカマルのことも。だから、幸せでいてくれるならいいや、っていう感じの好きになってるんだけど」
「…チョウジ」
「でも、ボクがいののこと好きだってことに、変わりはないし」
「…」
「自分で自分の気持ちを否定したら、そこで終わっちゃうからさ」
「…うん」
「気づかないほうがよかった、なんて言わないでよ」
「…そうね」
立ち上がって、チョウジに背を向けた。
ちょっと泣きそうでかっこ悪かったから。
「チョウジ」
「うん」
「ありがと」
「うん」
チョウジが立ち上がるのが気配でわかった。
「いの」
「…」
「帰ろっか」
今、振り向いたら泣いちゃう。
だから、黙ってた。
チョウジは何も言わないで待っていてくれる。
「…うん」
やっと落ち着いて振り返ると、チョウジはとても穏やかな顔をしていて。
落ち着いたはずなのに、また泣きそうになってちょっと困った。
(チョウジのことを好きになったんだったらよかったのに)
それでも、あたしはシカマルのことが好きなんだ。
きっと、誰よりも。
気づいたばかりの想いは、驚くほどの存在感をあたしの中で主張していた。
(多分、ずっと好きだったんだな。目をそらしてただけで)
「帰ろう」
もう一度、チョウジがそっとつぶやいた。
「うん」
もう一度、あたしもうなずいた。
目の前のこの幼馴染を、初めてかっこいいと思った。
(チョウジ、ごめんね。ありがとう)
多分ね、と言ってチョウジは苦笑した。
「なんで?」
言ってから、自分でも間抜けな質問だと思った。
「なんでって…なんでだと思う?」
「シカマルのことが………好き、だから?」
「多分ね」
「…」
「…」
「でも、シカマルは…あたしのこと、そういう意味では絶対に見ないよね」
チョウジは、どうこたえようか少し考えてからゆっくりとこたえた。
「多分ね」
こういうところで下手な気休めを言わないあたりが、チョウジとシカマルは似ている。そして多分、アスマ先生も。
あたしたちは、随分長いこと空を眺めていた。
頭の中がぼんやりして、何を考えていいのかもわからなかった。
「やだな」
だから、呟いたときも、それが自分の口から出た言葉だということに長いこと気づかなかった。
「何が?」
チョウジに続きを促されて、初めて気がついた。
「…え?」
「どうしたの、いの」
「今、あたしが言った?」
「うん」
「やだな、って」
「うん」
「気づかなかった」
「何、それ」
夕日に照らされたチョウジに横顔が優しく笑う。
「…多分」
「ん?」
「気づきたくなかったのよ」
「ああ」
「だって、どんなに頑張ってもあたしはシカマルにとって幼馴染でしかないから。…アスマ先生に、勝てないから」
「だから?」
「うん」
今度は、チョウジが考え込む番だった。
「ありきたりな言葉だけどさ」
眉にしわを寄せて考えながら、ぽつりとチョウジが言った。
「うん」
「好きっていう気持ちはさ。勝ち負けじゃないよ」
「うん」
「好きになってもらいたいから好きになるんじゃなくて、好きだから好きなんだよ」
「うん」
「だってさ」
「うん」
「…」
もう一度、チョウジは考え込んだ。
いや、考えているというよりも、躊躇っているように見えた。
チョウジがあたしが口を開くのを待っていてくれたように、今度はあたしがチョウジの言葉を待った。
「だって、ボク、いののことが好きだからさ」
「え…」
「でも、いのがシカマルのこと好きでも、負けた、なんて思わないし」
「…」
「なんか、もう…家族みたいに、大切だからさ。いののこともシカマルのことも。だから、幸せでいてくれるならいいや、っていう感じの好きになってるんだけど」
「…チョウジ」
「でも、ボクがいののこと好きだってことに、変わりはないし」
「…」
「自分で自分の気持ちを否定したら、そこで終わっちゃうからさ」
「…うん」
「気づかないほうがよかった、なんて言わないでよ」
「…そうね」
立ち上がって、チョウジに背を向けた。
ちょっと泣きそうでかっこ悪かったから。
「チョウジ」
「うん」
「ありがと」
「うん」
チョウジが立ち上がるのが気配でわかった。
「いの」
「…」
「帰ろっか」
今、振り向いたら泣いちゃう。
だから、黙ってた。
チョウジは何も言わないで待っていてくれる。
「…うん」
やっと落ち着いて振り返ると、チョウジはとても穏やかな顔をしていて。
落ち着いたはずなのに、また泣きそうになってちょっと困った。
(チョウジのことを好きになったんだったらよかったのに)
それでも、あたしはシカマルのことが好きなんだ。
きっと、誰よりも。
気づいたばかりの想いは、驚くほどの存在感をあたしの中で主張していた。
(多分、ずっと好きだったんだな。目をそらしてただけで)
「帰ろう」
もう一度、チョウジがそっとつぶやいた。
「うん」
もう一度、あたしもうなずいた。
目の前のこの幼馴染を、初めてかっこいいと思った。
(チョウジ、ごめんね。ありがとう)
Mon 03 , 14:56:50
2007/09
シカマルがあたしたちと一緒にいる時間が減った。
その代わりに、アスマ先生と一緒にいる。
「…ねぇ」
あたしとチョウジは、二人だった。
いつもならシカマルも一緒にいて、三人で何をするでもなくだらだらと一日を過ごしていたのに。なのに、シカマルはここにいない。今日もアスマ先生のところにいってしまった。
「ん?どうしたの、いの」
珍しくお菓子を食べていないチョウジが、あたしのほうを見て優しく笑いかけた。
「シカマル…来ないね」
「うん。アスマ先生と約束してるって言ってたからね」
「うん…。でも、ねえ、チョウジ」
「何?」
「寂しくない?いつも一緒にいたのに」
「寂しくないって言ったら嘘だけど、でも、いいよ」
「どうして?」
「シカマルが、嬉しそうだったから」
「…」
いつもシカマルがそうしていたように、空を眺める。
白い雲がぽつんと浮かんでいるだけの光景は、すぐに飽きてしまった。
(つまんない)
いつもなら心安らぐ大好きな時間なのに、なんだか今日はとても空虚な時間に思えた。
(あたし、何やってるんだろ)
「いのは…」
帰ろうか、と考えているときに不意に声をかけられてびっくりした。
「え?」
「いのは、シカマルのことがすきなんだね」
チョウジは、いつものように優しい笑みを浮かべている。
「そりゃ…好きよ。だって、大切な幼馴染じゃないの」
「そうだね」
「もちろん、チョウジのことも好きだし大切よ?」
「うん。ボクも、いのとシカマルのことが大好きだし、大切だよ。心からね」
「知ってるわ」
「でもね、いの。ボクが今言いたいのは、そういう意味じゃなくって…」
「?」
チョウジが何を言いたいのか、わからなかった。
でも、チョウジは他人の機微に聡いから、もしかしたらあたしには見えていない何かも見えているのかもしれない、と思った。
でも、それを知りたくないとも、心のどこかで思った。
「ねえ、いの。シカマルに幸せになってほしい?」
「もちろん」
「じゃあ、どうしてシカマルに特別な人ができたのに嬉しそうじゃないの?」
「あ…。…わかんない。どうしてかしら」
「シカマルのこと、好き?」
「ええ」
「アスマ先生のこと、好き?」
「ええ」
「じゃあ、二人が一緒にいるのは?」
「…多分、好きじゃない」
チョウジの問いに誘導されるようにたどり着いてしまったこたえに、愕然とした。
「あたし、嫉妬してるの?」
その代わりに、アスマ先生と一緒にいる。
「…ねぇ」
あたしとチョウジは、二人だった。
いつもならシカマルも一緒にいて、三人で何をするでもなくだらだらと一日を過ごしていたのに。なのに、シカマルはここにいない。今日もアスマ先生のところにいってしまった。
「ん?どうしたの、いの」
珍しくお菓子を食べていないチョウジが、あたしのほうを見て優しく笑いかけた。
「シカマル…来ないね」
「うん。アスマ先生と約束してるって言ってたからね」
「うん…。でも、ねえ、チョウジ」
「何?」
「寂しくない?いつも一緒にいたのに」
「寂しくないって言ったら嘘だけど、でも、いいよ」
「どうして?」
「シカマルが、嬉しそうだったから」
「…」
いつもシカマルがそうしていたように、空を眺める。
白い雲がぽつんと浮かんでいるだけの光景は、すぐに飽きてしまった。
(つまんない)
いつもなら心安らぐ大好きな時間なのに、なんだか今日はとても空虚な時間に思えた。
(あたし、何やってるんだろ)
「いのは…」
帰ろうか、と考えているときに不意に声をかけられてびっくりした。
「え?」
「いのは、シカマルのことがすきなんだね」
チョウジは、いつものように優しい笑みを浮かべている。
「そりゃ…好きよ。だって、大切な幼馴染じゃないの」
「そうだね」
「もちろん、チョウジのことも好きだし大切よ?」
「うん。ボクも、いのとシカマルのことが大好きだし、大切だよ。心からね」
「知ってるわ」
「でもね、いの。ボクが今言いたいのは、そういう意味じゃなくって…」
「?」
チョウジが何を言いたいのか、わからなかった。
でも、チョウジは他人の機微に聡いから、もしかしたらあたしには見えていない何かも見えているのかもしれない、と思った。
でも、それを知りたくないとも、心のどこかで思った。
「ねえ、いの。シカマルに幸せになってほしい?」
「もちろん」
「じゃあ、どうしてシカマルに特別な人ができたのに嬉しそうじゃないの?」
「あ…。…わかんない。どうしてかしら」
「シカマルのこと、好き?」
「ええ」
「アスマ先生のこと、好き?」
「ええ」
「じゃあ、二人が一緒にいるのは?」
「…多分、好きじゃない」
チョウジの問いに誘導されるようにたどり着いてしまったこたえに、愕然とした。
「あたし、嫉妬してるの?」
Sun 02 , 18:50:17
2007/09
それからもシカマルとアスマ先生は、どんどん互いの深いところまで許しあうようになっていった。
なんていうか…空気が、違った。
アスマ先生は適当そうに見えて、その実、すごく人を区別している。たいていの人には表面しか見せていない。
表面だけの付き合いを好む人なんだと思っていた。
相手を深いところには立ち入らせないかわりに、自分も相手の深いところには手を出さない。
そういう人だった。
シカマルもそういうタイプで、でも一度気を許すと、とことんまでその相手には甘くなっちゃうの。その典型的な例が、あたしとチョウジ。
チョウジとシカマルなら、男の子と同士だし、幼馴染じゃなくても、きっと仲良くなっただろう。
でも、あたしはきっと、幼馴染じゃなかったらシカマルの近くには入れなかったと思う。幼馴染じゃなかったら、あたしはシカマルの嫌いなタイプだと思う。うるさくて、ミーハーで、落ち着きがなくて。
あたしがどれだけうるさくしても、シカマルを振り回しても、決してあたしを嫌わないのは、あたしがシカマルの幼馴染で、物心つくよりも前からずっと一緒にいて、シカマルの内側に否応なしに入っていっちゃった存在だから。
でも、アスマ先生はそんなあたしも、シカマルの親友のチョウジも入っていけないようなシカマルの深い深いところを許されている。
心の中にはいくつもドアがあって、あたしもチョウジもその途中までしか、入らせてもらえない。その先のドアは、どうやっても、決して開かなかった。だから、誰に対しても開かないのだと思ってた。
それなのに、出会ったばっかりのアスマ先生は、そのドアをひょいと開けて、あたしたちが知らないような奥にまで入っていってしまう。
それが、悔しかった。
だから、あたしはシカマルのこともアスマ先生のことも大好きだけど、二人が一緒にいるのを見るのはあまり好きではなかった。
なんていうか…空気が、違った。
アスマ先生は適当そうに見えて、その実、すごく人を区別している。たいていの人には表面しか見せていない。
表面だけの付き合いを好む人なんだと思っていた。
相手を深いところには立ち入らせないかわりに、自分も相手の深いところには手を出さない。
そういう人だった。
シカマルもそういうタイプで、でも一度気を許すと、とことんまでその相手には甘くなっちゃうの。その典型的な例が、あたしとチョウジ。
チョウジとシカマルなら、男の子と同士だし、幼馴染じゃなくても、きっと仲良くなっただろう。
でも、あたしはきっと、幼馴染じゃなかったらシカマルの近くには入れなかったと思う。幼馴染じゃなかったら、あたしはシカマルの嫌いなタイプだと思う。うるさくて、ミーハーで、落ち着きがなくて。
あたしがどれだけうるさくしても、シカマルを振り回しても、決してあたしを嫌わないのは、あたしがシカマルの幼馴染で、物心つくよりも前からずっと一緒にいて、シカマルの内側に否応なしに入っていっちゃった存在だから。
でも、アスマ先生はそんなあたしも、シカマルの親友のチョウジも入っていけないようなシカマルの深い深いところを許されている。
心の中にはいくつもドアがあって、あたしもチョウジもその途中までしか、入らせてもらえない。その先のドアは、どうやっても、決して開かなかった。だから、誰に対しても開かないのだと思ってた。
それなのに、出会ったばっかりのアスマ先生は、そのドアをひょいと開けて、あたしたちが知らないような奥にまで入っていってしまう。
それが、悔しかった。
だから、あたしはシカマルのこともアスマ先生のことも大好きだけど、二人が一緒にいるのを見るのはあまり好きではなかった。
Sat 01 , 19:43:54
2007/09
あの二人がどういう関係だったのか、あたしには未だにわからない。
ただ、互いのことをとても大切に思っていたのだということだけは知っていた。
二人は、どこか似ていた。
「ねえ、シカマルとアスマ先生ってさ、仲いいよね」
「あー?」
任務が終わって、いつものように茶屋で団子を食べていた(もちろん、先生のおごりで)時に、ふと言ってみた。
シカマルはアスマ先生の背中にもたれてうとうととしていた。
(猫みたい)
意外に人見知りの激しいシカマルが、アスマ先生には最初からなついていた。いや、なついていたという言い方は正しくないかもしれない。気を許していた、とでも表現すればいいのだろうか。とにかく、あたしはその様子に内心ひどく驚いていたし、チョウジも驚いていた。
「仲いいっつーか…まあ、確かに気に入ってるけどな。こいつのことは」
シカマルはこたえるつもりがないらしく、あたしの言葉にうっすらと開いた目をもう一度閉じて全身をアスマ先生の背に預けている。
「アスマ先生ってシカマルには甘いよね」
団子を頬張りながら、チョウジがのんびりと呟く。
「そうか?」
「自覚ないの?」
「…おまえらにも、十分甘いと思うんだが」
「甘さが違うの」
「は?」
アスマ先生は、本気でわかってないみたい。多分、シカマルも気づいていない。
出会って、まだ1ヶ月ちょっと。
既に、シカマルもアスマ先生も互いを特別に見ていると思うのは、あたしだけだろうか。
「んー…」
アスマ先生が動いたのが気に入らないのか、シカマルが不満そうにごそごそ動いた。
「お、悪い」
そう言ってまたさっきみたいに座りなおすと、シカマルももう一度居心地のいい体勢を探して、眠った。
誰かのそばで、こんなにも安心しきって眠るシカマルを、初めて見た。
ただ、互いのことをとても大切に思っていたのだということだけは知っていた。
二人は、どこか似ていた。
「ねえ、シカマルとアスマ先生ってさ、仲いいよね」
「あー?」
任務が終わって、いつものように茶屋で団子を食べていた(もちろん、先生のおごりで)時に、ふと言ってみた。
シカマルはアスマ先生の背中にもたれてうとうととしていた。
(猫みたい)
意外に人見知りの激しいシカマルが、アスマ先生には最初からなついていた。いや、なついていたという言い方は正しくないかもしれない。気を許していた、とでも表現すればいいのだろうか。とにかく、あたしはその様子に内心ひどく驚いていたし、チョウジも驚いていた。
「仲いいっつーか…まあ、確かに気に入ってるけどな。こいつのことは」
シカマルはこたえるつもりがないらしく、あたしの言葉にうっすらと開いた目をもう一度閉じて全身をアスマ先生の背に預けている。
「アスマ先生ってシカマルには甘いよね」
団子を頬張りながら、チョウジがのんびりと呟く。
「そうか?」
「自覚ないの?」
「…おまえらにも、十分甘いと思うんだが」
「甘さが違うの」
「は?」
アスマ先生は、本気でわかってないみたい。多分、シカマルも気づいていない。
出会って、まだ1ヶ月ちょっと。
既に、シカマルもアスマ先生も互いを特別に見ていると思うのは、あたしだけだろうか。
「んー…」
アスマ先生が動いたのが気に入らないのか、シカマルが不満そうにごそごそ動いた。
「お、悪い」
そう言ってまたさっきみたいに座りなおすと、シカマルももう一度居心地のいい体勢を探して、眠った。
誰かのそばで、こんなにも安心しきって眠るシカマルを、初めて見た。
Fri 31 , 23:18:33
2007/08
きっと、シカマルはあたしを恋愛感情で好きなわけではない。
でも、それでもかまわないと私が思っているから。
だから、あたしたちは夫婦になったのだ。
「ねえ、あんたはそれでいいの?」
「何で?」
「だって…それで、あんたは幸せなの?」
話の流れでそれを口にしたとき、サクラは少しだけ泣きそうな顔でそう言った。
「幸せよ」
「…」
「どうしてそんなことを思うの?」
「どうしてって…」
わかってる。
きっと、サクラの方が正しいのだ。でも、正しいことがいつも正しいとは限らないだけ。
「サクラは…今、幸せなのね」
「え…」
「サスケ君のことを愛していて、サスケ君に愛されて、幸せなのね」
「…そうね。だから、あんたたちのことが気になるのかもしれない」
サクラが、複雑そうに眉を寄せた。なんて言えばいいのか考えているのだろう。
「いのは…いいの?」
「よくないわよ」
「…」
「でも、これでいいの。そりゃあね、愛したらその分愛し返してほしいけど、ムリだもの」
「どうして…」
「ねえ、サクラ。あんた、あの雲を捕まえる方法を知ってる?知らないでしょ。それと同じことなのよ。捕まえようとしても手が届かない。もし、手が届いたとしても、きっとあれはあたしたちの手から…握り締めた指の隙間から、逃れていくような不確かなものなの」
言いながら、自分でも驚いていた。
今まで考えても考えてもわからなかったことが、言葉にすることでストン、と胸の中に落ちてくる。
「手を伸ばしても届かない代わりに、見上げればいつでもそこにあるし、時には強い日差しから守ってくれたりもするの。それに、あれは…誰のものにもならないでしょ?」
「だから…いいの?」
「ええ。だって、…きっと、シカマルはもう誰かを本気で愛することはないもの」
「え?」
「これから先もきっと、生きている人の中であたしのことを一番に想ってくれるわ。だって、そういうヤツだもの。だから、あたしも安心してシカマルを好きでいることができるの」
「…生きている人の中では?」
「そうよ。シカマルが…すべての人の中で、一番に想う人は、別にいるの。それでもかまわない。あたしも、その人のことがすごく好きだったし、それに…今、生きてシカマルのそばにいるのはあたしだもの。ねえ、それってすごいことでしょ」
「…そうね」
サクラは釈然としない顔で、それでも少しだけすっきりした顔で部屋を出て行った。
部屋に一人残ったあたしは、思い出す。
シカマルが、心から幸せそうに笑っていた日のことを。
でも、それでもかまわないと私が思っているから。
だから、あたしたちは夫婦になったのだ。
「ねえ、あんたはそれでいいの?」
「何で?」
「だって…それで、あんたは幸せなの?」
話の流れでそれを口にしたとき、サクラは少しだけ泣きそうな顔でそう言った。
「幸せよ」
「…」
「どうしてそんなことを思うの?」
「どうしてって…」
わかってる。
きっと、サクラの方が正しいのだ。でも、正しいことがいつも正しいとは限らないだけ。
「サクラは…今、幸せなのね」
「え…」
「サスケ君のことを愛していて、サスケ君に愛されて、幸せなのね」
「…そうね。だから、あんたたちのことが気になるのかもしれない」
サクラが、複雑そうに眉を寄せた。なんて言えばいいのか考えているのだろう。
「いのは…いいの?」
「よくないわよ」
「…」
「でも、これでいいの。そりゃあね、愛したらその分愛し返してほしいけど、ムリだもの」
「どうして…」
「ねえ、サクラ。あんた、あの雲を捕まえる方法を知ってる?知らないでしょ。それと同じことなのよ。捕まえようとしても手が届かない。もし、手が届いたとしても、きっとあれはあたしたちの手から…握り締めた指の隙間から、逃れていくような不確かなものなの」
言いながら、自分でも驚いていた。
今まで考えても考えてもわからなかったことが、言葉にすることでストン、と胸の中に落ちてくる。
「手を伸ばしても届かない代わりに、見上げればいつでもそこにあるし、時には強い日差しから守ってくれたりもするの。それに、あれは…誰のものにもならないでしょ?」
「だから…いいの?」
「ええ。だって、…きっと、シカマルはもう誰かを本気で愛することはないもの」
「え?」
「これから先もきっと、生きている人の中であたしのことを一番に想ってくれるわ。だって、そういうヤツだもの。だから、あたしも安心してシカマルを好きでいることができるの」
「…生きている人の中では?」
「そうよ。シカマルが…すべての人の中で、一番に想う人は、別にいるの。それでもかまわない。あたしも、その人のことがすごく好きだったし、それに…今、生きてシカマルのそばにいるのはあたしだもの。ねえ、それってすごいことでしょ」
「…そうね」
サクラは釈然としない顔で、それでも少しだけすっきりした顔で部屋を出て行った。
部屋に一人残ったあたしは、思い出す。
シカマルが、心から幸せそうに笑っていた日のことを。
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