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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Tue 29 , 01:55:39
2025/04
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Mon 16 , 09:42:03
2008/06
昨日、ルノワール展見に行ってきました。
ルノワール、好きなんです。
ものすごく、よかったです!

彼の絵は、どれもあたたかくてやさしいんですよ。なんていうか、雰囲気がね。どんなに暗い色を使っていても、冷たくはならない。それって、もしかしたら彼の心根をあらわしているのかもしれないなぁ、と思いました。
彼の描く人物は、どれも本当にやわかい雰囲気。すまし顔をしていても、どこか愛嬌があるんですよね。特に、家族を描いた絵なんかは、彼らへの愛情に満ちていて、見ていて思わず微笑んでしまうんですよ。
小さな息子が遊んでいる姿をスケッチしながら、そのかわいらしさに思わず微笑んでしまうやさしいお父さんの姿が目に浮かぶようです。

彼の絵が素敵なように、きっと、彼自身も本当に素敵な人物だったのだろう、と思わずにはいられないです。
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Sun 01 , 16:02:18
2008/06
この蛍があんたの魂なのだとすれば、どこへ飛んでいくのだろうか。



もの思へば 沢の蛍も わが身より あくがれ出づる 魂かとぞ見る
(和泉式部)



任務の帰り、深い森の奥の小さな川を囲むようにして飛ぶ美しい夏の虫に、思わずそんなことを考えてしまった。そんなロマンティックな性質ではないというのに、そう考えてしまったのは未だにあんたのことを思い切れていないからなのだろう。

そっと近づき、恐る恐る手を伸ばすと当然のようにあたりの蛍は逃げていく。

「もの思へば…」

古い和歌を口ずさむ。
この蛍が魂なのだとしたら。
俺の魂をかたどった蛍は間違いなくあんたのところへ飛んでいくだろう。
だが、あんたの魂は?
どこへ行くのだろうか。
俺のところか、紅サンのところか、それとも違う誰かのところか。

会いたい、と。
好きだ、と。
強く、今でも思う。

あれから3年経った今でも変わらない、大切な無二の存在。
恋と呼ぶほど甘くなく、愛というほど優しくないこの感情は、はっきりとした形をとることもないままあの男と結びついて、ひどく歪な形のまま固まってしまった。

「あ…」

伸ばされた手に驚き逃げていた蛍のうち一匹が。
すぅっと俺の指先を囲むように光り、飛んだ。

「アスマ…?」

応えるように微かに光る小さな命。

(なあ、あんたは今どこにいるんだ?)

その一匹に誘発されたように他の蛍たちも次々と集まっては光を灯す。
夢のような光景だ、と凪いだ心のうちでそっと思う。
この美しい光景は、夢のようで触れることができない。
指の一本も、これ以上に動かせない。
少しでも身じろいでしまえば壊れてしまうのではないか。

「なあ、…ありがとな、おまえら」

口の中で小さく呟くと、彼らはまた応えるように光った後に、ゆっくりと離れていった。
Mon 26 , 02:58:28
2008/05
田辺さんの訳した源氏物語を今読んでいます。
私は、田辺さんの言葉でつづられる古典がとてもすきなのです。

瀬戸内さんの訳のやつは、本当に原文に忠実に訳してある感じ(と言っても最初の数ページを本屋でぱらぱら見た程度なんですが)で、田辺さんのやつは平安の雰囲気を響かせながら「物語」として再構築した感じかな。

しっとりした文章と古典の雰囲気を残したままの言葉の選び方。
それで語られる登場人物それぞれの心の内の恋情と苦悩。

源氏はひどい男で、源氏物語は昼ドラも顔負けなくらいにどろどろとした物語ですけど、それでもそれだけで終わらせない魅力があるんですよね。
源氏の心の深さ。彼から見たそれぞれの女性たちの美しさ。
浮気っぽい男で、女性たちは散々泣かされるけれど、それでも別れられないのは一つ一つの恋が本物である、ということも知っているからなんですよね。彼にとっての「特別」がちゃんといることを知っていて、自分ではその「特別」にはなれないことを痛いほど知っているけれど、確かに愛されている自分も知っている。
そして、源氏は女性たちの美しさを見抜く名人で、本人たちでさえ知らないであろう「美しさ」を見つけ出しては愛するんです。その喜びを、彼女たちは手放せないのでしょう。

まだ上・中・下とある中の上巻の途中までしか読んでいませんが、すでに源氏物語の面白さを感じています。
前々から読みたいと思いつつちゃんと読んだことなかったんですが、今年は源氏物語1000年紀だし、せっかくだから一度は読まないとね!と決心して読み始めたのです。
読みながら、昔見た中西京子さんの紙人形の源氏たちをイメージしてます。あれは、機会があったらまた見に行きたいほどに美しかったです。

今まで、源氏物語の登場人物で一番好きな女性は花散里だったんです。
ですが、今はどの女性もそれぞれに魅力的で惹かれてしまいます。
空蝉、朝顔、朧月夜、夕顔、藤壺の宮…

若紫はまだ幼いながらも愛くるしく源氏を慕います。
ほかの女性との恋もいいのですが、やっぱり彼女と一緒にいる源氏を見ると(読むと?)ほっとします。もっとも愛されながらももっとも苦しんだ女性、でしょうね。彼女は。

葵上との別れは、源氏と一緒にこちらまでどうしようもなく苦しくなります。
ずっと心の通わなかった妻。子どもが生まれ、ようやく互いに向き合って、これから、というときにはかなく身罷ってしまった女性。
(私たちの恋は今からなのに。ようやく、世間一般の夫婦のように打ち解けることができたと思ったところなのに。あなたを、心からいとおしく思い始めたところだというのに…)
美しく気位が高く結婚して何年も経つのに決して打ち解けてくれようとはしなかった貴方。
どうしてあなたの心を解く努力を放棄してしまったのだろう。
後悔は尽きず、死の直前に初めて知った彼女の優しさを思い出してはかわいそうなことをした、と悲嘆にくれる源氏。

そして、六条御息所。
美しく教養深く、年上という引け目を感じながらもひたむきに源氏を愛する女性。
多分、彼女は寂しかったのではないでしょうか。
夫たる東宮を亡くし、愛を注ぐ相手は忘れ形見の娘のみ。
そこに言い寄った若く美しい青年に気がつけば逃れることのできない深い恋をし、そしてどこまでも堕ちていった美しい年上の女性。
東宮を失った哀しい過去があるから源氏を失うのを恐れ、もうやめようもうやめようと思うのにやっぱり源氏がいとしくて別れることなどできずに深みにはまり、愛欲の地獄でひとりもがいていた女性。
(ああ、源氏の君。わたくしはあなたをお恨み申し上げます。あなたがいなければ、わたくしはこんなに苦しくなかった。あなたのまなざしひとつでこんなにも思い乱れるわたくしを、あなたはお笑いになるのでしょうね。浅ましい、はしたない女だとお思いになるのでしょうね。どうかあなたよりも大人でありながら、こんなにもあなたに恋をしてみっともなくすがりつくように愛しているわたくしを疎ましくお思いにならないで。自分でも、わからないのです。どうしてあなたがこんなにもいとおしいのかしら。あなたを愛した分だけ苦しむのだと、わかっているというのに…)
ああ、それでも。
どんなに苦しくても。
わたくしは、あなたのこいびとでいたいのです。
Thu 24 , 00:09:11
2008/04
BA/SA/RAでも無/双でもなく、史実っつーかむしろ山岡サンの「伊達政宗」と「織田信長」での、二人のイメージについて考えてみた(両方とも、途中までしか読んでないけど。信長様にいたってはまだ1巻の途中だけど)。


信長様も政宗様もものすごく頭のいい人。
でも、信長様は他人にはわかりにくい頭のよさというか、他人にそれを悟らせないけれど、政宗様は誰から見ても頭のいい人。自分に能力があることを示さなければならなかった人と、示さなくてもやっていく自信があった人。

なんでだろう。
多分、二人とも敵は多かったけど政宗様は味方も少なからずいたと思うんだ。信長様にとっての味方って、平手さんと濃姫と竹千代と…ああ、その辺の村の子どもたち、か。でも、一族からは嫌われてたんだよね。
それに比べて、政宗様は母親からは嫌われてたけど父親からは溺愛されてたし、成実とかもいたし。でも、母方の一族からはすごい嫌われてたから、それが大きかったのかな。

政宗様は『認めて欲しい』っていう意識が強かった気がするけど、信長様は『わかるやつだけわかればいい』っていう感じがする。
多分、精神的に強かったのは信長様のほうだ。
政宗様は、どこか弱い気がする。
より人間的、って言い換えてもいいけど。

信長様はきれいな人。
政宗様はかわいい人。
自分の望むもののためにどんな非道な人間になることもためらわずに進んだ人と、己の望むものをわかっていながらも大切なものを守ることを選んだ人。

どっちが強かったとか、どっちが正しかったとか。
そんなことは、どうでもよくて。

ただ、二人とも望むもののために生きることができたのなら、いいな、と思った。
Thu 20 , 00:14:00
2008/03
一緒にいられるのは嬉しいのに。
どうしてだろう。
このごろ、俺はお前の目を見れない。



「愛してる」
「うん」


その言葉にウソがないことを知っているのに。
聞きたくないと思うのはなぜだろう。


「おまえは?」
「うん。俺も」


いつまで一緒にいられるのだろうか、と考えるのはその先にある別れを期待しているからなのか。
(なんでだ?)


「ずっと、一緒にいような」
「…うん」


抱き寄せる腕は温かくて心地いいのに。
力を抜いて身体をあずけても大丈夫だって、わかっているのに。
重ねられた唇は優しいのに。
どうしてこんなに寂しいのだろう。


(好きなのに)


この思いにウソはないのに。
笑った顔に胸が締め付けられるほど愛しくなるのも変わらないのに。


(俺は“誰”だ?)


(おまえは“誰”だ?)


(ここは、どこだ?)


心が求める。
ここではないどこか。
おまえではない誰か。
自分ではない誰か。


(このまま、時が止まったのなら)



俺はおまえを裏切らずにいられるだろうか。
Wed 12 , 22:00:49
2008/03
カップリングソング!いろいろ考えてみました。ってほど考えてないけど。とりあえず考えた。
できれば、その曲をテーマにして書きたい!!

オレンジ→ジェシリ

チェリー→ジェシリ

らいおんハート→サナ♀ダテ or こじゅ♀だて (子持ちネタで!)

こいのうた→サナダテ、かなぁ?

Leaving on a jet plane→四カカ(パラレルで!)

時代→サナダテ(転生ネタ)

ハナミズキ→サナダテ(佐助視点で!)

runner→サナダテ(陸上部パラレル)

たしかなこと→四カカ or こじゅだて

壊れかけのradio→現代パラレルで家のこととかで苦悩する伊達さんとかどうでしょう

言葉にできない→アスシカ(サビのとこだけでいいけどね)

時には昔の話を→リーマスとかいいかもしれない

花→BASARAで転生ネタ

first love→これでアスシカをDiaryに書いた気がする

赤い花白い花→『天上の花』は、これのイメージで書きました

Bridge over toroubled water→悪戯仕掛け人



とりあえずそんな感じで。
Mon 25 , 21:42:02
2008/02
「いらっしゃい」
男は、にこやかに玄関の戸を開けた。
「…貴様に、逮捕礼状がでた」
「ああ、そろそろ来るだろうと思ってた。でも、あと5分待ってくれ。これやったら終わりだから」
きれに片付いた部屋。
すべて覚悟の上ということか。
「なぜ、拒んだ」
「なぜって…俺は人だからな」
「だが拒めば死ぬ」
「わかってる。それでも曲げちゃなんねえものがある」
「…」
「人として間違ってる、とか偉そうなことを言うつもりはねえよ。確かに戦争しなきゃこの国はぶっ潰されるだろうしな」
戦争まで秒読み状態。
世間でも指折りの剣術師にして射撃の名人、頭脳も政府の上層部とは比べ物にならないほど。加えて人望もお上のはるか上を行く人物となれば、呼び出されるのは考えるまでもなく当然のことだった。そして、拒めば危険因子として処分されるだろうことも。
それなのに、この男は拒んだ。
「それでも、俺は俺の思う“人”の道を外れたくないし、どんな理由があれ誰かの命を奪うのは好きじゃない。軍に加われば、俺はおそらく一番汚い部分を見る羽目になるだろうよ。…わかってる。俺が行かなきゃその役目がほかの誰かに行くだけだって事は。でも、だからといって自分を曲げるつもりはない」
淡々と部屋を片付けながら、それでもその瞳だけは煌々と光っているのだ。怒りと、悲しみと、哀れみを含んだ光。その中に諦めの色だけはないことにほっとする。
この男は、決して諦めない男だから。
「私にも…それだけの強さがあればよかったのにな」
身に着けた制服が疎ましい。
この男のような潔さも強さも怒りも持たない私はやすやすと国の狗に成り下がった。
「おまえにだって信念はあるだろう」
「今となっては、それすらもわからぬ」
「…」
「心が、慣れてしまった。目の前でどれほどの人が死のうとも今の私は心を動かすまいよ」
「いいや、違うね」
強い口調にはっとする。
「おまえはいつだってそうやって自分の心を守るために殻を作る。でも、本当はおまえは俺よりもずっとこの状況に憤りを感じているはずだ。おまえが軍にはいったのだって、内側から変えてやろうっていう考えだったんだろ?」
「…たとえそうだとしても、もう遅い。私一人では何も変えられない。戦争は始まる。多くの民が死ぬ。そして、きっと私もいつまで“人”で在れるかわからない。いや、すでに人ではないのかもしれぬな…」
「馬鹿言うな。おまえは…絶対に、最後まで人で在れる」
「なぜ」
「俺が言うんだから、間違いない。ずっと昔から、一番近くで見てたんだ。俺のことを俺以上におまえが知っているように、おまえのことならおまえよりもわかってる俺が言うんだから、間違いない」
「…」
強い瞳を真っ直ぐに受け止めることのできる自分に安堵する。いつだってこの男の瞳は迷いがなく、だからこそ後ろめたい時や自分が間違っているときには、この視線を受け止めることができなかった。
「…まだ、私はお前の目を見ることができる」
「ああ」
「最後まで、そうで在りたいと思う」
男の顔にゆっくりと笑みが浮かぶ。それにつられるようにぎこちなく私の顔にも笑みが浮かび、それが随分久しぶりのことだと気づいた。幼い頃に戻ったかのような錯覚を覚える。
「…この国は、どこで間違えてしまったのであろうな」
小国の分際でなまじ軍事力、科学力があるだけに始末が悪かった。叶うはずもない相手に、それでも自分たちは正しいのだと、そして正しいものが勝つのだと盲目的に信じて喧嘩を売る。愚かとしか言いようがない。
「さあな」
そっけなくこたえる男は、本当は誰よりもこの国を愛していた男だった。
だから、この国が間違った道に行くというのであればまだ男の愛した国の形を保っている今、外国に無残にあらされる前の今、愛した国と心中のように死んでいこうというのだろう。
「…もう行くぞ」
「ああ」
部屋を後にして男は死にに行く。
私は誰よりも大切なはずの男を死なせに行く。
部屋に残された男の荷物は、男が部屋を出た途端に風化したように色あせて見えた。
Mon 18 , 11:26:32
2008/02
最後のキスは
タバコのflavorがした
ニガくてせつない香り




「紅に子どもができた」

その一言で、俺の恋は終わった。
「じゃあ、別れよう」
言ったのは、俺だった。
「だが…」
躊躇うアスマにどうしようもなく泣きたくなった。
「あんた、父親になるんだろ?だったら…俺は邪魔なだけだ。男の愛人なんて、自分のガキにどうやって説明するんだよ。この狭い里の中で隠しておけるわけがないだろう」
「…」
「別れても…別に、何が変わるわけでもない。ただ、キスとセックスがなくなるだけだ」
「…」
自分が冷静に何かを言っているのを聞きながら、俺はすぐに逃げ出して泣きたいと考えていた。

「シカマル」
伸ばされた手にびくりと震える。
「…んだよ」
「すまない」
目尻に指をそえられて初めて自分が泣いていたことを知る。
「…謝んな」
「ああ」
「バカヤロウ」
「そうだな」
優しい声。
俺を包む両の腕。
愛しい。
別れたくない。
まだ、こんなにも好きだ。
でも、これ以上“恋人”でいることはできない。俺は紅サンとあんたを共有するつもりはない。今までだって、あんたと紅サンが付き合っていることは知っていたけれど、俺といるときはあんたは俺のものだった。
だけど、これからは違うんだろう?
結婚してしまったら、あんたはもう二度と俺だけのあんたにはなってくれないんだろう?
そんなの、いやだ。
一瞬の夢でもいいから、俺はあんたの全部がほしいんだ。

「愛してる」
多分、初めて言った言葉。驚いて息をのむあんたが愛しい。
「だから、別れてくれ」
あんたが俺に未練があることはわかってる。あんただって、俺があんたに未練があることはわかっているだろ。
だから、引き止めるな。
あんたが強くひきとめるのなら、決意が揺らぐから。
でも、それじゃ違うんだ。
“恋人”じゃなく、それでも“特別”な存在としてそばにいたい。
それが、俺の望み。
わかってくれ。
「…シカマル」
強く強く抱きしめられる。
アスマはでかいから、俺はすっぽりと腕の中に包まれてしまって、互いに顔が見えない。
見えなくても、どんな顔をしているのかわかってしまうから余計に切ない。
「おまえを、愛してる」
「…」
「だが、それと同じくらい紅のことも愛している」
「…ずるいな」
「ああ。だが…ずるいことを承知で、もうひとつ言わせてくれ」
「…」
「俺が紅を愛そうとも、おまえが誰を愛そうとも、俺の一番の“特別”はお前だ」
「………やっぱり、ずりぃ…」
たまらなくなって、俺はアスマの腕の中で泣いた。
きっと、ここで泣くのはこれが最後だ。


「…じゃあ」
「ああ」
「明日からは、昔みたいに師弟にもどろう」
「ああ」

どちらからともなく唇をよせる。
さよならのためのキス。



You are always gonna be my love
いつか誰かとまた恋に落ちても
I'll remember to love
You taught me how
You are always gonna be the one
今はまだ悲しい love song
新しい歌 うたえるまで
Sun 17 , 17:20:45
2008/02
あのころの僕らに大切なものはなかった。
だから、君だけを愛することができた。


「これで、サヨナラだな」
「うん」
「もう、会うこともないよな」
「多分ね」
「…」
「寂しい?」
「寂しくないといえば嘘になる」
「うん」
「でも、少しほっとしてる」
「うん」
「お前といると俺はおまえでいっぱいになってお前のことしか考えられなくなってお前以外どうでもよくなってしまうから」
「うん」
「だから、寂しいけれど広い世界に出るのは怖いけれど、やっぱり寂しさが勝るけど、でも、ほっとしてる」
「うん」
「…」
「愛してるよ」
「っ!」
「ずっと言えなくてゴメンね」
「…今頃言うなんて、ずるい」
「うん」
「もっと早くに聞きたかった」
「うん」
「そうしたら、俺は…っ」
「ずっと、ここにいてくれた?」
「…」
「そう思ったから、言えなかったんだよ」
「俺のせいなのか?」
「違う。僕のわがまま」
「…」
「君は本当にいろいろな可能性を持っているから、僕だけのところに縛り付けたくなかったんだ。君の可能性を壊したくなかったんだ」
「…そんなの、嬉しくない。俺はいつだってお前以外いらなかったのに」
「知ってた。でも、僕のエゴだってわかってても言えなかった」
「だったら、最後まで何も言わないでほしかった…っ!」
「ゴメンね。我慢できなかったんだ」
「最低だ」
「最低だってわかってても、君が僕のことを忘れないようにしたかったんだ」
「バカ」
「バカでもいいよ。…君を愛している。君の無限の可能性を壊したくない。君とはなれたくない。そばにいたい。でも、一緒にいるのが怖い」
「どうして」
「いつか、君を壊してしまいそうだったから。…ああ、ほら、もう列車がでるよ。君はいかなくちゃ」
「おいっ…」
「愛してるよ。幸せになって。忘れないで。大好きだよ。行かないで。さようなら」
「…っ」

最後のキスは煙草の匂い。
遠ざかる列車を見送って、僕は一人で涙を流す。

「言えるわけがないじゃないか。あと…1年も生きられない僕のそばにずっといてほしい、だなんて。そんな残酷なこと」

誰よりも愛しているよ。
その幸せを願っているよ。

僕を忘れて幸せになる君を見たくないけれど、僕のいない世界でもいいから君は笑っていて。
Thu 14 , 01:10:54
2008/02
甘い甘いチョコレート。
お菓子会社の陰謀になんてのってやらない。


「じゃあ、これはなんなんだ」
机の上におかれたチョコの箱にため息をつきながら突っ込みを入れると、すねたような顔をしてふいとそっぽを向かれた。
「別に。…バレンタインだからじゃない。俺がチョコ食べたいから買ってきただけ」
「一人で食べるには多くないか?」
「…」
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ。
一人で5箱も食べるのか?(いや、こいつなら食べてしまいそうではあるが)
呆れた視線を送る俺を無視して1つめの箱をもそもそと開ける姿にちょっとむっとする。箱の中にはおいしそうなトリュフ。
確かにおいしそうだし食べてみたいとも思うが、それがこの時期に男がチョコを買う理由たるに十分かと言われれば首を振るだろう。その上、こいつはプライドが高い。チョコが食べたいというだけで女性たちの好奇の目にさらされるとはとうてい思えない。
「…」
つらつらと考えながら恋人を眺めていると、白い指でひょいとつまんでぽいと口の中に放り込む瞬間に見えた赤い舌に思わず欲情しそうになった。
「おいしい」
かすかに微笑む姿に押し倒したくなる。
どうしたもんか、と思っていたら2つめのチョコをつまんだ白い指が目の前に差し出された。
「どうした」
「……………食いたかったら、食ってもいいぞ」
そっけない様子を装ってはいるが真っ赤な顔。もとが白いだけに余計に目立つ。
(これは、我慢しろというほうがムリだろう)
指ごとチョコを口に含んで、チョコと一緒に指をねっとりと情事の時のようになめてやると、さらに顔に朱が走る。
「お、おいっ」
慌てたところでもう遅い。
こんなにかわいいことをするおまえが悪い。
チョコよりもおいしそうなおまえが悪い。
「覚悟しろよ」

欲望の命じるままに、俺は恋人を押し倒した。
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読書、昼寝
自己紹介:
更新はまったり遅いですが、徒然なるままに日記やら突発でSSやら書いていく所存ですのでどうぞヨロシク。
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