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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Sun 01 , 23:06:36
2012/07
過去ねためもさるべーじ企画

・梵天丸と若い小十郎
・不安定な梵天丸
・梵天丸を守りたい小十郎


ねためもの時点では、さなだてで現代だったのですが、端のほうに「サナダテよりこじゅまさの方がいいかも…」と書かれていたので、こじゅぼんにしてみました。

「なあ、小十郎。世界中が雨だったらどうする?」
 顔の半分を白い布で覆った少年の、年に似合わない聡い表情が痛ましいと思った。

「世界中が…雨、ですか?」
 この質問に意味があるようには思えなかった。けれど、馬鹿らしいと切り捨ててしまうにはあまりにも意味深長な気がして、何よりこんなに冷めた表情の少年の言葉を捨てたくなくて、じっと考える。
「そうですな…」
 ゆっくりと口を開けば、左の大きな冷たい瞳が俺を射る。その瞳からは感情がまったくよめない。まだ十にもならない子どもが浮かべる色ではないだろう。
「雨宿りを致しましょう」
「…ずっとか?」
「止むまでです」
「止むかどうかもわからないのに?」
「止まない雨などありませぬよ」
「一人で?」
「一人では流石に小十郎も寂しゅうございます。…梵天丸様、どうか、梵天丸様の傍で雨止みを待たせてはいただけませんか?」
「梵天の傍で?」
「はい。お嫌ですか?」
「…嫌、ではない」
「それはようございました。梵天丸様が一緒にいてくださるのなら、雨宿りもきっと楽しいものになりましょう」
「そう、か?」
「はい」
「…そう、だな。小十郎が一緒なら、世界中が雨でも、きっと…」

 険しい表情が、ふっと和らいだ。どうやら俺の言葉はこの方に届いたらしい。安堵と共に俺もまた表情を和らげ、僭越な行為だと知りながらもそっと梵天丸様の御髪を撫でて抱き上げる。
「小十郎?」
「御免。…随分、眠たそうな顔をしておいでだ。そろそろ、御休みになられたほうがいい。昨日まで、熱が出ていたのです。まだ無理はなさらないほうがいい」
「ん…。…小十郎、傍にいるか?」
「はい」
「梵天が寝るまで、ずっと?」
「梵天丸様が望まれるのなら、寝てからもずっと傍に」
「…こじゅうろう」
「はい」
「傍に、いろ」
「はい」

 ぎゅっと、俺の着物をつかむ小さな手。ゆだねられた細い肢体。壊れそうな心。
 俺に心を開こうとしてくれる小さな主。
 この傷だらけの少年の、安らげる場所になりたい。

 主を抱き上げる腕にそっと力をこめれば、少しだけ表情が和らいだ気がした。
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更新はまったり遅いですが、徒然なるままに日記やら突発でSSやら書いていく所存ですのでどうぞヨロシク。
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