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白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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Tue 29 , 01:57:47
2025/04
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Mon 11 , 21:46:29
2008/02
昔、どうしても好きな人がいた。
今はどうなのかわからない。

ずっと会っていないから?

違う。
誰かを好きだとか嫌いだとか感じる部分が壊れてしまったから。

今、あの人に会ったら自分はどうするのだろう。
知りたいけど、ちょっと怖い。
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Tue 29 , 19:48:54
2008/01
「あー…」

抱きしめた身体は思っていた以上に細くて、なんともいえない気分になった。
「なんだよ」
「いや、別に意味はない」
「じゃあ放せ」
「それはいや」
言葉遊びのように言い合うのはキライじゃない。
文句を言いつつも腕の中に納まってくれるのが嬉しくて。

幸せというのはほんの些細なことで、でも日常というのは奇跡の積み重ねで、今こうしていられるのはいくつもの可能性の中からたった一つ選ばれた現実なのだと考えると、やっぱり、とても愛しかった。
Sun 27 , 01:48:32
2008/01
その一(?)

「笑えよ」
「どうして」
「なんとなく」
ちょうどいい理由が思い浮かばなくてそうこたえると、ふい、と顔を背けて彼は立ち去ってしまった。
「あーあ…」

(笑った顔が好きだから、なんて言ったらおまえはどうするんだろうな)



その二(サナ→ダテ)

「旦那ー、雨が降りそうだからそろそろ部屋に戻ってくださいよ」
「む、わかった。…おまえはどこへ行くのだ」
「俺?洗濯物取り入れに行くんですよ」
「そうか、ご苦労だな」
「いえいえ…でも、これって忍の仕事じゃないんですけどね」
「それが終わったら、団子を食いたい」
「はいはい、用意しますよ」

でもやっぱりこれって忍の仕事じゃない、と文句を言いつつ小走りで洗濯物を取り入れに行く佐助を見送って、俺は部屋に戻った。

鍛錬のために二槍を振るうたび、青い竜が瞼の裏にちらつく。

『かかってこいよ、真田幸村ァ』

彼の竜を思うとき、身体が熱く滾る。
何よりも俺を興奮させる男。
戦場を駆ける姿は舞うかのように美しく、しかし竜の二つ名の如く時に荒々しい。
戦場を離れればよい君主として国を治め、一個人としても多趣味であるあの方は槍を振るう以外に能のない俺から見れば驚くほどになんでもできる。
以前、あの方が舞うのを見せていただいた。
戦場で見せる荒ぶる戦舞ではなく、静かに妖艶な舞姿。
どちらも、俺を虜にする。

「早く…会いとうござる」

次の逢瀬は戦場かそれとも彼の城か。
どちらでもかまわない。
早く、会いたい。

視線を外に転じる。
ちょうど雨が降り始めたようで、雨音がしめやかにあたりを包んだ。


もっと激しく降ればいい。
そして、雷鳴が轟けば。

あの方を近くに感じることができるのだろうか。


その三(サナ←ダテ)

パチパチと枯葉を燃やす炎を見ていた。

(あいつの炎は、もっと熱いよな。…焼き尽くされそうなくらい)

こちらにまで飛び火して、俺は立場も何もかも忘れてあいつのことしか考えられなくなる。

「…shit!」

早く決着をつけたい。
だが、もっとずっと永遠に戦っていたい。

あの炎をまとった男が全身をかけて俺に向かってくる瞬間に、途方もない幸福を覚えるから。

「成実!」
思考を中断するため(誤魔化すため)、さっきからうきうきとこちらを伺っている従兄弟を呼ぶ。
「なーにー?」
呼べばすぐにやってくる様子は犬みたいだ。
(そういえば、あいつも普段は犬みたいなんだよな)
戦場の狂気がうそのように真っ直ぐで素直でお子様。
「芋焼けたぞ、さっさと食え!」
「んー、うまそう!…熱ッ」
幸せそうに芋を受け取って一口かじって、すぐにその熱さに舌を出す様子を見て笑った。
「ばーか」
(多分、あいつもこういうtypeだよな)

あいつのことを思考から追い出すことはできなかったけど。
とりあえず愉快だったからいいことにする。



その四(シカいの)

一日違いで生まれた幼馴染。
成長して、いつのまにか恋をして、気がつけば結婚して。
子どもができて、幸せになって。
そして、一緒に年をとっていく。
あたしの世界にシカマルがいなかったことはない。
シカマルの世界には、あたしが一日だけいなかった。
女のほうが長生きするって言うし、シカマルはめんどくさがりだし実はさびしがりだからあたしはシカマルより少しだけ長生きをしてあげようと思う。
Sun 16 , 01:52:18
2007/12
五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする
古今和歌集 夏 (よみ人知らず)



先日、授業で和泉式部日記をやったときに出てきました。
この歌が直接出たと言うよりは、引用されていたわけなんですけど。

さて、この歌は「よみ人知らず」なんです(この「よみ人知らず」という言い方、好きです。現代だったら「作者不明」という味も素っ気もない言い方するんでしょうね。昔の、こういう言い回しに惹かれます)。
この歌の作者は男でしょうか、女でしょうか。

先生は(蛇足ですが、私はこの先生のことが本当に本当に大好きです。友人連中に呆れられるくらいに好きです)、この作者を「男だと思います」といっていました。
しかし、私はこの歌を初めて見たときに「女性っぽいな」と思ったのでした。
だから、先生の言葉を意外に思い、他の人はどう感じるのかと気になって母に聞いてみたところ、母も「男性っぽい」と言っていました。

確かに、どちらともとれる歌です。
花の香りに関する歌と言えば、紀貫之の

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

を思い出します。
花と女性を結びつけるという考え方は、自然ですよね。むしろ、男性よりも女性を連想しやすいと思います。

ところで、橘の花とはどういうものでしょうか?
実物を見たことはないのですが、私のイメージは少し厚い花弁の、白い花です。柑橘類だということで、おそらくさわやかな香りでしょう。

白い可憐な花は女性をイメージさせます。
しかし、柑橘のさわやかな香りはどちらかといえば男性をイメージさせると思うのです。
だから、“橘の花”のイメージから、おそらく私はこの歌の作者を女性だと思ったのでしょう。

それに、この時代の女性はめったに外に出ませんから恋人や家族以外の男性と直接会うこともありませんでした。身分の高い女性であれば、直接言葉を交わすことすらなかったでしょう。
そういう女性にとって、恋人とはどれほどの意味を持つのか。
きっと、会えなくなっても忘れられないと思うのです。
何かにつけて「ああ、あんな人もいたなぁ」と思いを馳せ、懐かしく、もしくはいとおしく思うのではないでしょうか。
そして、男性がかつての恋人を思うよりもずっと多くのことを覚えているのではないか、と思うのです。

男性は外に出て色々な人に出会います。
広い世界を知っており、当然知人も多いでしょうしこの時代の常として恋人が複数いることは珍しくありません。

それに対し、女性は先ほども述べたように家の奥に引きこもっているのです。
この時代、女性が「世の中」という言葉を使えば、それは十中八九「男女の仲」を示すように、彼女たちの世界はとても狭い。
だから、男のほんの何気ない仕草や言葉、そして衣に焚き染めた香りも忘れられないのではないでしょうか。

だから私はこの歌を見ると、五月の緑あふれる庭を、端近くに座して懐かしい気分にひたりながら穏やかに微笑み、かつての恋人を思い出す女性を思い浮かべずにはいられないのです。
Sun 18 , 00:18:03
2007/11
それなのに、どうして今更こんなに悲しいのか。

シカマルはあたしのことをどう思っているのか。

はっきりさせたいのなら、聞けばいいのだ。
シカマルは嘘を言わない。
だから、聞けば本当のことを教えてくれる。
それが、怖い。

だって、おまえのことなんか好きじゃない、なんて言われたら立ち直れない。
本当のことを知りたくて、でも知るのが怖くて。
いつからこんなに臆病になったんだろう。

小さいころからあたしはずるかった。
でも、こんなに臆病じゃなかったはずなのに。

(あのころに、戻りたいな…)

アカデミーのころは、楽しかった。
だって、みんな笑ってた。
あたしはこんなに切なくなるほどに誰かを好きになることなんてなくて、サスケくんを見てかっこいいって騒いで、サクラといろんなことを話して、シカマルとチョウジと一緒にいろんなところに行った。
悩みなんて、なかった。
成績は優秀だった。
友達もたくさんいた。
先生の覚えもよかった。
親にもめいっぱい愛されてた。

(あのころが、あたしの人生の全盛期だったりして)

その考えを否定できない自分がいる。
結婚した日、あんなに幸せだったのに。
あの日から、シカマルは何も変わっていないのに。
あの時のように、シカマルを信じられない自分が確かにいる。


優秀な成績をとるのは簡単だった。
ただ頑張ればよかったのだ。
でも、ただ頑張るだけではシカマルはあたしを好きになってくれない。
どうすれば、いいの。

シカマルのそばにいられるだけでいいと思っていたこともあった。
本当に、それだけで嬉しくて幸せだった。
それなのに、いつの間にこんなに贅沢になったの。
あたしの告白を受け入れてくれて、プロポーズにもオーケーしてくれて、今も、一緒にいてくれるのに。
この上なく、優しいのに。
それなのに、今度は一番に思ってくれなきゃいやだなんて。
アスマ先生の次じゃ、いやだなんて。

生きてる人の中での一番じゃなくて、全部の人の中での一番になりたいなんて、そんなこと望んじゃダメなのに。

いつから、こんなにわがままになったの。
Thu 15 , 23:32:21
2007/11
あたしたちが結婚した日、シカマルは式のぎりぎりの時間までアスマ先生のお墓にいた。
そこでシカマルが何を思っていたのか、あたしは知らない。


あの時、あたしは不安だった。
もしかして、シカマルはあたしのプロポーズにオーケーしたのを後悔してるんじゃないか、って。
このまま、どこか遠くへ行ってしまうんじゃないか、って。
信じていなかったのではない。
信じきれなかったのだ。
あたしにはシカマルを信じきる強さがなくて、それがとても情けなかった。

でも、シカマルはちゃんと来てくれた。
急いで着替えて、すっかり準備の整ったあたしを見て少し微笑んだ。

「似合ってるじゃねぇか」

その一言に、あたしが泣きそうになったことをシカマルは知らない。
ほめてくれたのが嬉しかった(だって、シカマルは嘘をつかないから)。
来てくれたのが嬉しかった(だって、シカマルが愛してるのはアスマ先生だって知ってるから)。
シカマルを疑った自分を殺したくなった(だって、シカマルはちゃんと来てくれたのに)。


長ったらしい神父のセリフを欠伸をかみ殺しながら聞いているシカマルを横目で見ながら、あたしはアスマ先生のことを考えた。
あの時、アスマ先生は死ななかったら今頃は紅先生と夫婦になっていたはず。
二人が結婚したら、シカマルはどうしたのだろうか。
それでもアスマ先生を愛し続けるのだろうか。
それとも、諦めるのだろうか。
そしたら、あたしのことを愛してくれたのだろうか。
(どうして、今…こんなこと考えてんだろ)

「では、誓いのキスを」

その言葉に向き合うと、目が合った。
とっさにどういう表情をしていいのかわからなかった。
シカマルは、あたしの目を見て照れたような表情で小さく笑った。
シカマルの黒い瞳に映ったあたしは、この上なく幸せそうな表情で笑っていた。

(そっか…)

ごちゃごちゃいろんなこと考えてたけど、それでもあたしはやっぱり嬉しいのだ。
シカマルの隣にいるちゃんとした理由がこれでできる。
幼馴染なんていう不確かで曖昧な関係じゃなく、夫婦として一緒に入れる。
(それって、すごいことよね)

シカマルの“妻”は、世界中であたし一人なんだから。

そう思ったら、今更ながらに幸せが押し寄せてきた。
優しい触れるだけのキスをしながら、あたしはきっと今世界で一番幸せな女だ、と思った。

アスマ先生のことは、いつの間にか思考の外に追いやられていた。
Sat 10 , 02:35:33
2007/11
猫の死体を見た。
バスの窓からちらりと見えただけだけど、内臓が飛び出ていてキレイな死体ではなかった。
道路の真ん中だった。
「あ…」
思わず声を上げると、隣にいた友人が聞いた。
「どうしたの?」
「今、猫の…死体が」
小さく呟くと、彼女は素早く言った。
「かわいそうって思っちゃダメ」
「?」
よくある話。
野良猫を見たとて拾ってやるわけでもなし、いちいちそんなことを思っていてはいけないのかもしれない。
猫が、好きだ。
でも拾ってやることはできない。
あの、無残に息絶えた猫を葬ってやることも、しない。
「同情しちゃうと、その猫の霊が乗り移るんだって」
カミサマとか幽霊とか、信じていないくせに。
そういうことだけはやたらに気にする。
それはいったいなんなのだろう。

随分前に黒猫の死体をみたことを思い出した。
ただ、ぐったりと倒れていた黒猫。
次の日には、もうその死体はなくなっていた。

今日見たあの子も、誰かが連れて行くのかしら。
ちゃんと、どこかに埋めてあげてくれるのかしら。
(きっと、ムリなんだろうな)
でも、せめて。
あの道の真ん中で倒れていたかわいそうなあの子がこれ以上傷つけられる前に。
少しでも、早く。
あの場所から、連れて行ってあげてほしい。



次の日は、交通事故の現場を見た。
男の人がぐったり倒れていた。
真っ青で、近くに自転車が倒れていた。
多分、たまたまそのとき近くにいただけだろう人が携帯電話を耳に押し当てていた。
救急車を呼んでいるのだ。
でも、その場所は病院から歩いて2分ほどの場所。
不便だな。
たったこれだけの距離しかないのに、救急車が来て彼を病院に連れて行ってくれるまでにどれほどの時間がかかるだろう。
私は今日もバスに乗っていて、バスの窓からその様子をちらりと見ただけだった。
(あの人は…無事だっただろうか)
朝、いってきますと家を出て。
そして二度と帰ってこなかった。
そんな哀しいことは、いやだ。
彼の家族のためにも、そんな哀しいことはいやだ。
(どうか…無事でいますように)

それにしても、不思議なものだ。
たとえば、今朝のように誰か“人間”が目の前で車に轢かれたら赤の他人であろうとも急いで救急車を呼んでそばにいるだろう。
だけど、車に轢かれた猫はそのままにされるのだ。
私だって、目の前で猫が轢かれたとしてもきっと何もしてやれない。
命のない体に触れるのはひどく勇気がいることのように思えるし、抱き上げた身体をどうすればいいの?
公園に、埋める?
その上を子どもたちがふみつけるだろう。
そんなのは、いやだ。
何もしてやれない。

昨日、猫が倒れていた場所は今朝はきれいになっていた。
あの場所で猫が倒れていたことをいったい何人が覚えているだろう。
(今度生まれてくるのなら、車の少ない場所がいいね)

どこにいったんだろう。
あの、猫。
Wed 24 , 23:31:47
2007/10
今日、授業で史料として与謝野晶子さんの「君死にたまふことなかれ」を読みました。日本史で、日露戦争をやってるんで。

最初の数行は、なんとなく暗記していたんですよ。
でも、ちゃんと読んだことはなかったかもなぁ、と読んでいたら…授業中だというのに、泣きそうになりました。
実際、目に涙が浮かんできて、まわりにばれないようにするのにちょっと苦労しました…。

私にも、弟がいます。
弟が戦争になんて行ってしまったら…考えるだけでも恐ろしいことなのに。
それなのに、家族を思って戦争に反対するだけで、「非国民」とののしられ、嫌がらせを受ける時代だったんですよね。
きっと、晶子さんのように戦場に赴く大切な人を思って涙を流した人は数え切れないほどにいたことでしょう。それでも、その悲しみを大声で訴えることすら許されない時代。
その中で、堂々と弟を思ってこの歌を詠んだ与謝野晶子という歌人を、心からすごいと思います。

もし、兄や弟が戦争に行ってしまったら。
私は、泣くでしょう。
泣いて泣いて泣いて、どうしようもないほどに泣くでしょう。
戦争を怨み、敵国を憎み、日本を嫌いになるかもしれません。
それでも、きっと私には晶子さんのように「非国民」と罵られてまでその悲しみを訴える勇気がない。
家族の無事を願う心に、戦争を憎む心に嘘はないのに、どうしてもその勇気がないでしょう。
自分が、周りから責められることを恐れてしまうでしょう。

ああをとうとよ君を泣く
君死にたまふことなかれ


幸いにして、彼女の弟は無事に帰ってきましたがこの戦争は数多くの命を奪いました。
日本兵も、ロシア兵も、数え切れないほど多くの命が奪われました。
戦争というものは、絶対にあってはいけないことです。
殺すことも、殺されることも、あってはいけないことです。
そんな世界はどこにもないのかもしれないけれど。
それでも、その事実は忘れてはいけないことだと思います。

この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ
Mon 24 , 22:51:33
2007/09
その一(サナダテ?)

恋をしていた。
否、あまりにも強すぎるこの思いは恋と呼ぶには適さないかもしれない。
だが、オレはこの思いを恋だと思っているから、これは恋なのだ。

強く求めていた。
強く惹かれていた。
その存在を、ただただ欲していた。

だが、いくら“オレ”という人物がそれを望んでも、互いの立場が共に在ることを許さないから。

だから、せめて、出会ったときのようにオレたちは戦場で華を咲かせる。
緋色の、華を。





その二(?)

好きだと言えばよかった。
愛していると伝えればよかった。

大切だから、守りたくて。
大事だから、傷つけたくなくて。

手を伸ばせば、壊してしまうのだと思っていた。
触れなければ、失わないのだと信じていた。

なんて、愚かだったのか。
どれだけ悔いたところですべては過ぎたことでしかないのだ。




その三(シカテマ?)


「今、死ねたら幸せだと思わないか?」
高い高い崖の上から下を覗き込んだ。
ここから落ちれば、いくら忍といえどもひとたまりもないだろう。
「じゃあ、死んでみるか?」
隣に立つ男は、甘味処に誘うときと同じ軽い調子で答えた。
「…」
顔をのぞきこんでも、心が読めない。いつだって、この男は不可解だ。何を考えているのか、あるいは何も考えていないのか。
「付き合ってやるぜ?」
ただ、嘘は言わないことを知っている。
だから、今、あたしが頷けば、この男は躊躇いもなくあたしと一緒に死んでくれるのだろう。それは、予感ではなく確信だ。
「…やめておこう」
崖のギリギリのところに立っていた足を一歩引いた。
男が片眉をひょいと跳ね上げる。
「いいのか?」
少しだけ、残念そうな響きが聞こえた。
「…」
何も言わずに踵を返してあたしは日常に帰っていった。

(だって、今、おまえと死んだって何にもならないじゃないか)
Fri 14 , 22:18:39
2007/09
望みのない一方通行な想いは苦しいだけだけど、それでも想わずにはいられない。
それが悔しい。
アスマ先生と一緒にいたころのような幸福をあたしはシカマルにあげられない。
だから、しかたないのかもしれない。

(でも…)

告白も、プロポーズも、あたしからだった。
女として、それは少し切ない。
受身の恋愛は柄じゃない。
それでも、求められたいと思ってしまうのだからバカらしい。

「結婚して…もう、3年?」



『ねえ、シカマル』
『どうした?いの』
『結婚してくれる?』
『いいぜ』

(ロマンのかけらもなかったな)

夏の暑い日で、青い空に白い雲。大きなヒマワリがやたらきれいに咲いていた。
その3日後には、シカマルは婚約指輪を用意してくれた。

そして、秋の初めに内輪だけの小さな式を挙げた。


もしかしたら、あたしはシカマルのそばにいる方法を間違えたのかもしれない。
想いを告白しなければよかったのかもしれない。
何度もそう思ったけれど。

シカマルはいつだって優しくて、あたしをとても大事にしてくれたから、あたしはシカマルから離れられない。

だから、間違っていたのかもしれないけれど。
それでも、間違っていてもこの関係を壊すのが怖くて。

だって、それでもあたしがシカマルを好きな気持ちは本物だったし、あたしに触れるシカマルの優しさも本物だったから。

ニセモノだったら、こんなに悩まなくてすんだのに。
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読書、昼寝
自己紹介:
更新はまったり遅いですが、徒然なるままに日記やら突発でSSやら書いていく所存ですのでどうぞヨロシク。
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