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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Sat 21 , 12:49:42
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Tue 16 , 21:42:25
2009/06
・サナダテ
・現代
・佐助と政宗が女の子
(ちなみに、真田はでてきません)



「結局のところ、伊達ちゃんにとって旦那ってなんなの?」
モンブランのてっぺんに乗っている栗をフォークでつつきながら佐助が言った。
「Ahー…そうだな」
優雅なしぐさでティーカップをソーサーに戻しながら、政宗がこてりと首をかしげる。
「たとえるなら、コレかな」
白い手がつと皿に添えられた銀色のフォークを取り上げ、クリームにつつまれたケーキの上で輝くイチゴを刺した。
「イチゴ?」
「正確には、『ショートケーキの上に乗ったイチゴ』だな」
同性の佐助でさえ思わず見惚れてしまうような妖艶な笑みを浮かべ、政宗はイチゴの先端に軽く歯を立てた。
「そのココロは?」
政宗の紅い唇に赤いイチゴが収まる様子になんとなく目のやり場に困りながらも、佐助は妙にドキドキして目が離せなかった。


「ないならないでもこのケーキはうまいけど、てっぺんにイチゴが乗ってたらもっとドキドキするし、うまそうに見えるだろ?イチゴの赤がクリームの白を引き立たせてくれる。
それと同じで、あいつのいない人生もそれはそれで悪くはないものなんだろうけど、あいつがいたらもっと楽しいし、もっと幸せになれる。あいつがいるから、人生も悪くない…どころか、いいもんだって思えるんだ」


からかってやろうと思っていたのに、政宗があんまりにも嬉しそうに笑うものだから。
「…お幸せに」
肩をすくめて、来月に式を挙げる親友と、ここにはいない幼馴染で弟のような青年に祝福の言葉を投げることしかできなかった。
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Thu 11 , 00:23:44
2009/06
政宗は母方の親戚からとやかく言われるのがいやだから勉強頑張ってて、成績はトップクラス。
対して幸村はなぜこの学校に入れたのか不思議なくらいギリギリの成績。
そんな二人のテスト前の会話はきっとこんな感じ↓

「政宗殿!」
「Ahー?」
「某、四文字熟語を一つ覚えましたぞ!」
「(一つだけかよ…)どんなだ?言ってみろ」
「“いちにちいちぜん”でござる!」
「一日一善、か。試してみたらどうだ?」
「むぅ、いくら政宗殿のお言葉なれど、某は…」
「?」
「一日に一膳しか食事をいただけぬのであれば、きっと餓死してしまうでござるうぅ」
「…」
「某、朝・昼・晩の三食をきっちり食わねばもちませぬ!」
「………………真田、知ってるか」
「は?」
「“いちにちいちぜん”の類義語に“一汁一菜”っつー言葉もある」
「むむ、それは知らなんだ。さすが政宗殿、博識にござりますな!」
「まあな」

「ちょっとおおぉぉ、うちの旦那にさらっと嘘教えないでくれる!?」(友情出演:佐助)
Sat 30 , 23:02:05
2009/05
もしも生まれ変わったのなら。


・政宗死の直前の独白




そんなこと、考えたこともなかった。現世を生きるのに必死すぎて、ただ、目の前のことしか考えられなかった。



生まれ変わったら、鳥になりたい



だから、今際にもらした言葉に誰より驚いたのは自分自身であった。
倒れて見上げた空を飛ぶ鳥がたまたま目に映ったがゆえの言葉であったのか、それとも意識せぬままずっと願っていたのか。
ただ、何にもとらわれずに飛ぶ鳥はいかにも気持ちよさそうで、かなうのならば血と泥にまみれた戦場ではなくあの青い空を巡ることができたのならきっと幸福なのだろう、と薄れゆく意識の中で思った。

空はどこまでも青く、鳥は大きく羽を広げ、死に満ちたこの地上とはまるで別世界のようだった。




------------




どうやら私は死ねたが好きなようです。読むのならラブラブいちゃいちゃな砂をはくほど甘いお話のほうがすきなのですが、書くのなら死ねたが好きです。あ、戦国の場合は、という注釈つきですが。
あー、でも、好きな作家さんとかの死ねたなら何回でも読みますし何回でも泣きます。そして、甘いだけの話よりもそっちのほうが心に残ります。
まわりから見れば不幸でしかないけれど、本人たちにはこれ以上ないほどの幸福、という終わり方が好きです。一見アンハッピーエンドだけれど本人たちにだけはハッピーエンド。
Sun 10 , 22:01:24
2009/05
・カップリングなし
・佐助と政宗がメイン
・パラレル(現代)で、大学生の春休みな政宗、佐助、幸村、慶次、元親
・思いつきと勢いで書いたので中途半端に終わってます
・史実がだいぶ幅を利かせています





「ほら、ここが醍醐寺!“醍醐の花見”で有名なアレだよー」
「おお、これがあの有名な!!」
「すげぇな…ちょうど満開だ」

去年の春、大学で出会った幸村、佐助、元親、慶次、政宗の5人はせっかく春休みだしどこかに旅行しよう、ということで京都にやってきた。政宗は難色を示したものの一時期京都で暮らしたことのある慶次が案内してくれるというので、結局押し切られる形でくることになったのだ。

率先してはしゃぐことはないが、喜ぶ幸村、元親や張り切って案内をしている慶次を見て目を細める政宗を横目でちらりと見て佐助は首をかしげた。
(どうして政宗は京都に来るのを嫌がったんだろう?)
横暴で粗雑なように見えてなかなかに風流人な政宗が京都を嫌う理由がわからない。確かに春、桜の季節ということで観光客が多く人ごみがきらいな政宗にはしんどいかもしれないが、春休みも終わりがけ、4月にはいってすぐの平日ということもあり覚悟していたよりは人ごみもひどくない。来るときの新幹線の中でも少し浮かない顔をしていたな、と思い心配になる。
(なるべく…気をつけて置こう)



醍醐寺、方広寺、三十三間堂、定番の清水寺に八坂神社。少し早めの夕食をとってから二条城のライトアップを見に行くことにした。
「うわ、ぁ…」
「すごい…」
ライトに照らされた桜は昼の長閑な美しさとは違い、どこか妖艶さも持っている。
「桜の木の下には…ってのも、思わず信じたくなっちゃうね」
隣を歩いていた政宗に話しかけると、桜ではなく城を見ていたらしい政宗が一瞬遅れて反応した。
「えっ、ああ。…ああ、そうだな」
そう言って、改めて桜を見上げる政宗はどこか複雑な表情をしていた。
「?」
(今の政宗。…城を見るっていうか…にらんでた?)


食事は外ですませればいいだろう、ということで素泊まりで予約しておいたホテルは値段の割りにきれいで、温泉もついており各々満足した様子だった。

風呂に入った後は当然のように酒が持ち出され、どんちゃん騒ぎ、とまではいかないがそれなりににぎやかな宴会に突入する。
(あー…これ、片付けるのきっと俺なんだろうな)
すでに酔いつぶれて寝てしまっている幸村。飲み比べをはじめた慶次と元親。政宗は我関せずといった体で窓辺に腰掛けて月と桜を肴に一人ちびちびと酒を干している。


「政宗」
「ん。…佐助か」
「俺にもちょーだい」
「…」
盃を差し出すと無言で注いでくれた。
幸村には布団をかけてきたし、だいぶ酔いがまわっていた元親と慶次には水で薄めた酒の入ったビンを置いてきた。あれだけ酔っていればきっと気づかないだろう。
「おかんは大変だな」
「もー、見てたんなら手伝ってよね」
「やなこった」
鼻で笑って唇を酒で湿らせる姿は美しかった。口でどれだけ生意気なことを言っていても、許してしまえるほどに。浴衣を身に纏い、まだわずかにぬれた髪はしっとりとつややかで、酔いにわずかに上気した白い頬。窓の向こうに見える月と桜も相俟って、一枚の絵のようだった。
そして、その姿は遠い昔に見たものによく似ていた。
「………竜の、旦那」
思わず懐かしい呼び名が口をついた。

「お…まえ」
驚きに目を見開いた表情は思っていたよりもあどけなく、そしてどこか頼りなかった。
(ああ、そうか)
その表情に、佐助はすべてを悟った。政宗が京都を嫌った理由。浮かない表情。城をにらんでいた一瞬の横顔。
「旦那も、覚えてるんだね」
問いかけではなく、確認だった。

力なく伏せられたまぶた。震える長いまつげ。
「…ああ」
400年前の自分。今の自分。
二つの記憶を持って生きているのだ。
「だから、俺は…京都がきらいなんだ」
いい思い出がないから。
そう言って力なく笑った姿は、途方に暮れた幼子のように頼りなく、そして儚げであった。


「俺の知る京とはどこもかしこもかわっちまった。だが、ここは時間の流れが緩やかすぎる。…同じでこそないものの、懐かしい面影が、その色が濃すぎる」
いつの間にか慶次と元親も眠ってしまい、起きているのは二人だけだった。静かな夜に決して大きくない政宗の声が密やかに響く。
「卑屈になるつもりはない。権力者に媚びたことも後悔していない。俺はああすることでしか奥州を守れなかった。ああすることで、奥州を守った。…そう、後悔はしていない。だけどな……」

その頭の回転の速さで秀吉にも家康にも気に入られ重宝された政宗。
しかし、気に入られながらも煮え湯を飲まされ続けたのもまた事実だ。
「この場所に、いい思い出なんか何一つない。ここは俺のいる場所じゃない。…特に、あの城。俺は、あの城が大嫌いだった」
家康、秀忠、家光と三代の将軍それぞれに信をおかれていた政宗はことあるごとにあの城に呼び出され、赴き、さまざまなことを語った。将軍の相談に乗りながらもスキあらば天下を簒奪してやろうと考えていた。
「この場所にいるときは、俺は常に考えていなければならなかった。家康の言葉、自分の立場、天下の行く先、奥州の未来。…ここにいて、心が休まったことなんてなかった気がする」
だから、きらいなのだ。
そう言った政宗は寂しそうに笑った。
Sat 02 , 19:57:20
2009/05
・サナダテ
・戦国と現代の中間。二人とも死んでいて、生まれ変わる前。
・筆頭が筆頭じゃない気がしますが、勢いで書いたから仕方ない。





マイハロー、奥州の皆さん。お元気ですか?
俺はかつてこの国を誰よりも愛したものです。
ハロー、ハロー、お元気ですか?


空は今でも青く澄んでいますか?
山々の緑は今も美しく夕日に照り映えますか?
俺のお気に入りのあの丘は今でも満開の桜を見せてくれますか?

ハロー、ハロー、聞こえますか?

あなたたちは幸せですか?
詳しいことは覚えていないけれど、俺はただそれだけが気がかりなのです。
守りたかったのは俺のちっぽけなプライドではなく、あなたたちの笑顔だったのです。
そのために、戦って戦って、俺は死にました。

ハロー、ハロー、誰か答えてください。教えてください。
ハロー、ハロー。

その国に生まれたあなたは幸せです。
俺はいろいろな国に行きました。
戦うために、守るために、いろいろな国に行きました。
けれど、奥州以上に美しい国はどこにもありませんでした。
俺はこの国を誇りに思います。
マイハロー、あなたはどうですか?




かつて俺に愛を告げた男がいました。
俺はその愛に応えられませんでした。
愛していなかったわけではないのです。
俺だってその男のことを愛していました。とてもとても。
それでも、怖かったのです。
あの男への愛を認めることが、愛するこの国への裏切りのように思えたのです。
俺はこの国への愛を貫き、死にました。
そして時を置かずにあの男もまた死にました。

ハロー、ハロー、あなたは今、どこにいますか?
ハロー、ハロー、俺もあなたを愛しています。
この言葉が届いたのなら、きっと返事をください。
俺はずっと待っています。
ずっとずっと、一緒に桜を見ようと約束したこの場所で待っています。





ハロー、ハロー、マイハ…


「政宗殿」


どうやらお迎えが来たようです。
ずっと会いたかった。


「政宗殿、ずいぶん遅くなってしまい申し訳ございませぬ。…まだ、間に合うでしょうか」


ハロー、ハロー、奥州の皆さん。
お元気ですか?幸福ですか?
俺は今、信じられないほどに幸福です。
桜の季節はすぎてしまったけれど。
俺は本当は春よりも夏のほうが好きなのです。
真夏の太陽のようなこの男が、大好きなのです。


ハロー、ハロー、あなたはどうですか?
ハロー、ハロー。



―――――

イメージは雲がもくもくしてるところにマンホールくらいの穴があって、その淵に膝を着いて必死に下界(=現世)に呼びかけている伊達さん。
そんな伊達さんにそっと近づいて、ぽんぽんと肩をたたいて声をかける真田さん。なんだろうと思って振り返ったら照れくさそうに、でも優しく微笑んだ真田さんがいて、きょとんとした後にふわりと笑う伊達さん。
そんなメルヒェンなイメージで書いた。楽しかった。
Mon 27 , 09:47:59
2009/04
こんにちは。おはようございます。
あー、最近、土日が忙しすぎて週末にパソコンをあまりいじっていない…。そして微妙に体調が悪いので平日も寝る時間が早い…ので、やっぱりパソコンをいじってない。むぅ…どうにかならんもんか。

今月中にもう一回くらい更新したいけど…やっぱり今週末も忙しいので(ついでにゴールデンウィークも忙しい)無理かなあ。
とりあえず、突発的に思い浮かんだ駄文を↓


現代/小学生/幼馴染/真田×伊達/ギャグ?/甘



今までで一番嬉しかったことを書いてください。



今日は小学校の授業参観の日で、国語の授業の課題は作文だった。そのテーマを聞かされて、伊達政宗は固まってしまった。
だって、思い浮かばないのだ。
何があるかな、と考えてもお母さんにぶたれたこととか、右目をなくしてしまった事故とか、政宗のお誕生日なのに忙しくてかまってくれないお父さんのことばっかり思い浮かぶ。今日だって、政宗のお父さんもお母さんも授業参観に来てくれない。
(どうしよう)
嬉しい気持ちって、どんなんだっけ?

だんだん悲しくなってきた政宗はうつむいて、目に涙を浮かべていた。
隣では幼馴染の真田幸村があれこれ言っている。
「やっぱり、御館様に稽古をしてもらったときであろうか」
「佐助の作ってくれた団子を食べるときであろうか」
「それとも、兄上に遊んでもらったとき」
「父上にほめていただいたときも、嬉しかった」
幸村には、数え切れないほど楽しい思い出がある。
どれが一番なのか、自分では決められない。そう思って、隣の席の大好きな幼馴染に相談しようとして、びっくりした。
「ま、まさむねどの…?」
「う…ぅ…」
ぼろぼろと大きな瞳から涙をこぼす政宗に、幸村はびっくりした。
政宗と幸村は同い年だけど、政宗はいつも幸村よりも大人びていてしっかりしていて、いろいろなことを知っていて頭もよかった。
幸村は政宗が大好きだった。だから、泣かないで欲しいと思った。でも、何で泣いているのかがわからないでおろおろしていたら政宗の名前だけしか書かれていない作文用紙が目に入った。

「先生殿!」

政宗の右手をぎゅうっと握り締めて突然立ち上がった幸村に、教室中のみんながびっくりして幸村を見た。

「先生殿、某、できましたぞ!」

自信満々に言うけれど、幸村の作文用紙にはまだ汚い字で名前が書かれているだけだ。
「では、はっぴょうしてください、ゆきむらくん」
謙信先生が優しい声で促す。
びっくりして涙がとまった政宗の、泣いたせいでぐしゃぐしゃの顔を見てにっこり満面の笑みを浮かべた幸村は大きな声で言った。


「某は、御館様に稽古をしてもらうのが大好きです。御館様は一番すごい人だからです。佐助が作ってくれた団子を食べるのも大好きです。某は団子が大好きで、佐助の団子が一番おいしいからです。兄上に遊んでもらうのも大好きです。兄上は某の知らない遊びをたくさん知っています。父上にほめてもらうのも大好きです。某は父上も大好きです。でも…」


幸村は、政宗の手を握った左手にぎゅっと力を込めて、今までよりももっと大きな声で言った。



「でも、某は、政宗殿と一緒に御館様に稽古をしてもらったらもっと楽しいし、佐助の作ってくれた団子も政宗殿と一緒に食べるのが一番おいしいし、兄上だけじゃなくって政宗殿と一緒に遊んだらもっと面白いし、父上にほめてもらうのと同じくらい政宗殿にほめてもらうと嬉しいです。だから、某は、政宗殿が好きです。大好きです。だから、某は、政宗殿と出会えたことが一番嬉しいです。政宗殿は某の一番です!!」



「とても、いいさくぶんですね。ゆきむらくん」
謙信先生は優しく笑いました。
授業参観に来ている幸村のお父さんや御館様もはっはっはと笑っています。政宗は嬉しくって、ぎゅうっと幸村の手を握り返して立ち上がりました。
「お、俺も!」

「俺も、幸村のことが好きです。大好きです。ゆきと一緒にいると嬉しいです。だから、俺も、幸村と会えたのが一番嬉しいです!!」

照れ屋で素直じゃない政宗が一生懸命伝えた言葉に幸村は嬉しくなって、思わず抱きついた。いつもなら暑い、だの邪魔、だの文句を言う政宗もぎゅうっと幸村を抱き返した。
「俺、知ってるぜ!」
突然立ち上がって叫んだ慶次に皆が注目する。皆の視線を浴びて慶次は少し誇らしげに言った。
「そういうの、そーしそーあいって言うんだ。そーしそーあいの二人は、結婚するんだよ!としとまつ姉ちゃんみたいに、ずっと一緒でずっと仲良しになるんだ!!な、とし?」
その言葉に授業参観に来ていた利家とまつが恥ずかしそうに笑う。
「そうだぞぉ、慶次!男なら、惚れた相手を幸せにしてやらなきゃならん!!」
「犬千代様、まつめは大変うれしゅうござります!」



「ゆ、幸村!」
じっと慶次の言葉を聴いていた政宗が不意に幸村を見た。
「政宗殿?」
「俺、ゆきと結婚する!ずっと、ゆきと一緒にいる!!」
政宗の言葉に驚いてぱちぱちと目を瞬かせていた幸村だったが、すぐに満面の笑みに変わり、ずっとつないでいた手はそのままにもう一方の手で政宗を抱きしめた。
「政宗殿おおぉ、某の嫁御になってくだされえええぇぇぇ!!!」
「ゆきむらああぁぁ!」
「まさむねどのおおぉぉおおおぉぉぉ!!」
「ゆきむらああぁぁあああぁぁぁああぁ!!!」
「まさむねどのおおぉぉおおぉぉぉぉおおぉぉおぉ!!!!」




この後の保護者懇談会で、本当の愛を知ることのできるすばらしい授業だった、と謙信の国語は大絶賛されたという。



―――――

最後がグダグダ…。でも、書いてて楽しかった!

この出来事は政宗の幸せな出来事と忘れ去りたい出来事の両方に殿堂入りします。でも、幸村とはずっとラブラブなまま。
Mon 13 , 23:49:28
2009/04
・チカ+ダテ(チカ→ダテ)
・サナダテ出会い数日後
・サナ→←ダテ前提



面白い男を見つけた。


開口一番、独眼竜はそう言った。見たこともないような表情で。
「武田の赤いの、知ってるか?真田幸村っつーやつなんだけどよ」
そう強くもない酒を楽しみながら上機嫌で政宗は笑った。
「あー、甲斐の虎和子だろ?知ってるぜ」
「あいつ、すげえ面白いな。ギラギラした目で俺をにらんでよ、数合打ち合ったら嬉しそうに笑ってなぁ」
酒が入っている、ということもあるだろうが普段の倍は饒舌になっている。へそまがりが信条でいつもなら素直に表情を出そうとしないというのに、今日はニコニコと嬉しそうだ。すでに振られたとは言え、惚れた相手が嬉しそうに笑っているのは俺としてももちろん嬉しい。だらしなく緩んだ口元は政宗を年相応、ひょっとしたらそれよりも幼くみせていて、惚れた欲目かもしれないがやたらかわいらしい。
(けどよぉ)
ばれないようにこっそりとため息をつく。
ほかの男についての話を延々と聞かされる俺の身にもなって欲しいというものだ。しかもついぞ見たことのない極上の笑顔のおまけまでついて。

「なあ、元親」
「あー?」
「俺、見つけたぜ」
何を言いたいのかはすぐにわかった。
「形振り構わずに、夢中になれるもの。奥州王としてではなく、俺自身が全部の理屈をすっ飛ばしてただ欲しいと思えるもの」
「…」
「見つけた。“俺”の心を振るわせるもの」
ひとつきりの独眼が鋭い光を放つ。けれど、その緩んだ口端が喜びを如実にあらわしている。
「俺は、あいつが欲しい」

(俺に言うかよ、それを)
今度はこっそりではなく堂々と嘆息し、それからひょいと手を伸ばしてぽんぽんと頭をなぜてやった。
「よかったな」
政宗はきょとんとした表情をした後にふわりと笑った。
(あ、これ)
これは、あの男―真田幸村に向けられたものではなく、俺に向けられたものだ。長宗我部元親に向けられたものだ。純粋な、笑顔。
それだけで気分の良くなる自分に苦笑する。
だが、考えてみれば政宗が笑顔を惜しみなく振りまいてくれるのも、真田への心情を吐露するのも、俺を信頼してくれているからこそなのだろう。
独眼竜の異名を持つくせに猫のように気まぐれな政宗が俺になついてくれているから、なのだろう。
そう思えばかわいらしいものだ。
「よし!」
一気に上機嫌になった俺はそのままわしゃわしゃと政宗の髪をかき乱すように撫で回して、それから笑って酒を満たした。

「政宗の初恋と俺たちの友情に乾杯!」

政宗が恋じゃないとわめいているのはこの際無視することにする。
Sun 29 , 00:45:02
2009/03
・サナダテ出会い




心がざわめいた。
奥州王としてではない。俺自身の心が、波打つ。
嵐が来た。


「我が名は真田源次郎幸村!命が惜しくば退くがよい!!」


いくさばに響く大音声。
ぞくり、と震えた。
馬首をめぐらせれば赤い衣を纏い二槍を振り回す男が視界に入る。
「っ!」
目が合った。
二人の間にはかなりの距離があり、幾人もの兵が隔てているというのに。
男がニィ、と口端をあげる。
政宗も知らず口元に笑みをうかべる。
(この男は、俺を呼んでいる。奥州王ではない、この俺自身を!)
震えがとまらない。それどころか先ほどよりも強くなっている。
「Let's party!」
小さく、自分に向かってつぶやくと同時に馬を進める。

「真田っつったな」
「如何にも。某は真田源次郎幸村。武田が一番槍!貴殿は」
「俺か?」
馬から飛び降りる。鬣を撫でねぎらってから馬の尻をたたいてこの場から遠ざける。
「俺は…奥州筆頭・伊達政宗」
「!」
すらりと腰に佩いた六振りの刀を抜きかまえる。
「さあ、partyの始まりだ、真田幸村。奥州筆頭・伊達政宗、推して参る!!」


振り下ろした六爪を真田の二槍が受け止める。
かつてないほど心が震える。
ああ、そうだ。きっと俺はこいつを探していた。
眠った俺の心を呼び覚ます存在。
魂の、片割れのようなこの男を捜していた。

だって、震えが止まらない。
この男の声を聞いたその瞬間から、身体も心も震えっぱなしだ。






決着はつかず、引き分け、ということで二人の決闘は終わった。
「チィっ!おい、真田幸村。決着はおあずけだ。次に戦うまで、誰かに勝手に討ち取られたりするんじゃねえぞ」
ピィーッと指を口元に運び高く鳴らす。先ほど逃がした馬が主人のもとに戻ってくると同時にひらりと飛び乗る。
「貴殿こそ!また…何度でも、貴殿と戦いたい。こんなにも熱くなったのは初めてでござる。また会えるのが楽しみだ」
「それは俺の台詞だぜ。次に会うときは、もっと俺を楽しませろよ…?」


そのまま背を向け自陣へと戻る政宗の背を見送りながら、幸村もまた確かな震えを感じていた。
かつて感じたことのない震え、うずき、そして歓喜。それは信玄を生涯の師と仰ぐことを決めた瞬間に感じたものに似ている気もしたが、まったく別のものだった。
幸村は信玄を師とすることを心で決めたが、今、政宗に出会った喜びは魂で感じている。

そうだ、きっと自分はずっと彼を探していたのだ。
彼に出会うために今ここにいるのだ。
鍛錬に明け暮れ、齢17にして武田の一番槍を認められるまでになった。
それは、きっと、心のどこかでこの出会いを望んでいたからだ。
探し続けたものを見つけたような、遠い昔に失くしたものを見つけたような、不思議な感覚。
きっとこれを感じているのは自分だけではない。彼…伊達政宗もそうに違いない。それが証拠に、目が合った瞬間彼は笑ったのだから。

「早く、もう一度会いとうござる。独眼竜…政宗殿」


心が、震える。
君だけが僕を、僕だけが君を、真の意味で満たすことができる。
Sat 28 , 23:59:46
2009/03
・チカ→ダテ
・戦国
・伊達はまだ真田とは出会ってない


愛している、と言われた。
遥か四国から奥州まで攻め込んできて、挙句の果てに意気投合して和睦し同盟を結び友人となった男に。
二人で酒を肴に酌み交わしていたときだった。
明日には奥州を出て四国に帰る、と言われ寂しくなるが仕方ない、と返すと同時に冒頭のセリフを吐かれ、抱きすくめられた。
コトン、と酒が倒れ畳にこぼれる。静かな夜で、庭に鳴く虫たちのかすかな声と触れ合った箇所から伝わる互いの鼓動以外には音のない夜だった。

しばしの間二人を沈黙が包む。
先に焦れたのは元親だった。
「返事をくれ、政宗」
「元親…」
身体を離してうつむいて、少したってから決心したように顔をあげ、ひどく哀しい瞳で政宗が言った。
「俺は、愛が何なのかわからない。そんなものは…もう、とうの昔に捨ててしまった。だから、俺は…わからない。なあ、愛ってなんだ?」
哀しい言葉。胸が締め付けられるように苦しくなって、そっと手を伸ばした。頬に触れても政宗は拒まない。ただ、途方に暮れた幼子のように隻眼を揺らしていた。
「どこぞの宗教人の肩を持つつもりはないが…愛を知らないのは、寂しいことだと思うぜ」
「…捨てなければ、生きていられなかった」
「…」
「愛だけじゃない。俺は、心を…感情を、封じた。傷つくのが怖いから…俺の“個”としての心を…閉じ込めた。ここにあるのは奥州の王としての俺だけだ」
「…不器用なやつだな」
「…」
「不器用で、でも純粋だ。生きるのがつらくはないか?」
「自分をすてて奥州筆頭としてだけ生きると決めたら、呼吸をするのが少しだけ楽になったよ」
「そうか」

もう一度、元親は政宗を抱きしめた。
背が低いわけではないし、細身とはいえ筋肉もしっかりついていて決して女性的ではないのに、今は常以上に政宗が細く儚く感じられた。月光に照らされた横顔は美しく、だからこそ寂しくみえた。
「俺じゃ、だめなんだな」
「…」
「あんたのことを愛してる。だけど、俺じゃああんたの心の封印を解いてやれないんだな」
「…。…でも、あんたのそばは居心地がいい」
「…」
「愛なんてわからない。そんなもの、知らない。だけど…」
躊躇いながらもそっと政宗が元親の背に腕を回した。
「あんたのことは嫌いじゃない。あんたが想ってくれるようには俺はあんたを想えないけど、でも、できればこの先も友人でいたいと思う。あんたのそばは居心地がよくて、少しだけ、自分を思い出せる気がした」
「…そうか」
「うん」
指先に力を込めてきゅっと元親の着物を握る。すがりつくような動作に元親は切なくなった。俺ではこいつの恋人にはなれない。想い人には、なれない。
ならば、せめて。
「また、会いに来てもいいか。…友人として」
「ああ、あんたならいつでも大歓迎だ」
「その言葉忘れんなよ?」
「待ってるぜ。あんたが来るのを」
そう言って政宗はきれいに笑い、元親の唇の端に触れるだけの口付けをした。
「親愛なる西海の鬼殿に」
「は!この性悪独眼竜め」
元親からも、政宗に最初で最後の口付けを。
優しいだけの、親愛のキス。

ならば、せめて。
兄のような存在の友人に。
政宗の眠った心を呼び覚ます存在が現れるまでは親しい友人としてでいい。

そばに在り思い続けることを許して欲しい。

二人を包む静寂が
Sat 28 , 22:55:52
2009/03
・小十郎×政宗
・戦国





「自分がどんなにつらくても苦しくても、無茶をしてでも無理やりでも、皆の前では笑っていようとする、あなたが好きです」



政宗様、呼ばれてどうした、振り向いて微笑した瞬間に抱きすくめられてささやかれた。
まだやることがある、放せ、ともがいても小十郎はびくともしない。

「あなたが笑うのは皆を不安にさせたくないから、知られたくないからなのでしょう。しかし、この小十郎の前でまで笑っている必要はないのです。つらいならつらいと言えばいい、苦しいなら苦しいと言えばいい。小十郎の前では無理をしないでください。この小十郎が気づかないとでもお思いですか?」

わかってる。小十郎には隠し事はできない。俺がちっちゃいころからずっと一緒にいて、俺と一番多くの時間を共有している人。一番近くにいてくれる人、だから。

「無理をするな、とは言いません。時には無茶も必要です。あなたは君主なのだから。けれど、今はそのときではない。私の言っていることがわかりますか?あなたは何でも自分で背負いすぎる。何のために私がいると思っているのですか。それとも小十郎では、信頼に足りませぬか?」

そんなはずはないとわかっていながらわざわざ聞いてくるのだから、小十郎は相当怒っているみたいだ。

「あなたには休息が必要です。小十郎を信頼しているとおっしゃるのなら、残る執務はこの小十郎に任せてしばしお休みください。こんなにふらふらになって…。あなたが笑う。それだけで兵も民も安心できる。それは事実ですが、それは皆があなたを慕っているからです。ですから…」

?何を言いたいのかわからない。
それより、小十郎の腕は大きくて胸は広くて、温かかくて、小さいころのように安心できる。心地いい。いつだってここは俺の居場所だ。守られてる、大事にされてる、触れた箇所から言葉よりも雄弁にそれを教えてくれる。

「皆、あなたを心配してますよ。ここのところ執務室に篭りっぱなしで姿をほとんど見せていないでしょう。ゆっくり寝て、しっかり食事を取って、早くいつものあなたに戻って皆を安心させてください。仕事をなさるのも結構ですが、それ以上にそちらの方が大切でしょう。何せ、そればかりはほかの誰もかわりになすことができないのですから」

言われて、自分がどれほど追い詰められていたのかようやく気づくことができた。数日前に会った母上の言葉とその直後に起こった戦にどれほど心を疲弊させていたのかも。
頼りにされたい、認められたい、嫌われたくない、そればかり考えてがむしゃらに奥州筆頭で在ろうとして、そうすることで逆に心配をかけていた。そんな馬鹿な俺を皆は心配してくれた。
ああ、なんて俺は幸せなんだろう。
そう思ったら急に疲労を自覚して、小十郎の腕の心地よさもあいまって、眠気に襲われた。
「うん。…so sorry………and thank you ver much」
謝罪の言葉も感謝の言葉も照れくさくて言葉にし慣れないから、異国の言葉で告げた。きっと小十郎ならわかってくれる、と思うから。




こてん、と俺の腕の中でそのまま寝入ってしまった主の年相応に幼い寝顔をそっと覗き込み、嘆息する。まったく無茶ばかりをするお方だ。戦場でならば常にそばに在り続けてその背を守ることもできようが、追い詰められた心に気づくことも守ることもひどく難しい。政宗様は自分を隠すことがうまいから、気を抜くと皆だまされてしまう。過去に負った心の傷が今でも政宗様を苛んで毒のようにじわじわと苦しめている。
「どうか、自分で自分を傷つけることだけはやめていただきたい。…そればかりは、この小十郎にも守れないのですから……」
信頼してくれている。心を許してくれてる。
だから知っている心の傷。だから踏み出せない心の闇。
完全にふさぐことはできないのかもしれない。けれど、せめてそれならば隠さないで欲しい。
肉体ばかりではなく、心が、魂がともにあることを許して欲しい、と思う。

「あなたが皆を思う以上に皆はあなたを思っております。この小十郎があなたを思う思いも、あなたが私を思う思いに負けてはいないのですよ」
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