白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
Thu 08 , 00:31:36
2008/05
静かな夜。
見上げた空には無二と定めた主のもつ兜の前立てのような見事な弓張り月。
久方ぶりに笛を手にしながら、小十郎はそっと己に問いかけた。
(政宗様の望むものは?)
天下がほしい。
(あの方はどんな世を望む?)
民が、幸福になれる世にしたい。
田をあらされることも、戦におびえることもなく、笑っていられるような世がほしい。
(そのための、あの方の決意)
どれほどの血でこの手をそめようとも、かまわない。
必要とあればこの命すらささげよう。
己のためには何も望まない。
ただ、大切なものを守りたい。
笑っていて、ほしい。
そのためならば修羅ともなろう。
(じゃあ、俺の望むものは?)
政宗様の願いがかなうこと。
政宗様が、天下を手に入れること。
(その暁にはどんな世を望む?)
太平の世。
政宗様が笑っていられるような。
心を殺して修羅の道を逝かなくてもよいような。
あの方が、幸福を思い出すことのできる世がほしい。
(そのための、俺の決意)
あの方が修羅になるというのなら、俺は鬼になろう。
あの方に刃を向けるすべてが俺の敵。
いくらでも、殺してみせよう。
苦しみも悲しみも、決して一人で負わせたりしない。
竜の右目の名に恥じぬよう、最後まであの方と同じものを見つめていたい。
最後まで、そばにいたい。
あの方を一人になどしない。
何があろうとも、俺は、あの方を守ってみせる。
変わらない決意、揺らがない道を確認し、満足しながら笛を吹く。
凛と澄んだ夜の空気に煌々と光る弓張り月。
主への、ありったけの思いをこめて奏でる横笛。
(昔から、これからも、変わることはない。すべては、あの方のために。あの方のためだけに)
見上げた空には無二と定めた主のもつ兜の前立てのような見事な弓張り月。
久方ぶりに笛を手にしながら、小十郎はそっと己に問いかけた。
(政宗様の望むものは?)
天下がほしい。
(あの方はどんな世を望む?)
民が、幸福になれる世にしたい。
田をあらされることも、戦におびえることもなく、笑っていられるような世がほしい。
(そのための、あの方の決意)
どれほどの血でこの手をそめようとも、かまわない。
必要とあればこの命すらささげよう。
己のためには何も望まない。
ただ、大切なものを守りたい。
笑っていて、ほしい。
そのためならば修羅ともなろう。
(じゃあ、俺の望むものは?)
政宗様の願いがかなうこと。
政宗様が、天下を手に入れること。
(その暁にはどんな世を望む?)
太平の世。
政宗様が笑っていられるような。
心を殺して修羅の道を逝かなくてもよいような。
あの方が、幸福を思い出すことのできる世がほしい。
(そのための、俺の決意)
あの方が修羅になるというのなら、俺は鬼になろう。
あの方に刃を向けるすべてが俺の敵。
いくらでも、殺してみせよう。
苦しみも悲しみも、決して一人で負わせたりしない。
竜の右目の名に恥じぬよう、最後まであの方と同じものを見つめていたい。
最後まで、そばにいたい。
あの方を一人になどしない。
何があろうとも、俺は、あの方を守ってみせる。
変わらない決意、揺らがない道を確認し、満足しながら笛を吹く。
凛と澄んだ夜の空気に煌々と光る弓張り月。
主への、ありったけの思いをこめて奏でる横笛。
(昔から、これからも、変わることはない。すべては、あの方のために。あの方のためだけに)
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Tue 29 , 22:41:49
2008/04
俺はずっとその人に触れたかったのだと、その時ようやく気がついた。
戦場において誰よりも美しく俺をひきつけるその人にずっと焦がれていた。刃を交わせば心ごと体は熱くたぎり、この時が永久に続けばと祈り、平時においては…己でさえ気付かぬままに彼の人を思い続ける。
一国を武人としては細いその双肩に背負い、その重みに惑いながらも尚真っ直ぐに笑い続けるその人は、俺の知る誰よりも美しかった。
多くのものに愛され、そして多くのものを愛する彼が自分だけをその隻眼に映し、そしてひどく楽しそうに笑うあの瞬間は掛け替えのないものだった。
いつしか、戦場での逢瀬を待ちわびるのは刃を交わすためばかりではなくなっていた。
だから、あの人がずっと、頑是ない幼子のように愛を求めて泣いているのだと気付いた時、おそらくは本人でさえ意図せずに伸ばされていたであろう手をためらいなくとった。途端に怯えて竦む彼がひどく愛しかった。
「―お慕いしております」
自分でも驚くほどするりとその言葉は零れた。
小刻みに震える唇が。
忙しなく瞬く隻眼が。
頼りなく彷徨う両腕が。
どうしようもないほどに愛しくて、俺はただその美しく儚い人を抱き締める事しかできなかった。
この腕の中に閉じ込めて二度と放したくないと願った。
「どうか、お側に…」
ささやく声が低くかすれ、それにすらびくりと反応するその細い肢体。ふうわりと甘やかな香が鼻をかすめる。
「政宗殿」
天上の竜を我がものにできたらそれはどれほど幸福であろう。否、それがかなわずとも構わない。ただこの愛しい竜がその身を我が元で休めてくれるのなら。
「ゆき、むら…」
呆然とした声で呼ばれた我が名に思わず笑みを浮かべる。
「はい」
手を伸ばす。
白い頬に触れ、彼が何か言うより早く口付けた。
「…っ」
愛しい、片目の竜。
その心が凍て付かぬよう守りたい。我が紅蓮の炎で温めたい。
一人ではないと、ここにいると、何度でも教えてやりたい。
愛していると、伝えたい。
「怯えないでくだされ」
「怯えてなんか…」
「怖がらないでくだされ。某は、決してそなたを傷つけませぬ故」
「…」
長い沈黙があった。
気まずいとは思わない。彼は俺の手を拒まなかったし抱き締めた箇所から伝わる熱は心地よかった。微かに早い鼓動が聞こえる気がするのも嬉しい。
「…」
独眼竜の、戦場では決して迷わない両腕がためらいながら背に伸びる。
ぎゅ、と。
背で着物を握り締める仕種は抱き返すと言うよりもしがみつくと言った方がよいもので。
それが、余計に愛しかった。
戦場において誰よりも美しく俺をひきつけるその人にずっと焦がれていた。刃を交わせば心ごと体は熱くたぎり、この時が永久に続けばと祈り、平時においては…己でさえ気付かぬままに彼の人を思い続ける。
一国を武人としては細いその双肩に背負い、その重みに惑いながらも尚真っ直ぐに笑い続けるその人は、俺の知る誰よりも美しかった。
多くのものに愛され、そして多くのものを愛する彼が自分だけをその隻眼に映し、そしてひどく楽しそうに笑うあの瞬間は掛け替えのないものだった。
いつしか、戦場での逢瀬を待ちわびるのは刃を交わすためばかりではなくなっていた。
だから、あの人がずっと、頑是ない幼子のように愛を求めて泣いているのだと気付いた時、おそらくは本人でさえ意図せずに伸ばされていたであろう手をためらいなくとった。途端に怯えて竦む彼がひどく愛しかった。
「―お慕いしております」
自分でも驚くほどするりとその言葉は零れた。
小刻みに震える唇が。
忙しなく瞬く隻眼が。
頼りなく彷徨う両腕が。
どうしようもないほどに愛しくて、俺はただその美しく儚い人を抱き締める事しかできなかった。
この腕の中に閉じ込めて二度と放したくないと願った。
「どうか、お側に…」
ささやく声が低くかすれ、それにすらびくりと反応するその細い肢体。ふうわりと甘やかな香が鼻をかすめる。
「政宗殿」
天上の竜を我がものにできたらそれはどれほど幸福であろう。否、それがかなわずとも構わない。ただこの愛しい竜がその身を我が元で休めてくれるのなら。
「ゆき、むら…」
呆然とした声で呼ばれた我が名に思わず笑みを浮かべる。
「はい」
手を伸ばす。
白い頬に触れ、彼が何か言うより早く口付けた。
「…っ」
愛しい、片目の竜。
その心が凍て付かぬよう守りたい。我が紅蓮の炎で温めたい。
一人ではないと、ここにいると、何度でも教えてやりたい。
愛していると、伝えたい。
「怯えないでくだされ」
「怯えてなんか…」
「怖がらないでくだされ。某は、決してそなたを傷つけませぬ故」
「…」
長い沈黙があった。
気まずいとは思わない。彼は俺の手を拒まなかったし抱き締めた箇所から伝わる熱は心地よかった。微かに早い鼓動が聞こえる気がするのも嬉しい。
「…」
独眼竜の、戦場では決して迷わない両腕がためらいながら背に伸びる。
ぎゅ、と。
背で着物を握り締める仕種は抱き返すと言うよりもしがみつくと言った方がよいもので。
それが、余計に愛しかった。
Fri 25 , 22:28:17
2008/04
ひらひらと舞い散る薄紅の花弁は、痛みに耐えかねたあなたの涙のよう。
いや、事実としてこれは涙なのだろう。
泣くことのできないあなたの、涙なのだろう。
たくさんの人を殺した。
たくさんの人を傷つけた。
それでも手に入れたいものがあった。
たくさんのものを失った。
たくさんのものを奪われた。
それでも守りたいものがあった。
自分が正しいのかどうか、なんて。
そんなことは知りたくなかった。
「真田…幸村」
名の刻まれない墓の前で無二と定めた男の名を呼ぶ。
馬鹿な男だった。
落陽を迎えた豊臣が負けるのはあまりにも明らかなことであったのに、義を貫くために戦い、戦い、そして死んだ。
明るい笑顔。
まっすぐなまなざし。
俺とは正反対の太陽のような男。
あいつらしいといえばあまりにもあいつらしい生き様、死に様。
それでも俺はあいつに死んでほしくなかった。
生きていてほしかった。
「この大馬鹿野郎」
昔のように一対一で死合うことができなくてもかまわなかった。
そこにいてくれるだけで十分だった。
あいつは、俺の導だった。
あいつと向き合うことができるように、俺は俺にもあいつにも恥じない自分でいられた。
あの瞳に揺るがずに俺の姿が映し出されているのがうれしかった。
「決着もついてねえのに、死にやがって」
幸村は家康に嫌われていたから、堂々と墓を作ることさえできない。
そもそも、俺はあいつから見れば敵武将。
俺なんかに弔われてもうれしくなんてないかもしれない。
それでも、俺は…。
「…好き、だった」
一緒にいた時間なんていくさばでのほんのわずかな瞬間。
穏やかなときをともにすごしたことなんてなかった。
それでも、まっすぐな瞳に、燃えるような魂に、どうしようもなく魅せられとらわれた。
どうしようもなく馬鹿でガキで、それでも自分の信じるものを貫くことのできる強さがまぶしかった。
俺も、あんなふうに生きたかった。
迷いなどないように見えたし、自分のとるべき道を知っているように見えた。
その潔さが、まぶしかった。
一緒に、生きていきたかった。
はらはらと薄紅の花弁が落ちる。
それは痛みに耐えかねたあなたの涙のよう。
誰よりもやさしいのに心を殺して生きてゆく、あなたの涙のよう。
(泣かないで下され、政宗殿)
いや、事実としてこれは涙なのだろう。
泣くことのできないあなたの、涙なのだろう。
たくさんの人を殺した。
たくさんの人を傷つけた。
それでも手に入れたいものがあった。
たくさんのものを失った。
たくさんのものを奪われた。
それでも守りたいものがあった。
自分が正しいのかどうか、なんて。
そんなことは知りたくなかった。
「真田…幸村」
名の刻まれない墓の前で無二と定めた男の名を呼ぶ。
馬鹿な男だった。
落陽を迎えた豊臣が負けるのはあまりにも明らかなことであったのに、義を貫くために戦い、戦い、そして死んだ。
明るい笑顔。
まっすぐなまなざし。
俺とは正反対の太陽のような男。
あいつらしいといえばあまりにもあいつらしい生き様、死に様。
それでも俺はあいつに死んでほしくなかった。
生きていてほしかった。
「この大馬鹿野郎」
昔のように一対一で死合うことができなくてもかまわなかった。
そこにいてくれるだけで十分だった。
あいつは、俺の導だった。
あいつと向き合うことができるように、俺は俺にもあいつにも恥じない自分でいられた。
あの瞳に揺るがずに俺の姿が映し出されているのがうれしかった。
「決着もついてねえのに、死にやがって」
幸村は家康に嫌われていたから、堂々と墓を作ることさえできない。
そもそも、俺はあいつから見れば敵武将。
俺なんかに弔われてもうれしくなんてないかもしれない。
それでも、俺は…。
「…好き、だった」
一緒にいた時間なんていくさばでのほんのわずかな瞬間。
穏やかなときをともにすごしたことなんてなかった。
それでも、まっすぐな瞳に、燃えるような魂に、どうしようもなく魅せられとらわれた。
どうしようもなく馬鹿でガキで、それでも自分の信じるものを貫くことのできる強さがまぶしかった。
俺も、あんなふうに生きたかった。
迷いなどないように見えたし、自分のとるべき道を知っているように見えた。
その潔さが、まぶしかった。
一緒に、生きていきたかった。
はらはらと薄紅の花弁が落ちる。
それは痛みに耐えかねたあなたの涙のよう。
誰よりもやさしいのに心を殺して生きてゆく、あなたの涙のよう。
(泣かないで下され、政宗殿)
Tue 22 , 22:18:01
2008/04
やばい、政宗様かわいすぎる…!
BA/SA/RAじゃないけど、サナダテ語りなので分類はここにしときます。
お友達に借りまして、B/RA/VE10を読みました!なんだ、あの政宗様。銀の長髪とか、やばい。美人だ。誘ってるとしか思えない。
女好きな真田もナイスです。あのオッサンいいな。政宗様よりも真田のほうが年上がいいな。うん。
で、ここでもやっぱりサナダテを妄想します。
えーっと、状況的には…とにかく出会った二人が、なんだかんだ言いつつも「家康が気に入らない」ということでとりあえず手を結ぶことになって、政宗様が上田を訪れた?(←きくなよ)
とりあえず、まだくっついてはいないはず。
「真田!」
縁側でいつものようにくつろぎながら煙管をふかしていたら、すぱん、と小気味のいい音を立ててふすまをあけ、伊達が現れた。
「あー?」
「ここの食材、すげえな!俺んとこじゃとれないようなもんが大量にある!!」
「ああ、そうか?」
ずかずかと遠慮なく俺に近づき、目の前に座り込むとガキみたいにキラキラした目と満面の笑顔で楽しそうに顔を覗き込んでくる。
白い頬が興奮して紅潮してるのがかわいいっつーか色っぽいっつーか、とにかくそそる。もともと整った顔をしているのと、普段は腹が立つくらい自信満々で上から目線のやつがこういう表情をしてるせいで、そのギャップにかなりぐっとくる。
(やばい、押し倒してえ)
俺は自他共に認める女好きだし、女にしか興味がないはずだが伊達は、別だ。
こいつなら、男でもイケる。むしろ、押し倒してあんあん啼かせて俺に縋りつかせたい。やばい。すっげー好みのタイプだ。ど真ん中だ。
「なあ、厨房借りてもいいか!?あんないい食材見てたらじっとしてらんねーよ!」
「厨房って…おまえ、料理できるのか?」
「おう!料理は俺の趣味の一つだ」
自慢げに胸をはる仕草とか、やばい。なんだ、こいつ。こんな表情もできるのかよ。いや、まじでかわいい。
「ふーん」
許可がでるのを今か今かと待ちかねてそわそわする仕草とか、焦らしたくなるなあ。
「いいぜ」
「ホントか!」
たったの一言でぱっと顔が輝く。その表情は反則だろ。
「ただし」
「チッ、条件付かよ」
「舌打ちすんなよ、聞こえてるぜ。…俺にキスしたら、な」
本当にキスをするとは思わなかった。そりゃ、やってくれりゃそれが一番嬉しいが、怒った顔を見るのも楽しそうだし、恥ずかしがって顔を真っ赤にしたりなんかしたら押し倒すつもりだったし(すぐ隣には六郎がいるが、それは気にしないことにする)。
だから、
「りょーかい」
躊躇わずに口付けられたとき、一瞬反応できなかった。
「っ!」
「んーっ…」
が、まあ、こちらも伊達に(洒落じゃないぞ)場数を踏んでるわけじゃない。
すぐに正気に戻って伊達の頭に手を回してせっかくの伊達との口付けを堪能することにした。
「んーっ、…ふっ、ぁ…!?」
突然深くなった口付けに伊達が暴れるが、そんなものは些細なこと。
隣で六郎がすごい顔をしているのも気にならない。
(何でも言ってみるもんだな)
伊達の唇は意外に柔らかい。舌を差し込むと逃げようとするけれど、追いかけて見つけ出して絡めて吸う。
「んっ」
うわ、すげえ下半身にクる声。
「失礼します、うちの殿がこちらに…!?」
開けっ放しだったふすまから礼儀正しく現れたのは、伊達の腹心だ。
(チッ、邪魔なヤツが)
一瞬そちらに気を取られた隙に、されるがままだった伊達が今度は自分から舌を絡めてきた。
(おっ?)
「んぅ…ぁ…、っ」
手もいつの間にか俺の背中に回されていて、まるで抱き合っているかのような体勢になっている。
「殿!真田殿!!」
片倉が叫ぶと同時に唇を離し、不満そうに伊達は片倉をにらんだ。
「なんだよ、いいとこだったのに」
「なんだよ、じゃないでしょうが!何やってんですか、あなたは」
「何って、…キスだろ?」
同意を求めるようにこっちを見て小さく首を傾げる。その拍子に長い銀の髪がさらりと流れた。さっきも思ったが、こいつの髪はキレイだ。思わず手にとって口付けたくなる。
「そうだな、キスだ」
欲求を我慢せずに行動に移す。銀の髪をひとふさ手にとって口付け、面白そうにそれを眺める伊達にもう一度軽く音を立ててキスをした。
「だから、どうしてそんな流れに!」
「だって…」
「だって、なんですか?」
「キスしたら、厨房使わせてくれるって」
いや、上目遣いはマジでやばいから。無意識でこれって、どんなんだよ。やっべえ、これはクる。
「だったら、どうしてあんなに激しいキスしてたんですか!」
「んー、普通にこういう」
そう言って、おもむろに伊達は俺にキスをした。今俺がやったみたいな軽いやつ。片倉の悲鳴が聞こえた気がしたが、気にしない。
「軽いやつですまそうと思ったんだけど、真田が舌絡めてきたし。やられっぱなしは俺の趣味じゃねえからな。反撃した」
ああ、なんだよその思考。やられたらやり返すって。どこの子どもだおまえ、かわいいじゃねえかこのヤロウ。
「な、厨房借りていいんだよな?」
「ああ。食材もなんでも好きなもん使え」
「よっしゃ!今日の晩飯は楽しみにとけよ、俺がうまいもん作ってやるから!!」
再び満面の笑顔ですっくと立ち上がって、急ぎ足で部屋を出て行く。
おい、片倉は放置かよ。
っつーか、あー、マジでいいな、あいつ。本気になりそう。すっげえ欲しい。男に欲情するとかありえねえって思ってたけど、撤回するわ。うん。あ、でも伊達以外の男は謹んでご辞退申し上げるけどな。
さて、どうやって伊達を堕とすか。
…なーんて考える前に、とりあえず目の前の片倉と六郎をどうすっかな。
BA/SA/RAじゃないけど、サナダテ語りなので分類はここにしときます。
お友達に借りまして、B/RA/VE10を読みました!なんだ、あの政宗様。銀の長髪とか、やばい。美人だ。誘ってるとしか思えない。
女好きな真田もナイスです。あのオッサンいいな。政宗様よりも真田のほうが年上がいいな。うん。
で、ここでもやっぱりサナダテを妄想します。
えーっと、状況的には…とにかく出会った二人が、なんだかんだ言いつつも「家康が気に入らない」ということでとりあえず手を結ぶことになって、政宗様が上田を訪れた?(←きくなよ)
とりあえず、まだくっついてはいないはず。
「真田!」
縁側でいつものようにくつろぎながら煙管をふかしていたら、すぱん、と小気味のいい音を立ててふすまをあけ、伊達が現れた。
「あー?」
「ここの食材、すげえな!俺んとこじゃとれないようなもんが大量にある!!」
「ああ、そうか?」
ずかずかと遠慮なく俺に近づき、目の前に座り込むとガキみたいにキラキラした目と満面の笑顔で楽しそうに顔を覗き込んでくる。
白い頬が興奮して紅潮してるのがかわいいっつーか色っぽいっつーか、とにかくそそる。もともと整った顔をしているのと、普段は腹が立つくらい自信満々で上から目線のやつがこういう表情をしてるせいで、そのギャップにかなりぐっとくる。
(やばい、押し倒してえ)
俺は自他共に認める女好きだし、女にしか興味がないはずだが伊達は、別だ。
こいつなら、男でもイケる。むしろ、押し倒してあんあん啼かせて俺に縋りつかせたい。やばい。すっげー好みのタイプだ。ど真ん中だ。
「なあ、厨房借りてもいいか!?あんないい食材見てたらじっとしてらんねーよ!」
「厨房って…おまえ、料理できるのか?」
「おう!料理は俺の趣味の一つだ」
自慢げに胸をはる仕草とか、やばい。なんだ、こいつ。こんな表情もできるのかよ。いや、まじでかわいい。
「ふーん」
許可がでるのを今か今かと待ちかねてそわそわする仕草とか、焦らしたくなるなあ。
「いいぜ」
「ホントか!」
たったの一言でぱっと顔が輝く。その表情は反則だろ。
「ただし」
「チッ、条件付かよ」
「舌打ちすんなよ、聞こえてるぜ。…俺にキスしたら、な」
本当にキスをするとは思わなかった。そりゃ、やってくれりゃそれが一番嬉しいが、怒った顔を見るのも楽しそうだし、恥ずかしがって顔を真っ赤にしたりなんかしたら押し倒すつもりだったし(すぐ隣には六郎がいるが、それは気にしないことにする)。
だから、
「りょーかい」
躊躇わずに口付けられたとき、一瞬反応できなかった。
「っ!」
「んーっ…」
が、まあ、こちらも伊達に(洒落じゃないぞ)場数を踏んでるわけじゃない。
すぐに正気に戻って伊達の頭に手を回してせっかくの伊達との口付けを堪能することにした。
「んーっ、…ふっ、ぁ…!?」
突然深くなった口付けに伊達が暴れるが、そんなものは些細なこと。
隣で六郎がすごい顔をしているのも気にならない。
(何でも言ってみるもんだな)
伊達の唇は意外に柔らかい。舌を差し込むと逃げようとするけれど、追いかけて見つけ出して絡めて吸う。
「んっ」
うわ、すげえ下半身にクる声。
「失礼します、うちの殿がこちらに…!?」
開けっ放しだったふすまから礼儀正しく現れたのは、伊達の腹心だ。
(チッ、邪魔なヤツが)
一瞬そちらに気を取られた隙に、されるがままだった伊達が今度は自分から舌を絡めてきた。
(おっ?)
「んぅ…ぁ…、っ」
手もいつの間にか俺の背中に回されていて、まるで抱き合っているかのような体勢になっている。
「殿!真田殿!!」
片倉が叫ぶと同時に唇を離し、不満そうに伊達は片倉をにらんだ。
「なんだよ、いいとこだったのに」
「なんだよ、じゃないでしょうが!何やってんですか、あなたは」
「何って、…キスだろ?」
同意を求めるようにこっちを見て小さく首を傾げる。その拍子に長い銀の髪がさらりと流れた。さっきも思ったが、こいつの髪はキレイだ。思わず手にとって口付けたくなる。
「そうだな、キスだ」
欲求を我慢せずに行動に移す。銀の髪をひとふさ手にとって口付け、面白そうにそれを眺める伊達にもう一度軽く音を立ててキスをした。
「だから、どうしてそんな流れに!」
「だって…」
「だって、なんですか?」
「キスしたら、厨房使わせてくれるって」
いや、上目遣いはマジでやばいから。無意識でこれって、どんなんだよ。やっべえ、これはクる。
「だったら、どうしてあんなに激しいキスしてたんですか!」
「んー、普通にこういう」
そう言って、おもむろに伊達は俺にキスをした。今俺がやったみたいな軽いやつ。片倉の悲鳴が聞こえた気がしたが、気にしない。
「軽いやつですまそうと思ったんだけど、真田が舌絡めてきたし。やられっぱなしは俺の趣味じゃねえからな。反撃した」
ああ、なんだよその思考。やられたらやり返すって。どこの子どもだおまえ、かわいいじゃねえかこのヤロウ。
「な、厨房借りていいんだよな?」
「ああ。食材もなんでも好きなもん使え」
「よっしゃ!今日の晩飯は楽しみにとけよ、俺がうまいもん作ってやるから!!」
再び満面の笑顔ですっくと立ち上がって、急ぎ足で部屋を出て行く。
おい、片倉は放置かよ。
っつーか、あー、マジでいいな、あいつ。本気になりそう。すっげえ欲しい。男に欲情するとかありえねえって思ってたけど、撤回するわ。うん。あ、でも伊達以外の男は謹んでご辞退申し上げるけどな。
さて、どうやって伊達を堕とすか。
…なーんて考える前に、とりあえず目の前の片倉と六郎をどうすっかな。
Mon 17 , 01:12:23
2008/03
突発的に書いてみました。
「意外だったな」
政宗が、幸村と付き合っているのだと小十郎に告げた日。
小十郎は幸村に「政宗様を泣かせたら命はないと思え」と言っただけだった。
今夜は政宗は幸村の家に泊まるらしく、既に二人は帰ってしまった。
成り行きで同席したまま、なんとなく退出するタイミングを逃してしまった佐助はぽつりと呟いた。
「ああ?」
ぎろりとにらまれて苦笑する。
もともと迫力のある男前ではあるが頬の傷跡のせいでヤクザにしか見えない。
「もっと反対するかと思ってた。二人のこと」
「…」
茶器を片付けて戸締りをしながら小十郎はため息をついた。
「あの方は…」
「うん?」
「昔から、殻を作ってしまうところがおありだった」
小十郎の言う“昔”がいつのことか、佐助にはわかった。
佐助と小十郎はいわゆる前世の記憶というものを持っている。
そして、その上で今生でもかつての主を求めた。
小十郎は政宗を。
佐助は幸村を。
決して恋愛感情ではなく、無二の主として戴く。
今の彼らがかつての彼らと同じではないこともわかっている。
だが、小十郎にとっても佐助にとってもそんなことは些細なことだった。
相違点を数え上げればきりがない。
しかし、根本が変わっていないのだ。
政宗は相変わらず寂しがりで意地っ張りで、でも誰よりもやさしいし人で、、幸村もあいかわらず熱くて真っ直ぐに迷いなく誠実な男だった。
政宗も幸村も前世の記憶など持ち合わせていないけれど、そんなものは小十郎と佐助がわかっていれば十分なこと。
いつの時代でも、どこにいても、誰よりも大切で幸せになって欲しい人。
それだけで、十分だった。
「無意識のうちに、他人を拒絶してしまう。簡単に、他人を世界の外に締め出してしまう。当たり障りのない態度で一人になろうとする。それが、俺はずっと悲しかった」
「でも、片倉サンがいたでしょ」
「俺は、最初からあの方の世界の“中”にいた。これまでもこれからも俺にとってもっとも優先すべきはあの方で、決して裏切らないと誓えるが、それではダメなんだ。おまえには、わかっているだろう?」
「…」
「“外”から、あの方の世界を開く存在が必要だった。前世で、おまえの主がそうしたようにな。生まれ変わって、記憶を失ってもあの方が真田を選び、真田もあの方を選んだ。そして、真田ならあの方の世界を開くことができる。…反対する、理由がないな」
「そっか」
そっと微笑む。
小十郎の政宗に対する深い思い。
それは形が違っても根っこのところでは佐助が幸村に抱く思いと同じだ。
そんな風に政宗が愛されていることが、政宗の友人として嬉しかった。
そして、幸村を主とする佐助にとって、幸村を認めてもらっていることも嬉しかった。
「幸せに、なれるといいね」
「…」
「戦乱の時代が終わった今なら、あの二人でも幸せになることができる」
「ああ」
「あの二人が幸せになれるんだったら、俺はなんだってしますよ」
きっと小十郎も同じ思いのはずだ、と確信しながら笑うと、小十郎もふっと表情を和らげた。
「さて、と」
上着を手に取りながら小十郎が佐助を見る。
「メシ食いに行くぞ」
「へ?」
「どうせ、今夜は帰ったところであの二人に邪魔者扱いされるだけだろ。ついでだ。泊まってけ」
思いがけない申し出に呆然とする。
「猿飛?」
「え、あ、はい。…えっと、じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらいます」
「ああ」
「じゃあ、さっさと行くぞ」
「はい」
―――――――
政宗は母親に愛されなかったトラウマとかから他人と接するのが苦手。でも、立場とかもあってそうもいってられない。で、結局あたりさわりなく人と付き合っていく。深いところには立ち入らないし立ち入らせない。見えない壁をまわりにつくってしまう。
小十郎は最初から壁の中にいる人。中からは、決して壊せない壁。だって、ムリに壁を壊せば政宗を傷つけて、悪くすれば壊してしまうから。
幸村は壁の外にいる人。コンコンと壁を叩いて、少しずつ政宗の世界を開いていくことができる人。佐助も外にいるけれど、自分も心に闇があるから政宗に何も言えない。
だから、小十郎と佐助は最初から傍観者にしかなれない。
前世の記憶を持っていることもそれに拍車をかける。
できることは、二人が幸せになれるように極力邪魔者を排除するだけ。
とは言っても、小十郎さんは幸村のことを認めているけれど、やっぱり気に食わないとは思っていますよ。だって、大事な殿をさらっていっちゃうんだもん!
「意外だったな」
政宗が、幸村と付き合っているのだと小十郎に告げた日。
小十郎は幸村に「政宗様を泣かせたら命はないと思え」と言っただけだった。
今夜は政宗は幸村の家に泊まるらしく、既に二人は帰ってしまった。
成り行きで同席したまま、なんとなく退出するタイミングを逃してしまった佐助はぽつりと呟いた。
「ああ?」
ぎろりとにらまれて苦笑する。
もともと迫力のある男前ではあるが頬の傷跡のせいでヤクザにしか見えない。
「もっと反対するかと思ってた。二人のこと」
「…」
茶器を片付けて戸締りをしながら小十郎はため息をついた。
「あの方は…」
「うん?」
「昔から、殻を作ってしまうところがおありだった」
小十郎の言う“昔”がいつのことか、佐助にはわかった。
佐助と小十郎はいわゆる前世の記憶というものを持っている。
そして、その上で今生でもかつての主を求めた。
小十郎は政宗を。
佐助は幸村を。
決して恋愛感情ではなく、無二の主として戴く。
今の彼らがかつての彼らと同じではないこともわかっている。
だが、小十郎にとっても佐助にとってもそんなことは些細なことだった。
相違点を数え上げればきりがない。
しかし、根本が変わっていないのだ。
政宗は相変わらず寂しがりで意地っ張りで、でも誰よりもやさしいし人で、、幸村もあいかわらず熱くて真っ直ぐに迷いなく誠実な男だった。
政宗も幸村も前世の記憶など持ち合わせていないけれど、そんなものは小十郎と佐助がわかっていれば十分なこと。
いつの時代でも、どこにいても、誰よりも大切で幸せになって欲しい人。
それだけで、十分だった。
「無意識のうちに、他人を拒絶してしまう。簡単に、他人を世界の外に締め出してしまう。当たり障りのない態度で一人になろうとする。それが、俺はずっと悲しかった」
「でも、片倉サンがいたでしょ」
「俺は、最初からあの方の世界の“中”にいた。これまでもこれからも俺にとってもっとも優先すべきはあの方で、決して裏切らないと誓えるが、それではダメなんだ。おまえには、わかっているだろう?」
「…」
「“外”から、あの方の世界を開く存在が必要だった。前世で、おまえの主がそうしたようにな。生まれ変わって、記憶を失ってもあの方が真田を選び、真田もあの方を選んだ。そして、真田ならあの方の世界を開くことができる。…反対する、理由がないな」
「そっか」
そっと微笑む。
小十郎の政宗に対する深い思い。
それは形が違っても根っこのところでは佐助が幸村に抱く思いと同じだ。
そんな風に政宗が愛されていることが、政宗の友人として嬉しかった。
そして、幸村を主とする佐助にとって、幸村を認めてもらっていることも嬉しかった。
「幸せに、なれるといいね」
「…」
「戦乱の時代が終わった今なら、あの二人でも幸せになることができる」
「ああ」
「あの二人が幸せになれるんだったら、俺はなんだってしますよ」
きっと小十郎も同じ思いのはずだ、と確信しながら笑うと、小十郎もふっと表情を和らげた。
「さて、と」
上着を手に取りながら小十郎が佐助を見る。
「メシ食いに行くぞ」
「へ?」
「どうせ、今夜は帰ったところであの二人に邪魔者扱いされるだけだろ。ついでだ。泊まってけ」
思いがけない申し出に呆然とする。
「猿飛?」
「え、あ、はい。…えっと、じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらいます」
「ああ」
「じゃあ、さっさと行くぞ」
「はい」
―――――――
政宗は母親に愛されなかったトラウマとかから他人と接するのが苦手。でも、立場とかもあってそうもいってられない。で、結局あたりさわりなく人と付き合っていく。深いところには立ち入らないし立ち入らせない。見えない壁をまわりにつくってしまう。
小十郎は最初から壁の中にいる人。中からは、決して壊せない壁。だって、ムリに壁を壊せば政宗を傷つけて、悪くすれば壊してしまうから。
幸村は壁の外にいる人。コンコンと壁を叩いて、少しずつ政宗の世界を開いていくことができる人。佐助も外にいるけれど、自分も心に闇があるから政宗に何も言えない。
だから、小十郎と佐助は最初から傍観者にしかなれない。
前世の記憶を持っていることもそれに拍車をかける。
できることは、二人が幸せになれるように極力邪魔者を排除するだけ。
とは言っても、小十郎さんは幸村のことを認めているけれど、やっぱり気に食わないとは思っていますよ。だって、大事な殿をさらっていっちゃうんだもん!
Sun 10 , 02:26:57
2008/02
願わくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃 (西行)
昔、そんな歌を詠んだ歌人がいた。
(それも悪くないけどな)
だが、と政宗は目の前に広がる雪景色を見て思う。
深く長い奥州の冬。
その厳しさは時として人の命を容赦なく奪っていく。
雪に閉ざされ陸の孤島と成り果てる竜の守護する北国。
如月になろうともまだまだ雪の残るこの国では彼の歌の願いは叶わない。
「小十郎」
隣に控える忠臣に語りかけるというよりは、心のうちを吐き出すような声。
「どうせなら、俺は」
開け放した障子戸から凍てつくような冷気が入ってくるのもかまわず政宗は笑う。
「こんな雪景色の中、冴え渡るような寒月の下で死にてぇじゃねえか」
煌々と輝く三日月を背にして不適に笑う竜。
その美しさを尊いものだと小十郎は思う。
「どこまでも、お供いたします」
命を懸けて守るべき人。
唯一の、主。
言うと、一瞬きょとんとした顔をしてから楽しそうに破顔した。
「It's natural!」
昔、そんな歌を詠んだ歌人がいた。
(それも悪くないけどな)
だが、と政宗は目の前に広がる雪景色を見て思う。
深く長い奥州の冬。
その厳しさは時として人の命を容赦なく奪っていく。
雪に閉ざされ陸の孤島と成り果てる竜の守護する北国。
如月になろうともまだまだ雪の残るこの国では彼の歌の願いは叶わない。
「小十郎」
隣に控える忠臣に語りかけるというよりは、心のうちを吐き出すような声。
「どうせなら、俺は」
開け放した障子戸から凍てつくような冷気が入ってくるのもかまわず政宗は笑う。
「こんな雪景色の中、冴え渡るような寒月の下で死にてぇじゃねえか」
煌々と輝く三日月を背にして不適に笑う竜。
その美しさを尊いものだと小十郎は思う。
「どこまでも、お供いたします」
命を懸けて守るべき人。
唯一の、主。
言うと、一瞬きょとんとした顔をしてから楽しそうに破顔した。
「It's natural!」
Sun 27 , 00:13:21
2008/01
たとえば好きだと言えば笑うのだろう。馬鹿にしたように。その様子があまりにも容易く想像できてしまって、結局伸ばしかけた手はひっこめるしかなかった。
「どうした」
オレのヘンな気配に気づいたのか振り返って、不思議そうに首を傾げる。無意識なのだろうその仕草がかわいくてたまらないなんて、オレもそうとうキてると思う。
「なんでもねえよ(ただ、おまえのことが好きなだけ)」
「どうした」
オレのヘンな気配に気づいたのか振り返って、不思議そうに首を傾げる。無意識なのだろうその仕草がかわいくてたまらないなんて、オレもそうとうキてると思う。
「なんでもねえよ(ただ、おまえのことが好きなだけ)」
Fri 21 , 02:37:53
2007/12
チカ→ダテ(♀)? (BASARA)
「どうすれば、伝わるんだろうな」
隣で眠る隻眼の女の髪をなでながら、元親は呟いた。
いつものように情事の後、彼女は逃げるように意識を手放した。
ほんの数ヶ月前まで男として生きていた女は元親がその身体を無理やり拓くまで、何も知らなかったのだ。
家臣たちに愛され、守られ、そして彼らを愛し、守ってきた女は、己を男であるとずっと偽ってきた。
男の着物を身にまとい、戦場に立ち、自ら刀を振るって。
己は男であると、何よりも自分自身を偽っていた。
だから、物理的に女の力が男にかなわないことは知っていても、自分が押し倒されて犯されるとは思ってもいなかっただろう。
己の身体が“女”として使われることなど、考えたこともなかっただろう。
はじめてみたとき、きれいな男だと思った。
そして、思わぬ華奢な肢体に驚いた。
うわさに聞く奥州の独眼竜はどんな猛き男だろうと想像していたというのに。
しかし、戦い始めてすぐに内心舌を巻いた。
その細い腕から繰り出される攻撃は鋭く、力は元親にはるかにかなわないものの速さは相手のほうが上だった。
体格的に不利な分、その俊敏さを武器にして。
攻撃は最大の防御だとばかりに決してひくことはない。
それでもなんとか勝利して。
そして、独眼竜と呼ばれた男の秘密を知った。
すなわち、彼の竜は女である、と。
興味を覚えた。
文句を言いようがなく美しい女であったし、無理やりはだけさせ晒をはがせば、白い豊満な乳がのぞいてそれも元親を煽った。
片目であることなど全く気に入らないし、そもそも隻眼ならば、お互い様。
さっさと殺せ、首を取れという女に、元親は言った。
「おまえが、俺の女になるんなら奥州は…このままにしてやってもいいぜ?もちろん、おまえの家臣も、だ」
たったの一言で、竜は堕ちた。
連れ帰った女を毎晩犯して、何も知らなかった身体に快楽を植えつけて。
鬼の子を孕ませるためにたっぷりと精を注ぎ込む。
始めは拒絶と苦痛の声ばかりだったものが、いつからかすすり泣くように喘ぎ快感を訴えるようになった。
女の身体は極上で、いくら抱いても飽きぬほどであったがいつまでたっても慣れることなく意識を飛ばしてしまうので、無理をさせて壊すのはもったいないと我慢する。
女はほとんど笑わない。
心だけは渡さないとでもいうかのようにひどく頑なだ。
だが、一度だけ。
一度だけ、彼女は元親に笑ったのだ。
ひどく、嬉しそうに。
その瞬間に、元親は女を愛し始めた。
女が行くのを許された場所はそう多くなかった。
城の外に連れて行くときは必ず元親が一緒だったし、城の中においても家臣たちが多くいる場所へ行くことは許されなかった。
つまり、女を愛する前から独占欲だけは強かったのだ。
ある時、女を連れて砂浜を歩いた。
それはたんなる気まぐれで深い意味などなかったのだが、ずいぶん久しぶりに外を歩くことができて、女はなんとなくいつもよりも明るい顔をしていた。
元親としても、妻とした女が暗い顔をしているよりは明るい顔をしているほうが嬉しい。
そして、熱心に海を眺める姿を見て、何の気なしに海が好きかとたずねると、少々の沈黙の後、こくりと女はうなずいた。
「荒々しくて、強くて…でも、きれいだ」
「そうか」
自分の好きなものを好きだと言われたのが嬉しくて上機嫌で話しかけると、ぎこちなくではあるが返事も返ってきて、ほとんど始めての穏やかな会話にさらに気分がよくなった。
だから、言った。
「じゃあ、おまえの部屋を海の見えるところに移してやろうか」
女は部屋で過ごすことが多かった。
ぼんやりと、窓の外を眺めていることを知っていた。
だからこその提案。
思いもかけない言葉だったのだろう、女は虚をつかれた顔をして、それから見とれるほどに嬉しそうな笑顔でうなずいたのだ。
「ありがとう」
その笑顔に、恋をした。
今でも元親は夜毎に女を抱く。
だが、以前よりもよほど優しく丁寧に愛撫し、決して乱暴にはせずに快楽ばかりを与える。
その変化に戸惑いながらも無垢な身体は与えられる快楽に従順に反応し、嬌声をあげる。
会話もちゃんとするし以前よりは笑うことも多くなった。
それでも、女は決して元親を許さない。
元親は彼女の愛する家臣たちを少なくない数殺したし、それはお互い様と言ってしまえばそれまでのことだしこの乱世においていちいち怨んでいてもしようのないことではあるけれど。
散っていった命を思えばそうやすやすと許せるものでもないことはわかる。
だが、それよりも何よりも女をかたくなにするのは、元親が彼女を“女”にしたことだった。
男として育てられ、男として生きて、そしていつか男として死んでいくはずだった彼女の本来の性を暴いて無理やり女にしたことだった。
女として、あつかうこと。
それは、それまでの彼女の人生のすべてを否定する行為だった。
今更愛していると言っても伝わらないことを知っているし、その言葉は彼女を追い詰めることしかできないと知っているから、元親は何も言えない。
第一、彼女は元親の言葉を信じない。
だから、ただ優しくして全身で愛を示すことしかできない。
抱くことをやめれば少しは受け入れてくれるのだろうか。
だが、元親は心と身体と両方がほしいのだ。
それが叶わないのならせめて身体だけでもほしい。
それがどれだけむなしい考えであるかなんて、わかっている。
だがそれでも元親はこの女がほしいのだ。
片方が手に入らないからと言って両方をあきらめることはできない。
片方だけであろうとも、手を伸ばせば届くのだ。
どうして、手を伸ばさずにいられるだろうか。
どれだけ考えても結論はいつだってそこにたどりつく。
(いつか…)
いつか、この思いが伝わるのだろうか。
いつか、女が元親を愛する日が来るだろうか。
かすかな希望を抱かずにはいられない自分に苦笑する。
だが、それでも信じたいのだ。
いつか、そんな日が来ると。
許すことはできなくとも、受け入れてくれる日が来ると、信じたいのだ。
「…愛してる」
今は、眠った横顔にささやくことしかでいないけれど。
いつか、真っ直ぐにその瞳を見つめて告げることができたのなら。
眠った女の眦から涙が一筋こぼれおちた。
「どうすれば、伝わるんだろうな」
隣で眠る隻眼の女の髪をなでながら、元親は呟いた。
いつものように情事の後、彼女は逃げるように意識を手放した。
ほんの数ヶ月前まで男として生きていた女は元親がその身体を無理やり拓くまで、何も知らなかったのだ。
家臣たちに愛され、守られ、そして彼らを愛し、守ってきた女は、己を男であるとずっと偽ってきた。
男の着物を身にまとい、戦場に立ち、自ら刀を振るって。
己は男であると、何よりも自分自身を偽っていた。
だから、物理的に女の力が男にかなわないことは知っていても、自分が押し倒されて犯されるとは思ってもいなかっただろう。
己の身体が“女”として使われることなど、考えたこともなかっただろう。
はじめてみたとき、きれいな男だと思った。
そして、思わぬ華奢な肢体に驚いた。
うわさに聞く奥州の独眼竜はどんな猛き男だろうと想像していたというのに。
しかし、戦い始めてすぐに内心舌を巻いた。
その細い腕から繰り出される攻撃は鋭く、力は元親にはるかにかなわないものの速さは相手のほうが上だった。
体格的に不利な分、その俊敏さを武器にして。
攻撃は最大の防御だとばかりに決してひくことはない。
それでもなんとか勝利して。
そして、独眼竜と呼ばれた男の秘密を知った。
すなわち、彼の竜は女である、と。
興味を覚えた。
文句を言いようがなく美しい女であったし、無理やりはだけさせ晒をはがせば、白い豊満な乳がのぞいてそれも元親を煽った。
片目であることなど全く気に入らないし、そもそも隻眼ならば、お互い様。
さっさと殺せ、首を取れという女に、元親は言った。
「おまえが、俺の女になるんなら奥州は…このままにしてやってもいいぜ?もちろん、おまえの家臣も、だ」
たったの一言で、竜は堕ちた。
連れ帰った女を毎晩犯して、何も知らなかった身体に快楽を植えつけて。
鬼の子を孕ませるためにたっぷりと精を注ぎ込む。
始めは拒絶と苦痛の声ばかりだったものが、いつからかすすり泣くように喘ぎ快感を訴えるようになった。
女の身体は極上で、いくら抱いても飽きぬほどであったがいつまでたっても慣れることなく意識を飛ばしてしまうので、無理をさせて壊すのはもったいないと我慢する。
女はほとんど笑わない。
心だけは渡さないとでもいうかのようにひどく頑なだ。
だが、一度だけ。
一度だけ、彼女は元親に笑ったのだ。
ひどく、嬉しそうに。
その瞬間に、元親は女を愛し始めた。
女が行くのを許された場所はそう多くなかった。
城の外に連れて行くときは必ず元親が一緒だったし、城の中においても家臣たちが多くいる場所へ行くことは許されなかった。
つまり、女を愛する前から独占欲だけは強かったのだ。
ある時、女を連れて砂浜を歩いた。
それはたんなる気まぐれで深い意味などなかったのだが、ずいぶん久しぶりに外を歩くことができて、女はなんとなくいつもよりも明るい顔をしていた。
元親としても、妻とした女が暗い顔をしているよりは明るい顔をしているほうが嬉しい。
そして、熱心に海を眺める姿を見て、何の気なしに海が好きかとたずねると、少々の沈黙の後、こくりと女はうなずいた。
「荒々しくて、強くて…でも、きれいだ」
「そうか」
自分の好きなものを好きだと言われたのが嬉しくて上機嫌で話しかけると、ぎこちなくではあるが返事も返ってきて、ほとんど始めての穏やかな会話にさらに気分がよくなった。
だから、言った。
「じゃあ、おまえの部屋を海の見えるところに移してやろうか」
女は部屋で過ごすことが多かった。
ぼんやりと、窓の外を眺めていることを知っていた。
だからこその提案。
思いもかけない言葉だったのだろう、女は虚をつかれた顔をして、それから見とれるほどに嬉しそうな笑顔でうなずいたのだ。
「ありがとう」
その笑顔に、恋をした。
今でも元親は夜毎に女を抱く。
だが、以前よりもよほど優しく丁寧に愛撫し、決して乱暴にはせずに快楽ばかりを与える。
その変化に戸惑いながらも無垢な身体は与えられる快楽に従順に反応し、嬌声をあげる。
会話もちゃんとするし以前よりは笑うことも多くなった。
それでも、女は決して元親を許さない。
元親は彼女の愛する家臣たちを少なくない数殺したし、それはお互い様と言ってしまえばそれまでのことだしこの乱世においていちいち怨んでいてもしようのないことではあるけれど。
散っていった命を思えばそうやすやすと許せるものでもないことはわかる。
だが、それよりも何よりも女をかたくなにするのは、元親が彼女を“女”にしたことだった。
男として育てられ、男として生きて、そしていつか男として死んでいくはずだった彼女の本来の性を暴いて無理やり女にしたことだった。
女として、あつかうこと。
それは、それまでの彼女の人生のすべてを否定する行為だった。
今更愛していると言っても伝わらないことを知っているし、その言葉は彼女を追い詰めることしかできないと知っているから、元親は何も言えない。
第一、彼女は元親の言葉を信じない。
だから、ただ優しくして全身で愛を示すことしかできない。
抱くことをやめれば少しは受け入れてくれるのだろうか。
だが、元親は心と身体と両方がほしいのだ。
それが叶わないのならせめて身体だけでもほしい。
それがどれだけむなしい考えであるかなんて、わかっている。
だがそれでも元親はこの女がほしいのだ。
片方が手に入らないからと言って両方をあきらめることはできない。
片方だけであろうとも、手を伸ばせば届くのだ。
どうして、手を伸ばさずにいられるだろうか。
どれだけ考えても結論はいつだってそこにたどりつく。
(いつか…)
いつか、この思いが伝わるのだろうか。
いつか、女が元親を愛する日が来るだろうか。
かすかな希望を抱かずにはいられない自分に苦笑する。
だが、それでも信じたいのだ。
いつか、そんな日が来ると。
許すことはできなくとも、受け入れてくれる日が来ると、信じたいのだ。
「…愛してる」
今は、眠った横顔にささやくことしかでいないけれど。
いつか、真っ直ぐにその瞳を見つめて告げることができたのなら。
眠った女の眦から涙が一筋こぼれおちた。
Sun 25 , 00:05:19
2007/11
BASARA(小十郎+梵天丸)
いつからこの方は泣かないようになったのだったか。
『一人は寂しいんだ』
そう言って、泣きそうな顔で俺の布団に入ってきた小さな童を思い出す。
まだ、梵天丸様と呼ばれていたころだ。
『一人で寝ていると、怖い妖がたくさん、梵天の布団に乗っかるんだ。お部屋の隅で、笑うんだ…』
そう言って、幼い顔をくしゃくしゃにゆがめて、今にも泣きそうに目に涙を浮かべているのに、決して泣かなかった小さな童。
『まったく…』
『…ダメか?』
俺はあのころから、あの人の目に弱かった。
ひとつきりのその左目は、言葉よりも雄弁にすべてを語る。
『今から部屋に戻るまでに風邪をひいてしまいますね』
ため息混じりにそう言って布団の端をめくると、途端に笑顔になって俺の横に入り込み、小さな身体を懸命に俺に寄せてほっとしたように笑う。
『今夜だけですよ?』
『小十郎、ありがとう、大好きだ』
本当に嬉しそうに笑うのだ。
病を乗り越えたあの方はその引き換えとでも言うかのように右目を失った。
そして、それにより母親に手ひどく拒絶された。
それ以来、人に拒まれることを極端に恐れていることを知っている。
そうでなくとも、この唯一と決めた主を一人にできるわけがない。
あまり甘やかすことはよくないとわかっているが、どうにも俺はこの童に弱い。
それでも、本当に心を許した者にしかわがままを言わないのを知っているから。
頼られるのが、すごくすごく嬉しいから。
「…おやすみなさい、小さな俺の主」
既に眠りの世界へ旅立った童の滑らかな頬を軽く撫でてから、俺もその暖かい小さな身体の隣で眠りについた。
いつからこの方は泣かないようになったのだったか。
『一人は寂しいんだ』
そう言って、泣きそうな顔で俺の布団に入ってきた小さな童を思い出す。
まだ、梵天丸様と呼ばれていたころだ。
『一人で寝ていると、怖い妖がたくさん、梵天の布団に乗っかるんだ。お部屋の隅で、笑うんだ…』
そう言って、幼い顔をくしゃくしゃにゆがめて、今にも泣きそうに目に涙を浮かべているのに、決して泣かなかった小さな童。
『まったく…』
『…ダメか?』
俺はあのころから、あの人の目に弱かった。
ひとつきりのその左目は、言葉よりも雄弁にすべてを語る。
『今から部屋に戻るまでに風邪をひいてしまいますね』
ため息混じりにそう言って布団の端をめくると、途端に笑顔になって俺の横に入り込み、小さな身体を懸命に俺に寄せてほっとしたように笑う。
『今夜だけですよ?』
『小十郎、ありがとう、大好きだ』
本当に嬉しそうに笑うのだ。
病を乗り越えたあの方はその引き換えとでも言うかのように右目を失った。
そして、それにより母親に手ひどく拒絶された。
それ以来、人に拒まれることを極端に恐れていることを知っている。
そうでなくとも、この唯一と決めた主を一人にできるわけがない。
あまり甘やかすことはよくないとわかっているが、どうにも俺はこの童に弱い。
それでも、本当に心を許した者にしかわがままを言わないのを知っているから。
頼られるのが、すごくすごく嬉しいから。
「…おやすみなさい、小さな俺の主」
既に眠りの世界へ旅立った童の滑らかな頬を軽く撫でてから、俺もその暖かい小さな身体の隣で眠りについた。
Sat 27 , 14:51:48
2007/10
ただいま、サナダテ(BASARA)が脳内でフィーバーしております。
というわけで、昨日少しだけ「ローマの休日」を見た結果、サナダテでローマの休日なパラレルの妄想がむらむらと…。
アン王女→政宗
ジョー→幸村
「今回の視察で、国家間の友好は成ると感じましたか?」
集まった一人が言った。
そちらに顔を向け微笑みを作る。
「国家間の…友情を信じます」
ゆっくりとあたりを見回す。
こちらを一心に見つめ続ける幸村を見て胸がチクリと痛んだ。
「人と人の間に、友情があるように」
幸村の隣りにはやっぱり佐助がいて、目が合った瞬間、泣きそうな顔で笑みを向けられた。
「我が国を代表して申し上げます」
強く張りのある声。
(幸村)
顔をそちらへ向け、その瞳を見つめる。眩しいほどに真っ直ぐな光に泣きたくなる。泣いて、一緒にいたいと縋りたくなってしまう。
「殿下の期待が裏切られる事は…ないでしょう」
殿下という呼び方に胸が痛む。名前を呼ばれる事は、きっともう二度とない。俺が幸村の名を呼ぶ事も、きっと。
ぎこちない幸村の笑みに俺も、内心を隠して精一杯の笑顔を返す。
どんなにわずかでもいい。幸村の記憶に残る俺が笑っているように。
「此度、殿下は多くの国を訪れたわけですが…」
無理やり視線をはがして新たな質問者に顔を向ける。視界の端に映る幸村はまだ俺を見ている。
その視線の熱さに焼尽くされる事ができればいいのに。
「一番、印象に残ったのはどこですか?」
「…」
黙っていると、傍らに立つ小十郎が急かすような素振りを見せた。
「…それぞれにいいところがあって、比較するのは難しいですが…」
見回せば、いくつもの期待に満ちた視線。
その中の一人と目が合って、考えるよりも先につぶやいてしまった。
「甲斐…」
皆がざわめく。
俺は幸村の目を見つめながらもう一度、今度ははっきりと言った。
「もちろん、甲斐です。俺は…この地を訪れた思い出を、一生忘れないでしょう」
言ってから、視線を逸らした。
泣き笑いのような表情を浮かべる幸村を見ていられなかった。
「ご病気を召されたのに、ですか?」
不思議そうな誰かの声にはっきりとうなずいた。
「それでも、です」
真田幸村に出会えたから。
生涯忘れられない、たった一日限りの恋をしたから。
きっと、一生、忘れない。
というわけで、昨日少しだけ「ローマの休日」を見た結果、サナダテでローマの休日なパラレルの妄想がむらむらと…。
アン王女→政宗
ジョー→幸村
「今回の視察で、国家間の友好は成ると感じましたか?」
集まった一人が言った。
そちらに顔を向け微笑みを作る。
「国家間の…友情を信じます」
ゆっくりとあたりを見回す。
こちらを一心に見つめ続ける幸村を見て胸がチクリと痛んだ。
「人と人の間に、友情があるように」
幸村の隣りにはやっぱり佐助がいて、目が合った瞬間、泣きそうな顔で笑みを向けられた。
「我が国を代表して申し上げます」
強く張りのある声。
(幸村)
顔をそちらへ向け、その瞳を見つめる。眩しいほどに真っ直ぐな光に泣きたくなる。泣いて、一緒にいたいと縋りたくなってしまう。
「殿下の期待が裏切られる事は…ないでしょう」
殿下という呼び方に胸が痛む。名前を呼ばれる事は、きっともう二度とない。俺が幸村の名を呼ぶ事も、きっと。
ぎこちない幸村の笑みに俺も、内心を隠して精一杯の笑顔を返す。
どんなにわずかでもいい。幸村の記憶に残る俺が笑っているように。
「此度、殿下は多くの国を訪れたわけですが…」
無理やり視線をはがして新たな質問者に顔を向ける。視界の端に映る幸村はまだ俺を見ている。
その視線の熱さに焼尽くされる事ができればいいのに。
「一番、印象に残ったのはどこですか?」
「…」
黙っていると、傍らに立つ小十郎が急かすような素振りを見せた。
「…それぞれにいいところがあって、比較するのは難しいですが…」
見回せば、いくつもの期待に満ちた視線。
その中の一人と目が合って、考えるよりも先につぶやいてしまった。
「甲斐…」
皆がざわめく。
俺は幸村の目を見つめながらもう一度、今度ははっきりと言った。
「もちろん、甲斐です。俺は…この地を訪れた思い出を、一生忘れないでしょう」
言ってから、視線を逸らした。
泣き笑いのような表情を浮かべる幸村を見ていられなかった。
「ご病気を召されたのに、ですか?」
不思議そうな誰かの声にはっきりとうなずいた。
「それでも、です」
真田幸村に出会えたから。
生涯忘れられない、たった一日限りの恋をしたから。
きっと、一生、忘れない。
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